住宅の新築工事やリノベーション工事を発注する直前、つまり建築工事請負契約を締結する直前の人が理解しておくべき5つの注意点を紹介します。新築でもリノベーションでも建築トラブルは全国で多発しておりますが、契約前にしておくべき確認を怠ったことがトラブルの容易になっていることは非常に多いです。
契約前の人にとっては、ここで紹介された5つの注意点は最低限、確認しておくべきことですから、よく読んでおきましょう。
5つの注意点とは以下の5項目です。
- 建築工事請負契約書に設計図書を添付する
- 打合せ記録を書面化する
- 建築工事請負契約書に見積書を添付する
- 契約締結前に建築工事請負契約書と約款をチェックする
- 総予算・資金計画を再確認する
これらについては、1つ1つ詳細を解説していきます。
1.建築工事請負契約書に設計図書を添付する
建築工事請負契約書には、添付すべきものがいくつかあります。その1つが、設計図書です。設計図書とは、平面図や立面図といった図面全てのことです。
1-1.どの図面が契約対象であるか明確にする
契約するまでに何度も打ち合わせを重ねて、何度も何度もプランを修正していくうちに、非常に多くのプランの図面が手元に残ることになるでしょう。検討されたプランが多ければ多いほど、どの図面が契約対象となるのかわかりづらくなり、誤解やミスが生じやすくなるものです。
施主と建築会社の双方が契約対象として考えているプランは、全く同じものでなければなりませんから、建築工事請負契約書に添付することで明確にしましょう。
1-2.添付図面が正しいプランであるか確認する
建築工事請負契約書に添付された図面があれば、そのプラン内容をよく確認してください。自分たちが要望していた内容がきちんと反映されたものであるのか、間違って別のプランが添付されていないかといったことを丁寧に確認しなければなりません。
誤って別の図面が添付されていても、契約は成立してしまい、後からプラン変更を依頼しても追加費用がかかる可能性もあるでしょう。
1-3.請負契約の時点で設計図書の全てを作成してもらえない
契約を締結する時点では、設計図書の全てを作成してもらえないことは多いです。設計図書は、各階平面図・立面図・断面図・敷地配置図・展開図・軸組図・設備図など様々なものがありうるのですが、これらを作成するにもコストがかかります。
多くの設計図を設計者(建築士)に作成してもらったものの、施主と契約できなかったときには、建築会社等の負担は大きくなりますから、建築会社にとって設計コストはリスクにもなります。よって、契約を締結してから多くの設計図を作成することが多いのです。
施主としては、契約前にプランをできる限り明確にするため、契約前に作成してもらえる設計図の種類を早い段階で確認しておいた方がよいでしょう。
2.打合せ記録を書面化する
施主が建築会社等と建物プランについて打ち合わせしていくなかで、大変多くの約束事やプランへの要望が出てくることでしょう。その内容は、打合せ記録として書面化して残しておくべきものです。
2-1.打合せ記録は設計図書の不足を補う大事なもの
建物のプランについて施主が要望を出し、それに対して建築会社ができることとできないことを説明したり、その見積り金額を提示したり、別の案を提示したりと大事な話が大変多く出てくることでしょう。
また一方で、「1-3.請負契約の時点で設計図書の全てを作成してもらえない」で説明したように、契約前の時点では十分な設計図を用意してもらうことができません。それでは、大事な打ち合わせ内容が契約後に遂行されるのかどうかも不透明です。
そこで、打合せ記録として書面を残しておくことで、契約前に作成されている設計図では不足する内容を補っておくことは有効な対策となります。打合せ記録の果たす役割は意外と大きいものとなるのです。
2-2.施主と請負者が互いに署名・捺印する
打ち合わせ記録は、施主と請負者(建築会社)の双方が合意した内容をまとめたものである必要があります。合意したことを明確にするためには、全ての打合せ記録において、施主と請負者が署名・捺印していることが望ましいです。
後から、「そのような約束はしていなかった」「覚えていない」と言われても、この打合せ記録があれば、施主に役立つことでしょう。
2-3.打合せ記録も工事請負契約書に添付する
打合せ回数が多くなれば、打合せ記録のなかにも、不要なものがありうるでしょう。一度、合意した打合せ内容であっても、互いにその予定の変更を確認しあうこともあるからです。そのため、有効な打合せ記録を建築工事請負契約書に添付しておくことも1つの良い方法です。
3.建築工事請負契約書に見積書を添付する
建築工事請負契約書に添付しておくべきものとしては、見積書もあります。これもまた非常に大事な添付書類ですから、きちんと添付されているか確認しなければなりません。
3-1.どの見積り金額で契約したのか明確にする
建物プランを何度も修正するうちに、工事見積もりも変更されていくことは多いでしょう。追加で工事をお願いしたり、仕様レベルをあげたりすれば、工事金額も変更になるものです。
どの見積り内容で契約したものか明確にするため、その見積書を建築工事請負契約書に添付するのです。
3-2.見積書の記載内容をチェックする
建築工事請負契約書に添付された見積書については、その見積り内容が希望内容と一致したものであるか、きちんと確認しなければなりません。契約時に誤って変更前のプランの見積書を添付してしまう人為的なミスは意外と多いです。
見積書に記載された工事項目の名称・金額・単価などが最終的に合意したものであるか、時間がかかってでも確認してください。
4.契約締結前に建築工事請負契約書と約款をチェックする
建築工事請負契約を締結する前には、必ず、その契約書と約款を事前に入手して、内容をよく読んでおきましょう。請負契約書と約款は、施主から希望しなければ、契約当日まで見せてもらえないケースもありますが、希望すれば契約日の前日までに見せてもらうことはできます。
万一、事前の書類提示を拒否するような建築会社であれば、全く信用できない会社ですから、別の建築会社に変更した方がよいです。
注意すべきは、契約書だけではなく、必ず約款も確認すべきだという点です。
5.総予算・資金計画を再確認する
建築工事請負契約を締結すれば、もう後戻りは難しくなります。細かなプランの変更等はできることが多いですが、契約を取り止めるとなれば、手付金が戻らなくなります。
契約書に署名・捺印する前に、資金計画に問題がないか、総費用が予算オーバーになっていないか確認しましょう。総費用とは、ここでは建物本体工事のほか外構工事、諸費用も含めて計算すべきです。
ここまでに、建築工事請負契約を締結する直前に必ず確認しておくべき5つの注意点をご紹介してきました。いずれも、大事なものですから、契約前には時間をとって確認するようにしてください。