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新築住宅の10年保証と瑕疵保険の基礎知識

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新築住宅の10年保証と瑕疵保険の基礎知識

新築住宅については建売住宅を購入したときも、注文建築で家を建てたときも10年保証が付いています。まるで、不動産業者や建築業者のサービスの1つのように説明されることもありますが、これは法律で義務化されているものですから、仮に説明されていなくても10年保証の対象となります。

この10年保証と混同されがちな制度に住宅瑕疵担保責任保険があります。新築住宅を購入する人と話をしているとこれらの知識が曖昧になっている人も多いですし、売る側の不動産業者や建築業者でも勉強不足で基礎知識が不足していることが少なくありません。

完成して入居した後、何らかの不具合が見つかったときには非常に重要となることですから、これから新築住宅を購入する人も既に居住している人も、ここで必要な知識をものにしておきましょう。10年保証と住宅瑕疵担保責任保険について皆さんが知っておくべき情報をまとめておきました。

1.新築住宅の10年保証

まずは、10年保証から解説します。10年保証という名称からもわかるとおり、10年の間、瑕疵があったときに補修等の対応を売主や建築業者に対して義務付けている瑕疵担保責任ですが、大事な点を以下に紹介します。ちなみに、瑕疵とは欠陥とも言い換えることができるものです。

1-1.住宅品確法で定められた義務

新築住宅における10年保証とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:住宅品確法)の第94条とだい95条において定められているものであり、住宅事業者(建売の売主や注文建築の建築業者)がこの保証を拒否することはできません。10年保証のことを契約書で明記していなくとも住宅事業者は保証する義務を負うのです。

稀に、保証の対象外だと説明されたという人の話を聞くことがありますが、そのような特約があっても無効ですから、何か瑕疵が見つかったときには保証の履行を求めてよいでしょう。

1-2.保証される部分は限定的

10年保証について曖昧になっていることの1つは、その保証対象の項目です。何でも保証されるわけではないのですが、この点を誤解している人は少なくありません。保証の対象となるのは、「構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分」です。

分かりづらい表現だと思うかもしれませんが、簡単にいえば、建物の基本的な構造部として重要な範囲と雨漏りを防止する部分に限られているということです。もう少し具体的に部位をあげると以下のとおりです。

●構造耐力上主要な部分

  • 屋根
  • 斜材
  • 横架材
  • 土台
  • 基礎
  • 基礎杭(鉄筋コンクリート造の場合)

●雨水の浸入を防止する部分

  • 屋根
  • 開口部
  • 外壁

但し、このように部位をあげるとこれらに関すること全てが対象になると誤解するかもしれません。たとえば、壁といってもクロスが傷んでいるだけでは10年保証の対象とはならないので注意してください。

1-3.引渡しから10年間

この10年間の瑕疵担保責任(保証)ですが、どのタイミングから起算して10年なのでしょうか。既に新築後10年近く経過している人にとっては、このタイミングは重要な関心事ですね。

答えは、引渡し時から10年です。

建売住宅であれば売主から買主へ引渡したときから、注文建築であれば建築業者(請負者)から施主(注文者)へ引渡した時から計算します。

10年を過ぎてから売主等へ保証の履行(補修対応など)を求めても対応は期待できませんので、期間が経過する前までに建物の状態をホームインスペクション(住宅診断)などで確認しておき、必要に応じて補修等を求めておく必要があるので覚えておきましょう。

2.住宅瑕疵担保責任保険

次に、10年保証とセットで覚えておくべき住宅瑕疵担保責任保険について解説しておきます。略して、瑕疵保険と呼ばれていることも多いもので、この保険は新築住宅にも中古住宅にもありますが、ここでは新築住宅の保険について書いているので混同しないよう注意してください。

住宅瑕疵担保責任保険

2-1.瑕疵保険か保証金の供託のいずれかが必須

前述のように10年保証があることは消費者にとってよいことですが、これだけでは、瑕疵が見つかったときに売主や建築業者が倒産するなどしていたら、保証が履行されないということになってしまいます。この問題を解決するため、住宅瑕疵担保履行法において保証を履行できる仕組みを作っています。

その概要は、売主や建築業者が補償を履行するための資力を確保するために、瑕疵保険に加入するか、保証金を供託するかのいずれかの措置を取らなければならないというものです。これも法律によって義務化されているのですが、瑕疵保険への加入が義務化されているのではなく、瑕疵保険か保証金の供託のいずれか1つの対応をとることが義務化されていることを理解してください。

これにより、住宅事業者が倒産していたとしても、引渡から10年以内であれば瑕疵保険等により補修費用等を補ってもらえるのです。

ちなみに供託とは、住宅事業者が法務局などの供託所に定められた保証金を預けておくことです。この保証金が大きいため、瑕疵保険への加入ではなく供託を選んでいるのは一部の大手事業者が大半です。その他の多くの事業者は瑕疵保険への加入を選んでいます。

2-2.保険金の請求は住宅事業者が行う

引渡し後に保険の対象となる瑕疵が見つかった場合、加入している保険法人(正確には住宅瑕疵担保責任保険法人という)に対して補修費用等を請求することができるのですが、これを請求するのは原則として住宅事業者であり、建売の買主や注文建築の施主ではありません。

買主等が住宅事業者に対して補修を求め、住宅事業者から保険法人に保険金を請求する流れとなるわけです。

こういった制度であるために、住宅事業者が瑕疵を認めずに対応しれくれない場合には、保険金の請求もままならず、いつまでたっても補修してくれないというトラブルは頻発しています。そこで、買主等は瑕疵があると感じたら、第三者の専門家に住宅検査してもらう人も多いです。

第三者の客観的な検査結果に基づいて、瑕疵の補修を求めた場合、さすがにほとんどの売主や建築業者は補修対応に向けて動きだすからです。

また、前に述べたとおりですが、既に住宅事業者が倒産している場合などのケースでは、買主等が保険法人に直接請求することもできますので、倒産していてもあきらめる必要はありません。瑕疵保険ではなく供託所へ保証金を供託している場合でも同様に請求することができます。

2-3.保険金の上限は2,000万円

瑕疵保険の保険金には上限があり、それは原則として2,000万円です。

都市部では、購入費用が5,000万円もしたのに保険金が2,000万円だけでは足りないと考える人もいますが、よく考えてみるとそうでもないことがわかります。

都市部は土地代が高いので総額が大きくなっていますが、そのうちの建物価格はそれほど高い割合を占めていません。建物面積が30坪(約100㎡)で坪50万円だとすれば1,500万円です。但し、大手ハウスメーカー等で建てると2,000万円を超える建物も多くなります。

しかし、瑕疵の補修費用は新築時の建築費用と同じ金額が必要になることは基本的にはありません。数百万円で収まるものが圧倒的多数を占めますから、2,000万円もあれば十分です。

2-4.保険金の対象項目(補修費用・調査費用・仮住まい費用)

瑕疵保険の保険金が支払われる対象項目についても把握しておきましょう。

瑕疵の補修に要する費用はもちろんですが、その調査に要した費用も対象となります。瑕疵かどうか判断し、それをどこまで補修すべきか判断するためには、必ず調査が必要になりますから調査費用まで保険金の対象になることは大事なことです。

但し、調査費用は補修費用の10%または10万円のいずれか高い額までと制限がありますので、瑕疵の内容や状況次第では調査費用の負担が生じることもあります。

また、補修等に際して仮住まい住居への移転を伴う場合には、その費用も対象となります。その上限は50万円ですから、補修計画を立ててから補修完了・再入居までに無駄なロスが生じないようスムーズに進める努力が必要です。

2-5.瑕疵保険の現場検査は簡易的なもの

瑕疵保険は保険法人にとって、後々に保険金を請求されるというリスクを伴う制度ですから、何でも保険をかけられるというわけではありません。現場検査を経たうえで保険に加入できるようになっているのです。

この検査のことをもって、不動産業者や建築業者の営業マンから、瑕疵保険の検査が入るので安心だと説明されることがありますが、実態はそう安心できるものでもないので注意が必要です。

瑕疵保険の検査は、保険の対象項目のみ検査対象とするために、保険対象ではない点の施工不具合があっても(たとえ検査員が見つけても)指摘されることはなく、補修されずに完成してしまいます。そういう保険商品ですから、保険の検査が悪いわけではありません。

また、保険の対象項目であっても現場で気づかれずに放置されている事象も非常に多く見られます。なぜならば、検査員は凡そ10~20分という非常に短時間の現場検査しかしないため、一部の範囲しか確認ができないのです。

保険ですから、一定の保険金請求があることを前提として計算された商品なわけで、現場検査によって瑕疵(欠陥)を無くそうとまで考えているわけではないのです。しかし、個々の買主としてはたまたま自分の家に欠陥があれば困ってしまうわけですね。よって、できれば自己防衛のために第三者のホームインスペクション(住宅診断)を依頼して安心感を得ておくことも考えましょう。

新築住宅における10年保証と住宅瑕疵担保責任保険について解説してきましたが、いかがでしょうか。ここに記載していることが全てというわけではありませんが、住宅購入時やそろそろ引渡しから10年が近いという人にとって必要なことはまとめているので、参考にしてください。

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