キッチンに関する注文住宅の間取り講座として、前回は「オープンキッチンと独立型キッチンの比較とメリット・デメリット」を紹介しましたが、今回はキッチンをL型・I型・II型の3つのタイプに分けて比較します。
L型キッチンを希望する人の声が多いですが、それぞれのメリット・デメリットといった特徴を把握してからどのキッチンにするか判断してください。
1.I型キッチンの特徴(メリット・デメリット)
3つのタイプのうち最初に取り上げるのはI型キッチンです。I型キッチンは、シンクやコンロ、調理スペースが横一列に並んでいるもので、それほどスペースを取らないため、このI型を採用する住宅は多いです。コンパクトマンションやアパートではI型が最も多いでしょう。
1-1.I型キッチンの配置は2パターンある
シンクやコンロなどが横一列になっているI型キッチンですが、その配置パターンは大きく分けて2つあります。1つは、壁付けのI型キッチンで、下の図のように人が壁に向かって立って料理などをするものです。
もう1つは、リビング・ダイニング(LD)の方へ向いて立って料理などをするタイプで、基本的にはセミオープンキッチンまたはフルオープンキッチンとなっています(下の図)。
アイランドキッチン(どの壁とも接することなくキッチンが島になっているもの)やペニンシュラキッチン(1方が壁付けになっているもの)は基本的にはI型ですね。
1-2.I型キッチンのメリット
I型キッチンのメリットから紹介しましょう。メリットを一覧にすると以下の通りです。
- 横への移動のみで料理などができる
- 狭いスペースで採用しやすい
- 最も安く抑えやすい
- 車いすでも作業しやすい
I型キッチンは多いですが、使いやすさと省スペースで済むことが採用される理由として多いです。
横への移動のみでシンクやコンロ、調理台が使用できることから使いやすいとされています。但し、横移動が生じるわけですから、動線が短いというわけではありません。
I型キッチンを壁付けに配置することで、キッチンスペースとダイニング等のスペースの一部を共有することができ、省スペースだと言えます。キッチンに大きな面積を割けない場合には壁付けI型キッチンが向いていると言え、コンパクトな住宅で採用されることが非常に多いです。
I型キッチンはL型と比べると価格を抑えることができます(同等レベルの商品での比較)。この点もI型がよく採用される理由の1つになっています。
1-3.I型キッチンのデメリット
I型キッチンのデメリットも紹介します。
- 横に長くすると動線が長くなってしまう
- 壁付けI型キッチンにするとLDから丸見え(配置による)
- 壁付けI型なら壁に向いて使う
I型キッチンは、横へ長いタイプのキッチンを使用した場合、横移動の距離が長くなってしまい、使いづらくなります。横移動のみで済むことがメリットでありながら、長すぎるとかえって使いづらいのですね。大きなキッチンを求めるならば、後述するL型やⅡ型のキッチンの方が向いているのです。
I型キッチンは壁付けとすることも多いですが、その場合はリビングやダイニングからキッチン内部が丸見えになってしまいます。視線を遮ることを考えてLDとの間に壁を設置すると独立キッチンのようになり、省スペースというI型キッチンのメリットを失ってしまいます。
また、セミオープンのI型キッチンとすることも多いですが、この場合は省スペースにはなりません。
もう1つデメリットとして言えることは、壁付けI型キッチンとした場合、料理や食器洗いなどをするとき壁に向いて作業しなければいけない点です。気にしない人も多いですが、これが嫌だと言う人もいます。自分の考えがどうなのか整理して判断しましょう。
2.L型キッチンの特徴(メリット・デメリット)
次にL型キッチンの特徴などを見ていきましょう。L型キッチンは、文字通りL字の形になっているキッチンのことで、多くの場合、シンクとコンロが横一列になっていません。
セミオープンキッチンで見られることが多いですが、L字の両方の列が壁付けとなっていることもあります。以下の図は両方が壁付けとなっているレイアウトです。
下の図は1方のみが壁付けになっており、オープンキッチンやセミオープンにできます。
2-1.L型キッチンのメリット
L型キッチンのメリットは以下です。
- 体を一回転せずシンクとコンロを使える
- セミオープンやオープンキッチンにしやすい
シンクとコンロの距離が近くほとんど人が移動することなく、体の向きを変える程度で両方を使用できます。調理台(ワークスペース)で作業しながら、コンロの火加減を調整するなどといったことが簡単にできて便利です。キッチン内の動線が非常に良いということですね。
また、L型キッチンはセミオープンやオープンキッチンで採用されることも非常に多いです。シンク側をLDに向けて配置して、前をオープンにしておけば、開放感がありLDにいる人とのコミュニケーションを取りやすくなります。
2-2.L型キッチンのデメリット
L型キッチンにするデメリットも理解しておきましょう。
- I型より高価(同等レベルのキッチンの場合)
- キッチンスペース(面積)が大きくなる
- コーナー部分のスペースが使いづらい
- コーナー部分下の収納が使いづらい
同等レベルの商品で比較するとI型キッチンよりL型の方が高価です。金額も大事な要素ですからね。
また、キッチンに割くスペースが多く必要になります。特にセミオープンかオープンキッチンにした場合は、キッチンスペースも広い面積を要することになります。
そして、L型キッチンにおける最大のデメリットはコーナー部分が使いづらいことです。シンクとコンロの間のスペースのことですが、コーナーの奥までは距離が遠くなってしまい女性の腕では使いづらい位置となってしまいます(前にあげた図のコーナー部を参照)。
スペースの無駄をなくすためにも、このコーナー部分の使い方はよく考えておく必要があるでしょう。あまり使用しないものを置くか、飾りを置くか(スペースにゆとりがあるなら)、最近ではタブレット等のディスプレイを置いてレシピを見ながら料理するという人もいます。
このコーナー部分の使い勝手問題はその真下の収納スペースも同様です。コーナー収納は出し入れに手間がかかるため、あまり使わないものを収納することが増えますが、何も収納せず全く使わなくなる人もいます。勿体ないですね。
最近では、そのコーナー収納が工夫されて、専用の引き出しが付いたものもありますが、その分、コストがかかってしまいます。
3.II型キッチンの特徴(メリット・デメリット)
最後にII型キッチンについて紹介します。II型キッチンは、シンクやコンロ、調理スペースが2列に分離したもので、通常はシンクとコンロが分離しています。
II型は、I型やL型に比べると採用されるケースが少ないですが、オープンキッチンでも独立キッチンでも採用可能です。
3-1.II型キッチンのメリット
II型キッチンのメリットを見てみましょう。
- コンパクトで使いやすい
- 省スペース化が可能
- 調理スペースを広くとりやすい
II型キッチンの最大のメリットは、コンパクトで使いやすいことです。シンクとコンロ、冷蔵庫のワークトライアングルの距離が短くて便利だということです。歩いて移動する距離の短さは魅力的ですね。
コンパクトで使いやすいということは、キッチンスペースに多くの面積を割く必要はありません。住宅の面積に応じてキッチンスペースを調整しましょう。
スペースにゆとりがあるならば、調理スペースを広めに確保しやすいのもII型キッチンの特徴です。
3-2.II型キッチンのデメリット
II型キッチンのデメリットは以下です。
- シンクとコンロ間で体を反転させる(向き直す)必要がある
- 床の汚れ対策が必要
- 壁に向かう時間も多い
ワークトライアングルの距離が短いことをメリットにあげましたが、歩く距離が短いものの料理中に何度も体の向きを180℃も反転させる必要があるため、これが面倒だと感じる人もいます。
II型キッチンではシンクとコンロの間に床があるわけですが、その間を調理中のものや濡れたもの等を移動させる必要性が生じて、床に何かを落とす機会が増えてしまいます。よって、床は汚れ対策を考えて塩ビシートや汚れが付着しづらいタイルとするなどの対策をとっておく必要があります。
また、II型故にシンクかコンロのいずれか一方は壁付けになります(一般的にはコンロを壁付けにすることが多い)。よって、コンロを使うときには壁に向かって作業することになりますし、調理スペースも壁付けにしたならば、壁に向かっている時間帯が長くなります。
シンク側をオープンにしてリビングダイニングと一体にしていても、あまり開放感を感じづらく、且つリビングにいる小さなお子さんを見るためには振り返る必要があります。L型キッチンでシンクをLDに向けるレイアウトにしているときの方が、コンロを使っているときでも横を見ればLDを見られるので、その方がよいと考える人もいます。
4.L型・I型・II型キッチンの選び方
L型・I型・II型それぞれの特徴を見てきましたが、読んでいてわかる通り、L型・I型・II型のいずれであっても、それをオープンにするか、独立キッチンにするか、壁付けにするかといった配置(レイアウト)によって、それぞれの特徴やメリット・デメリットも異なってきます。
キッチンのタイプ選びをするときは、L型・I型・II型の違いを比較するだけではなく、同時にオープンにするか、セミオープンにするか、独立キッチンにするかという視点でも考える必要があるのです。そのため、まだ読んでいない人は「オープンキッチンと独立型キッチンの比較とメリット・デメリット」も一緒に読んでおくとキッチン選びのよい参考になります。