家づくりをする中で考えるべきテーマの1つはプライバシーです。隣地や道路から自宅のなかが丸見えでは困りますよね。建物のプランを考えるときには、プライバシーについても設計者とよく相談しながら進めるべきでしょう。
今回のコラムでは、住宅を新築するときや大規模リノベーションをするときに確認しておきたいプライバシーに関するチェックポイントや対策をお伝えします。
1. 外部とのプライバシー
家づくりでプライバシーを考えるときは、家の外部からのこと(他人との関係)と内部におけること(家族・同居人との関係)の両方について考えなければなりません。まずは、外部とのプライバシーについて取り上げます。
1-1.隣家と自宅の窓の位置
隣の家から自宅の内部が見えるのはいけませんね。もちろん、自宅から隣の家の内部が見えるのもよくありません。特に都市部の狭小地においては、この問題が数多く生じており、後から建築する住宅が注意して対応しなければなりません。
この注意点としては、隣家とは窓の位置をずらすということです。自宅の窓の前に隣家の窓があれば互いに見えてしまいますから問題となります。位置をずらして配慮すればよいのです。
1-2.目隠しフェンスの設置
「1-1.隣家と自宅の窓の位置」であげたような配慮(窓の位置をずらすこと)をせずに、建築工事が始まって窓を取り付ける段階になってから、この問題に気づく人もいます。隣家から指摘を受けて初めて気づくという建築会社もありました。それから窓の位置を変更するのは大変な作業ですから、他の対策を考えなければなりません。
そこでよく対策として取られる方法は窓への目隠しフェンスの設置です。窓の外側にフェンスを設置することで視界を遮ることができるためお手軽な方法です。但し、この方法では日差しを遮ってしまいますから、あまり好ましいものではありません。
やはり、建物プランの検討段階で窓の位置をずらすよう調整した方がよいでしょう。窓が隣家と同じ位置にくると隣家との関係悪化の一因になってしまうこともあります。
1-3.道路からの視線
外部からのプライバシー問題としては、隣家からの視線だけではなく接する道路からの視線も検討しなければなりません。道路から自宅の内部が見えるのもよくないですね。
その主な対策として以下の3点があります。
- 道路側の窓を擦りガラスにする
- 塀や植栽で敷地内を見えないようにする
- 中庭を作る
この3点について以下で説明します。
道路側の窓を擦りガラスにする
道路から室内が見えてしまう窓については、カーテンやブラインドを閉じてしまう方法があるのは当然ですが、この場合は常に閉じたままにしなければなりません。それでよいという考えならば、この方法で問題ないでしょう。
但し、サイズの小さなFIX窓などであれば、擦りガラスにして内部を見られないようにしておく方法もあります。これならカーテンを使用しなくても大丈夫ですし、ある程度の光を採りこむことも可能です。
また、2階の部屋であれば、普通のサッシにしておいて窓の下半分のみに擦り柄のシートを貼って道路からの視線を遮る方法もあります。低い位置から高い位置を見上げたとき、窓の下半分が見えなければ室内の様子まではわからないですね。
この対策をとるときは、道路の一番遠い位置からの距離・角度を考えて対処するようにしましょう。
塀や植栽で敷地内を見えないようにする
道路からの視線を遮る方法として有効性が高いのは外構部分で遮ってしまう方法です。敷地内を見えないような素材の塀や植栽を配置すればよいのです。室内も庭もプライバシー性が高いものになります。
塀を工夫して低い位置だけは外部から見られるようにしておくのもよいでしょう。これは見られるためではなく、庭への採光のためで、庭が明るくなります。そして、室内からは雪見障子で庭を見られるようにしておけば、明るい庭を自宅で楽しむこともできます。
しかし、注意したい点としては、塀や植栽で道路から庭への視線を遮ることは、防犯の面ではよくないということです。泥棒は道路などから庭への視界が良い家より視界の悪い家を狙う傾向にあります。侵入するまでの僅かな時間とはいえ、他人に見られるリスクを減らすためです。
よって、防犯のための対策もしっかり考えたいですね。
中庭を作る
もう1つの方法は中庭を作るということです。中庭は道路から見えづらいですから、プライバシーを確保することができます。中庭については、「坪庭・中庭のある家のメリット・デメリットと注意点」という記事も参考になるので読んでみてください。
1-4.洗濯物が見えないようにする
女性の立場で考えれば、干している洗濯物のことは気になりますよね。外部から洗濯物が見えないようにする工夫はしておきたいところです。その工夫・対策としては以下のことが挙げられます。
- ベランダの手すり壁より低い位置に物干し金物を設置する
- 風の通りやすい格子や目隠しをつける
- 浴室乾燥機を利用する
- 乾燥機能付き洗濯機を利用する
- 室内に洗濯物干しスペースを設ける
- 半屋内バルコニー兼小温室
以上の対策です。ほとんど説明する必要のないことばかりですが、「半屋内バルコニー兼小温室」については少し説明しておきます。広めのバルコニーについて、壁や屋根で外部と大半のスペースを遮ってしまうわけです。サンルームのようにするのも良いでしょう。
2.家族間のプライバシー
外部からのプライバシーについていくつか見てきましたが、次は建物内部における家族間のプライバシーについて考えてみましょう。
2-1.子供部屋のプライバシー
子供部屋のプライバシーについては家庭によって考えが全く異なることがあります。プライバシーを守るのか、逆にあえてオープンにしておくのかです。守るのであれば、普通の独立した部屋とすればよいですが、完全に独立した部屋ではゲームやケータイばかり触ってしまうのでよくないという考えもあります。
オープンな環境にしておくため、アコーディオンカーテンで遮る形にすることもあれば、子供部屋を壁などで区切らず間仕切壁の代わりに普通のカーテンをかける程度にしておく家もあります。病院の病室で見かける以下のようなイメージです。
こういったことは、まずは家族で話し合って方針を決めることが先ですね。
2-2.二世帯住宅のプライバシー
二世帯住宅では、その居住者にもよりますが、普段はほとんど顔を見ないで暮らすという家もあります。しかし、それでも互いの存在を感じられることが大事だと言われています。これも個々の考え方次第ですね。
互いの存在がわかる程度のプラン作りを考える場合、照明が見えたり、人影が見えたり、さらには音を感じられたりすることが大事です。中庭や坪庭を利用することで、これらを実現することができますから、考えてみるとよいでしょう。
参照:二世帯住宅の間取り・プランで抑えるべき8つの注意点と工夫
3.視線以外のプライバシーを考える
ここまで主に視線を中心にプライバシーを見てきました。しかし、プライバシーの問題は視線だけではなく、臭いや音についても疎かにはできません。
たとえば、キッチンの排気ルートをチェックしてください。ダクトを通って外部へ出た臭気が隣の家の窓の近くであれば、臭いで料理の種類がわかるかもしれません。「今日もお隣はカレーライスね」という具合です。相手にとっても迷惑ではありますよね。
家づくりで失敗したと思わなくてもよいように、プライバシーについても考えたプラニングをしましょう。