新築住宅を建てるとき、誰でも相見積もりをとりますね。相見積もりなしで、1社を完全指名で発注する人もいなくはないですが、特別な事情がない限りは相見積もりをとって比較検討するものです。今回のコラムでは、家づくり(住宅の新築)に関する建築費用の面で失敗しないために、正しい相見積もりの取り方と注意点を解説します。
1.家づくりで相見積もりをとる目的
家づくりの相見積もりの注意点を詳しく説明するために、相見積もりをとる目的や理由を整理しておきます。あまり深く考えずに行動を起こしては、せっかくの見積りも無駄にしてしまうので頭を整理してください。
<相見積もりをとる4つの理由>
- 発注先の工務店・ハウスメーカーを検討する
- 家づくりに必要な予算を把握する
- 住宅建築費の相場観とグレードのバランスを養う
- 施主にとっての優先順位を考える
以上の4つ以外の目的もないわけではありませんが、これらが主目的になります。
1-1.発注先の工務店・ハウスメーカーを検討する
どの工務店、ハウスメーカーに家づくりをお願いするかを比較検討するために相見積もりをとる。これが最大の目的ですね。もちろん、比較する際は見積り金額だけではなく、人的な対応の良し悪しや提案される間取りなどのプラン内容も検討したうえで、どの会社に発注するか決めることになります。
1-2.家づくりに必要な予算を把握する
家づくりのために動き始めた頃というのは、建てたい家の建築費用(必要な予算)がどれくらいなのかわからないという人は非常に多いです。1000万円あれば大丈夫なのか、1500万円は必要なのかといった感覚すらわからない人も少なくないでしょう。
そういったとき、概算見積りを提示してもらうことである程度の予算を把握することができます。それも1社からの見積りではなく、複数社からの見積りである方が予算感を把握しやすいでしょう。
1-3.住宅建築費の相場観とグレードのバランスを養う
「1-2.家づくりに必要な予算を把握する」と共通する点でもありますが、住宅建築費の相場を感じておくこともできます。工務店やハウスメーカーによって同じ規模の建物でも提示される金額には大きな開きがあるものです。それは、建物のグレードや会社のブランドによるところが大きいですから、そういったものもある程度は感じておきましょう。
1-4.施主にとっての優先順位を考える
相見積もりを依頼して出てきた見積書から、施主にとってどうしても必要な項目とそうでもない項目を検討してみましょう。予算を超える場合などには、どうしても何を優先すべきか判断しなければならない場面が出てきますから、見積書を見ながら検討しておくとよいでしょう。
概算見積りを提示してもらうことで、どのような項目があるのかわかりますから、検討する際に便利です。
2.相見積もりは何社からとるべきか?
家づくりの相見積もりをとる目的・理由がわかったところで、次に相見積もりの取り方について考えておきましょう。よく何社くらいから見積りをとるべきだろうかと相談されることがありますが、この点についてアドバイスします。
2-1.相見積もりは2~3社が良いは本当か?
家づくりに関するマニュアル本などを読んでいると、相見積もりは2~3社からとるべきだと書かれていることがあります。事実、「3社からとればいいのか?」と質問を受けることもあります。
何社からとることがベストだという明確な回答があるわけではないですが、2~3社からの見積り金額だけを見ても相場観がわからないこともあります。見積りをとると言っても、家づくりの初期段階で各社の価格帯を概ね把握するという意味では、2~3社では少ないのでもう少し数を増やしてもよいでしょう。
2-2.最初の相見積もりは多くの業者から
初期段階の見積りは2~3社では少ないと書きましたが、初期段階とは何でしょうか。住宅のプランを具体的に作り始めたら概算見積りを提示してもらうことになりますが、さらにその前の段階、概算の概算見積りのようなものであれば初期段階だと言えます。
この時点で2~3社に絞ってしまう必要はありませんから、もう少し幅広く工務店やメーカーに接触してみましょう。但し、この時点で提示してもらう見積りは詳細なものではありません。
2-3.工務店・ハウスメーカーを絞るときは2~3社から見積る
概算の概算くらいの感覚で相見積もりをとったところで、2~3社程度に絞るとよいでしょう。それから、建物の間取り・プランをもっと具体的に提示してもらい(もちろん要望を伝えた上で)、一緒に見積書も出してもらいます。
ここでは概算の概算ではなく、概算見積りといったところでしょうか。
各工事の項目わけがきちんとされており、項目ごとの金額を記載してもらった見積書です。これを2~3社程度で比較検討していくわけですね。
3.同じグレード・似たプランで相見積もりをとる
相見積もりをとるときに知っておくべき注意点の1つに、各社に見積り依頼するときに伝える要望に大差をつけないということがあります。
極端な例えですが、A社に高級志向の見積りを依頼して、B社にローコスト志向の見積りを依頼したところで、見積書を比較しても何も意味がないですね。A社とB社のいずれが自分に適切かというよりも、高級志向かローコスト志向かの選択になってしまい、会社選びには役立ちません。
2~3社に絞ってから見積り依頼する際は、同じようなグレード、同じ要望を伝えて提案してもらうべきなのです。これにより、各社の見積り金額や提案力の比較がしやすくなります。
4.新築住宅の相見積もりの予備知識
最後に相見積もりをとるときに知っておきたい知識を紹介します。
4-1.工務店は断るための見積りを提示することも
工務店やハウスメーカーはどのような施主の発注でも請け負うわけではありません。ときには断りたいと考えるケースもあります。たとえば、予算が全然あいそうにないとか、トラブルになりそうだとか、いろいろな理由です。
それでも、ストレートに断りづらいことがあるため、断り代わりの見積りを提示することがあるのです。建築費が高すぎれば多くの人は施主から断ることになりますね。そういう狙いです。同じようなグレード・規模でありながら、あまりに高い見積りが出てきたときは気にせず他社で検討すればよいでしょう。
4-2.見積り書の提示が遅いときはやる気がない
家づくりの見積りを依頼してから見積書が出てくるまでに日数がかかりすぎている場合も、その仕事を請けたくないと考えていることがあります。
単純に忙しすぎて時間がかかっていることもありますし、何らかのミス等で遅れていることもあります。見積りを依頼する時点でいつまでに提示されるのか確認し、期日を過ぎても提示されず、さらに催促しても提示されないときはその仕事をやる気がないことも考えましょう。
そういった工務店などに発注するのは施主にとってもよくないですから、見切りをつけて別の会社を探すべきです。
これから相見積もりをとる人向けに書いてみましたが参考になったでしょうか。はじめから2~3社に絞ってしまう必要性はありませんから、まずは多くの会社から概算の概算見積りを提示してもらいましょう。ただ、概算の概算見積りに細かな項目分けを望まないでおきましょう。