家づくりは楽しく、希望にあふれるものではないでしょうか。しかし、一方で新築工事の見積り金額については不明点や不安な点は多いことでしょう。どこに新築工事を注文するか検討しつつ、見積りを依頼しなければなりません。
注文建築の工事見積りを地域の工務店やハウスメーカーなどに依頼するタイミングや前後の流れがわからないという人のために、ここでは見積り依頼の流れを解説します。また、それぞれの流れのなかで基本的な注意点もお伝えします。
1.家づくり(注文建築)の見積り依頼の全体の流れ
新築住宅を注文建築で建てるときの見積り依頼の前後の流れを示すと以下の流れとなります。必ずしも全てのケースで同じ流れとなるとは限らないものの、この基本を抑えておきましょう。
- 建築予定地を確保する
- 希望するプランを家族で検討してまとめる
- 建築会社(地域の工務店・ハウスメーカー等)に要望・予算を伝える
- 建築会社(地域の工務店・ハウスメーカー等)からラフプランと概算見積りを提示してもらう
- ラフプランの再提案と見積りを提示してもらう
- 詳細プランの提案と詳細見積りを提示してもらう
- 見積書を細かくチェックする
- 見積書を添付して工事請負契約を締結する
上の流れのなかで、それぞれの項目について詳しく理解しておくことは、この通りに進まなかったときの対応に役立ちますから、以下もよく読んで把握しておいてください。建築会社や担当者によって見積りの出し方には相違があることを理解し、且つ、以下の解説内容も理解して適切に対応しましょう。
1-1.建築予定地を確保する
住宅を新築する場所(土地)を確保する必要があるのは当然のことですね。一般向けに分譲されている土地を購入する人もいれば、以前から所有する土地で建替える人もいますし、親の土地を相続で取得する人もいます。
いずれにしても、どの土地で建築するのか、家づくりを進めるのかを決めないことには、新築工事の見積りを依頼することはできません。なぜならば、その土地の条件によって建築できる建物が異なるからです。
土地の条件とは、面積・形状・前面道路・法規制等です。また、隣地との関係によっても建物のプランは変わりますね。隣家の日陰になることを考慮して、間取りや建物形状を変えていくこともあるからです。
但し、建築予定地が決まる前の段階で、凡その建物面積や階数から建築会社にざっくりとした概算金額を聞いておくことはよいでしょう。もちろん、工事金額の巾を大きめに考えておくことは忘れないようにするべきです。
1-2.希望するプランを家族で検討してまとめる
土地を確保すれば、次に希望する建物プランを決めていくことになります。間取り、階数、ある程度の建物のグレードをイメージしておきたいものです。低価格路線でいくのか、中規模の価格帯でいくのか、高級志向でいくのかといった方向性はこのときまでにある程度は決めておく必要があるでしょう。
もちろん、予算にゆとりがある人ならば、この後の段階で変更することを考えてもよいですね。
間取り、仕様などのプランは、建築会社などと打合せしていくなかで変更することはよくあることです。ここでは、確定させるつもりはなくてよいですから、ご家族で希望を出し合い、何度も話し合いの機会をもってざっくりと調整していくとよいでしょう。
1-3.建築会社に要望・予算を伝える
いよいよ具体的に見積り金額を提示してもらうために建築会社と具体的に接触を開始することになります。建築会社にもいろいろありますが、地域密着型の小さな工務店や大手ハウスメーカーもありますし、建築設計事務所に設計を依頼して、その事務所から工務店を紹介してもらうこともあるでしょう。
担当者に、ご家族で話し合ってきた住まいに対する要望やプランを丁寧に伝えて、ラフプランの作成を依頼します。このとき、想定している予算も伝えなければなりません。担当者の方からも予算は大事なことなので、早い段階でヒアリングしてくることでしょう。
この段階での大事なポイントは、複数の建築会社と話をして、相見積もりをとるということです。早い段階で1社のみに絞ることは絶対にオススメできません。複数会社からの提案が、よりよいプランへと導いてくれることはよくあることですし、価格競争もしてもらった方がいいですからね。
1-4.建築会社からラフプランと概算見積りを提示してもらう
前段階で伝えておいた要望などを基に、建築会社がラフプランを作成して提示してきます。ラフプランの提示方法はいろいろありますが、話の趣旨がそれすぎてしまうため、それはまた別の機会に詳細を書きますね。
そのラフプランと一緒に、見積書が提示されるはずです。この時点では、ハウスメーカーや地域の工務店などの建築会社も詳細な見積書までは作成していないことも多いです。ただ、合計金額だけを提示するような建築会社であるならば、その後の対応も心配ですから、他社への見積り依頼を前向きに考えましょう。
1-5.ラフプランの再提案と見積りを提示してもらう
ラフプランを提示してもらっときに、1度目のプランで確定させてしまうことはほとんどありません。プランを提示する側も、それをたたき台として新たな要望や住まいへの考え、想いといったものを引き出していき、プランの練り直しを行うものです。
この段階の打合せをしっかり行ってから、再度、ラフプランを提示してもらい、見積りも提示してもらうようにしましょう。この段階でも、複数の建築会社から相見積もりをとっておくとよいでしょう。
1-6.詳細プランの提案と詳細見積りを提示してもらう
ラフプランをベースとした打合せは、ケースによって何度かあるものです。そして、ある程度のプランが煮詰まってきたら詳細見積りを提示してもらうように依頼してください。そのときには、スケッチ程度のプランではなく、各階平面図や立面図、断面図、敷地配置図、仕様書ぐらいは必要になります。
この時点で間取り図だけしか提示しないような建築会社であれば、要注意です。そういった建築会社は検討対象から除外するか、きちんとした対応を求めていくようにしましょう。価格が安い、もしくはその会社のプランが気に入っている等の理由で、その建築会社と話を進めたいのであれば、きちんとした見積り対応を求めていくべきです。
見積もり段階で心配される建築会社での家づくりは、後からトラブルになることも多いですから、見積もり段階から第三者の専門家のサポートを受けるのも1つの方法ですね。
1-7.見積書を細かくチェックする
詳細な見積書が提示されたら、それを細かくチェックするようにしてください。希望する内容が明記されているか、打合せた内容・項目が明記されているか、間違った工事項目が入っていないかといったことをチェックしていきます。
見積書でチェックすべきことは多く、重要なことですから、また別の記事で詳細をお伝えします。
1-8.見積書を添付して工事請負契約を締結する
見積り内容や建物プランに関して互いに合意したならば、次はいよいよ工事請負契約の締結ですね。請負契約の際には、合意した内容が記載された見積書はもちろん、プランのわかる図面・仕様書も契約書に添付して署名・押印するようにしましょう。
2.建物本体以外の工事等の見積り
建物本体工事の見積り依頼の流れについて述べてきましたが、建物本体以外の工事とその費用が発生することは多いですね。ほとんどの家づくり(注文住宅の建築)において、何らかの本体以外の工事が生じるものです。
こちらでは、建物本体以外によくある工事とその見積り依頼のタイミングについて説明します。
2-1.地盤調査費用
住宅を新築する前には、必ず地盤調査を行わなければなりません。この地盤調査費用は所有する土地に注文建築で家を建てるならば、まず確実に自己負担となります。新築用の土地(宅地)を購入する場合で、建築会社も指定されている場合には、その土地の売主が地盤調査費用を負担するケースもありますが、この場合においても基本的には施主(建築工事を発注する人・あなた自身)が負担することが多いと考えておきましょう。
地盤調査は土地が確定しており、家づくりすることは決まっているのであれば、早めに実施したいところです。その理由は、地盤調査の結果次第では全体の予算に大きく影響することもあるからです。軟弱地盤で地盤補強工事が必要となり、その補強工事費用が数百万円ということになれば、建物本体にかけられる予算が変わってくることもありますね。
それだけに、早い段階で地盤調査の実施を考えるとよいでしょう。
2-2.地盤改良工事費用
地盤調査の結果で地盤補強工事が必要と判断された場合、この地盤改良工事費用が生じることになります。あまり歓迎されないコストではありますが、日本の住宅地の地盤は弱いところが多いために、なかなか避けられない問題でもありますね。
地盤改良工事費用は、その改良工事の内容によって異なるものですから、改良工事内容を決めてから見積りを出してもらうことになります。そして、地盤改良工事は建物のプランによっても異なるため、建物プランを決める段階になってから、この費用もわかることになります。
ただ、建築会社(ハウスメーカーや地域の工務店など)から建物のラフプランの提示と見積りを提示してもらうときに、地盤改良工事費用がどれぐらいかかるものかも合わせて出してもらうとよいでしょう。地盤調査を終えておれば提示してもらえるはずです。
建物本体のプランが確定したときには、改めて地盤改良工事の内容と最終見積りも出してもらいましょう。地盤調査をその段階になってから初めて実施する場合は、ようやくそのときになってからこの費用がわかることになります。
2-3.外構費用
家づくりの費用の1つとして、外構費用も馬鹿にならない金額になりますね。外構工事の見積りは、どの業者に工事を発注するか、どの時期に施工するかによって異なってくるものです。
建物本体の建築会社に外構工事も発注する場合は、本体のプランを打合せする段階でその時点のざっくりとした要望を伝えて概算見積りを出しておいてもらい、だいたいの価格帯を把握しておくとよいでしょう。
担当者が「本体工事に着手して、本体の完成が近づいてから打合せましょう」と外構についての見積りを先延ばしすることもありますが、全体の予算を把握するためにも大よその価格の巾は確認しておいた方がよいです。
建物本体の建築会社とは別の会社へ発注する場合でも、できるだけ早いタイミングで凡その価格を把握するために外構業者に接触をもち、話を聞いておきましょう。外構工事は建物本体工事の完了後に着手することになるはずですから、最終的な工事内容(プラン)の確定と見積書の提示は本体の完成が近づいてからでもよいでしょう。