理想の家を建てたいと思い、住まいに求める条件をあげていくと、ルーフバルコニーが欲しいと考える人は多いようです。広々としたルーフバルコニーで、「友人を呼んでBBQを楽しみたい」「家族で夕食を楽しみたい」「子供用プールで子供を遊ばせたい」など使い方は様々です。最近では、屋上にジャグジーを設けていた家もあります。
しかし、ルーフバルコニーに対しては賛否両論があります。注文住宅のプランのなかに、ルーフバルコニーを含めるかどうか決断する前に、このコラムでメリット・デメリットとルーフバルコニーを採用するときの注意点について学んでおきましょう。
1.ルーフバルコニーのメリット
ルーフバルコニーのある家で暮らすメリットを考えてみましょう。
- 自宅でアウトドアを楽しめる
- 家族の交流の場として使える
- 十分な洗濯干しスペースを確保できる
- 都市部で庭の代わりとしていろいろなことができる
それでは、以上4つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
1-1.自宅でアウトドアを楽しめる
冒頭でも述べましたが、自宅でBBQなどができることが大きなメリットになる人は多いでしょう。季節の良いときにルーフバルコニーで気軽に楽しめるなら、嬉しいものですね。
1-2.家族の交流の場として使える
何もBBQほどのことでなくとも、外でランチやディナーを楽しめるのもよいですね。このルーフバルコニーはリビング以外に家族の交流スペースとして活用することができます。リビングでは、ついついテレビやゲームばかりになりがちであっても、屋外であるルーフバルコニーなら会話もはずむことでしょう。
1-3.十分な洗濯干しスペースを確保できる
ルーフバルコニーの大きさによっては、日々の洗濯物を干すスペースとして活用することもできます。通常のバルコニーでは干しきれない量でも広いルーフバルコニーがあれば便利です。
但し、広さには注意が必要です。例えば、2m×2mぐらいの大きさであれば、洗濯干しスペースとしては使い勝手が悪く、その広さならば横長のベランダの方が干しやすいでしょう。
1-4.都市部で庭の代わりとしていろいろなことができる
都市部では庭のない住宅が多いです。庭があってもそう広くはなく、活用しづらいことが多いでしょう。ルーフバルコニーは、庭の代わりになる点がメリットだと言えますが、これが最大のメリットではないでしょうか。
たとえば、日曜大工をすることもできますし、植栽を楽しむこともできます。また、家庭菜園も可能ですね。体操、ヨガなどなどもできますから、確かに暮らす人によっては重宝するかもしれません。
他にも、自分たちのしたいことがどのようなことが、できるだけ具体的に考えてみるとよいでしょう。
2.ルーフバルコニーのデメリット
次にルーフバルコニーのデメリットについて考えてみましょう。メリットとデメリットを比較してどうするか考えるべきですね。
- 雨漏りが多い
- 屋根が無いと洗濯物が雨で濡れる
- 一般的な勾配のある屋根より工事費が高い
- 維持費も一般的な勾配のある屋根より高い
デメリットとして以上の4点をあげました。いずれも大事なことですが、以降で詳しく説明します。
2-1.雨漏りが多い
ルーフバルコニーの最大のデメリットは、雨漏り被害が多いことです。ルーフバルコニーでなく普通のバルコニーでも雨漏りすることはよくあることです。面積が広くなれば、それだけ雨漏りリスクが高まるので注意が必要です。
ルーフバルコニーの下階に居室があることが多いですが、居室の天井や壁面から水染みが出てきて漏水に気づくことは多いです。その調査や補修費用などの負担が生じますし、もちろん対応する手間も負担になりますね。
2-2.屋根が無いと洗濯物が雨で濡れる
ルーフバルコニーの多くでは、屋根がありません。そこで洗濯物を干していて雨が降ってしまうと当然に濡れてしまいますね。一般的なバルコニーであれば屋根があることが多いですから、多少の雨ならそれほど濡れませんが屋根のないルーフバルコニーではそうはいかないです。
そこで、庇や霧除けを付けることをお勧めします。
2-3.一般的な勾配のある屋根より工事費が高い
建築業者から建築費の見積りをとるときに、ルーフバルコニーを設ける場合とそうでない場合と2パターンの見積りをとると確実に設ける場合の方が高くなります。
一般的な勾配のある屋根に比べて、手すり・階段・防水・下地の対応などで建築費が高くなるのです。また、階段室を屋上に設けると搭屋を構築する分だけさらに高くなります。
2-4.維持費も一般的な勾配のある屋根より高い
新築した後の維持費についてもルーフバルコニーは高くなりがちです。10年~20年で防水工事を実施しなければならず、決して小さくない費用がかかるのです。劣化が早い場合は、10年以内に補修費用も生じます。
屋根の葺き替え工事に比べて高い維持費がかかることも理解しておきましょう。
3.ルーフバルコニーのある家にするときの注意点
メリット・デメリットを把握したうえで、それでもルーフバルコニーのある家が欲しいと考えているならば、以下の注意点も考慮してプラン作りを進めましょう。
- ほとんど使わなくなることも多い(具体的な利用法をイメージしておく)
- 子供の安全・安心の工夫に注意
- 早めの点検・メンテナンスが必要(雨漏り対策のため)
- 新築時の施工で最新の注意を払うべき
- 防水の仕様、仕上げによっては、火が使えないこともあるので注意
- ウッドデッキに要注意
- プライバシーの確認
注意点も1つ1つ詳細を確認していきましょう。
3-1.ほとんど使わなくなることも多い(具体的な利用法をイメージしておく)
住宅が完成してしばらくしてから、友人を呼んでBBQをしてみたら、すぐにご近所から苦情がきたという事例があります。苦情の理由で多いのは、うるさい(騒音)ということと臭いです。
つまり、想定していた使用方法では近隣との関係で問題になることがあるということです。都市部では、隣家との距離が近いために騒音や臭いが問題となりやすいです。直接に苦情を言われることがないとしても、近隣で迷惑だと噂されている可能性もありますから注意しましょう。
また、そもそも屋上へ上がることが面倒になって使わなくなることも多いです。例えば、2階建ての建物でその上に階段を上がったところにルーフバルコニーがあるとします。それでは、ルーフバルコニーに出るために階段を上がらなければなりません。
それぐらいは何も面倒ではないと考えていた人も、毎回のように階段を上がるのは面倒に感じてくることもあるのです。2階建ての建物で1階の上(2階の一部)にルーフバルコニーがあるのであれば、2階の部屋の窓から出入りできるので使いやすいです。2階のリビングと一体で使える工夫をしておれば、よいよいかもしれません。
但し、そのためにはそれなりの敷地の大きさも必要なりますね。
また、外階段からルーフバルコニーへ上がるプランにしてしまうと、もっと面倒になりますからあまりお勧めできません。
結局、あまりに使うことがなくなり、洗濯干し場となることが多いのですが、奥様からはわざわざ階段をあがって洗濯を干しに行くのは面倒だと不満を聞くこともありうるでしょう。
3-2.子供の安全・安心の工夫に注意
ルーフバルコニーで子供を遊ばせておくと、自宅前の道路などで遊ばせるよりも安心だという考え方もあります。しかし、これもきちんと考えて工夫しておかないと親としては安心できないことが多いです。
例えば、室内からルーフバルコニーがよく見えるように設計しておくことは重要なことです。窓から見えるようにする、もしくは吹抜けから見えるようにするといった工夫です。設計者に「ルーフバルコニーで遊ぶ子供の姿を見えるようにしたい」と要望を伝えるようにしましょう。
バルコニーからの落下事故のことも考えて、手すりのピッチには注意したいですし、子供が物を落下させてしまうリスクのことも考えておきましょう。ちなみに、手すりの高さは十分なのに手すりの側に子供がのる台となるものを置いてしまい、そのために事故が起こるということもあります。注意しましょう。
3-3.早めの点検・メンテナンスが必要(雨漏り対策のため)
デメリットに雨漏りをあげましたが、その対策として大事なことは早めの点検とメンテナンスです。床面、排水口、手すり、笠木などといった雨漏りの原因となりがちな点を理解しておき、たまに点検することです。
雨漏りがひどい場合には主要構造部まで傷めてしまうこともありますから、早めの点検とメンテナンスが重要となります。
3-4.新築時の施工で最新の注意を払うべき
雨漏り対策としては、暮らし始めてからの点検だけではありません。基本となるのは、新築時の施工品質や仕様です。防水仕様については設計者や建築会社からきちんと説明を受けて納得してから判断しましょう。もちろん、建築工事にミスがあれば漏水することもありますから、建築中のチェックも欠かせません。
3-5.防水の仕様、仕上げによっては、火が使えないこともあるので注意
防水の仕様や床面の仕上げによっては、火を使えないこともあります。BBQをしたいのに火を使えないと意味がないですし、煙草を吸うこともできません。ルーフバルコニーの用途、目的を設計者や建築会社に伝えてプラン作りしてもらうことが大切です。
3-6.ウッドデッキに要注意
ルーフバルコニーには、ウッドデッキを敷き詰めたいと考えている人が多いです。確かに見栄えがよく、採りいれたいものです。
しかし、ウッドデッキにはデメリットもあります。それは、デッキの下が見えなくなるために、床面を確認することができず、防水状態を確認しづらくなることです。また、ウッドデッキの配置次第では排水口を確認することもできないケースがあります。
排水口は雨漏りが生じることの多い箇所ですから、簡単に点検できるようにしておきましょう。
3-7.プライバシーの確認
ルーフバルコニーのある家にするならば、もう1つ考えておきたいことがプライバシーの問題です。外部から簡単に見えてしまうことのないように手すりのところなどで工夫しなければなりません。
また、逆に自分たちから隣近所の室内が簡単に見えてしまうことも、苦情となることがありますから注意したいところです。目隠しを多用せざるをえなくなった結果、ルーフバルコニーからの眺望が亡くなったというのでは困りますね。
ルーフバルコニーへの憧れを持つ人は多いですが、デメリットや注意点が多いですから、これらをよく理解して慎重に検討してみましょう。