ホームインスペクションの診断箇所で、もっとも大切なのが「床下」と「屋根裏」です。
なぜなら住宅の重大な不具合の多くは、床下と天井裏に症状が表れるから。
- 基礎のヒビ割れ
- 断熱材の脱落
- 配管の不具合
- 金具、ボルトの緩み、欠損
- シロアリ被害
- 湿気、カビ
- 雨漏り
など、住宅の寿命を延ばすためには無視できない症状のほとんどが、床下・屋根裏に表れます。
これらの不具合を無視すること(発見が遅れること)は、建物を劣化させることと同義。
ですので、住宅を購入するとき(新築・中古問わず)は、入念に床下・屋根裏を点検するべきです。
しかし、ご存知ですか?
「ホームインスペクション」の基本プランの点検範囲は「目視」であり、床下・天井裏に潜って点検はしません。
床下・屋根裏に潜っての点検は、オプション扱いになります。(オプション+6万円~)
安心した住宅購入のために利用されている、ホームインスペクション。
しかし「ただ基本プランを受けただけ」では、「本当の意味で安心できる」とは言い難い状況です。
この記事では、
- ホームインスペクションの検査範囲と精度について
- オプションでも、床下・屋根裏に潜るべき理由
について解説していきます。
ぜひホームインスペクションのオプションを活用して、安心できる住宅購入を目指してください。
インスペクションの基本は目視検査。何が問題なのか?
ホームインスペクションの調査範囲は、地上から見える範囲・手の届く範囲になります。
【家の外観】
- 屋根
- 軒裏
- 外壁
- 基礎外周
- バルコニー
※いずれも地上からの目視であり、脚立・ハシゴは使用しない。
【屋内】
- 床
- 壁
- 天井
- 建具
- 設備
- 床下(ただし点検口からの目視)
- 屋根裏(ただし点検口からの目視)
※各室すべて確認。
インスペクションでの点検項目は非常に多く、事後にお渡しする報告書は20~40ページにもなるボリューム。
そのため中立的な診断として、的確なアドバイスが可能です。
ただし床下・屋根裏に関しては、基本的な診断では不足します。
なぜなら点検口から確認できる範囲が限られるからです。
調査する範囲は、調査の精度に直結する。
インスペクションの基本プランもオプションも、どちらも調査する項目は同じです。
違うのは、調査範囲だけです。
点検方法 | カバー率 | |
基本プラン | 点検口から目視で見える範囲 | 点検範囲は限定的。構造によっては、ほんの一部のみ |
オプション | 床下、屋根裏に潜って確認 | 安全に移動できる範囲で、家の構造をほぼカバー |
ホームインスペクションに限らず、調査は「隅々まで行うこと」がとても大切です。
丁寧な調査であっても、調査範囲がごく一部であったら、それは「精度の高い調査」とは言えません。
ホームインスペクションにおいても、「調査範囲=調査の精度」となります。
広範囲な調査をすることは、高い精度の調査を実施すること。
そのためホームインスペクションでのオプション利用率は、60%を越えます。
多くの方が精度の高い(調査範囲の広い)インスペクションを利用して、安心できる住宅購入を目指してます。
小さな初期症状でも、見逃すと被害が広範囲に広がってしまう。
住宅の寿命を縮める、重大な不具合。
しかし重大な不具合でも初期段階では症状は小さく、点検口からの目視では見落としがちです。
ですが不具合の初期症状を見落としてしまうと、被害は広範囲に広がってしまいます。
広範囲に広がった被害を食い止めるのは大変なこと。
だからこそ、住宅購入の段階に点検口から潜っての調査が大切になるのです。
床下のシロアリ被害は、1カ所の見落としが命取りに。
マイホームで怖いのが、シロアリ被害です。
木材を食べてしまうシロアリは、家の主要構造材をスカスカにしてしまいます。
叩くだけでボロボロと崩れていく構造材に強度はなく、地震で倒壊する危険が高いです。
事実、「過去、大きな地震によって倒壊した家は、シロアリ被害を受けていた」という報告もあります。
シロアリ被害の一番の対策は、予防と早期発見です。
5年に一度の防蟻処理だけでなく、定期的な床下確認が大切。
それも床下点検口から見える範囲ではなく、床下に潜った広範囲な調査が必要です。
とくに床下構造が「布基礎」の住宅にはご注意ください。地面が木材に触れやすい構造のため、シロアリ被害リスクが高まります。(築年数の古い中古住宅に多い)
購入を検討している住宅が「布基礎」である場合、床下に潜っての調査が必要でしょう。
屋根裏の雨漏りは、長い年月をかけて家を劣化させる。
天井裏で危惧すべき不具合は、雨漏りです。
たとえ「防水シートの切れ目から染み出る程度の雨漏り」でも、長い年月をかけて確実に家を劣化させます。
- 湿気、カビ
- 断熱材の性能低下(グラスウール)
- シロアリ被害の原因
屋根裏の不具合は、時間とともに広範囲に深刻化していきます。
小さな水濡れの形跡でも、早期発見が大切です。
しかし天井裏の点検口からの目視だけでは、小さな水濡れの形成の発見はできません。
断熱材や構造材の影にかくれた水濡れを発見するには、天井裏に潜る必要があります。
床下に潜る点検より危険が多く、ホームインスペクションのオプションを利用したいところです。
床下・屋根裏の点検オプションは受けるべきか?
床下・天井裏の点検はオプション扱いであり、通常のインスペクション+6万円~の費用がかかります。
しかし結論から申し上げますと、追加費用はかかりますが、安心した住宅購入をするため、ぜひ受けて頂ければと思っております。
理由は2つです。
①住宅の購入費に比べれば、オプション代は高くはない。
②重大な不具合は床下、天井裏にあり、早期発見が大切だから。
「オプション代は高くはない」と申しましたが、「安くもない金額」ではあります。
しかし住宅購入の全体費用(1,000万~3,000万円)を考えると、「オプション代+6万円~」は必要経費としてご理解頂きたいところです。
さらに住宅購入は、人生に大きな影響を与えます。
購入した住宅が欠陥住宅であると、その後の人生は非常に大変なものに。
「失敗しない住宅購入のための費用」と考えると、納得感があるのではないでしょうか。
大切なマイホーム、誰だって末永く住み続けたいと思うもの。
家の寿命を延ばすには、不具合の早期発見・早期解決が大切です。
新築・中古問わず、購入時に念入りに調査し、不具合が小さな初期症状のうちに解決すべきでしょう。
住宅購入は、購入してからが長いです。
住宅ローン期間は35年。その間、ずっと安心して暮らせる家でしょうか?
「安心して暮らせる家の購入費」として考えれば、インスペクションの床下・天井裏オプションは受けるべきと判断します。
まとめ:床下・屋根裏は、潜って点検を。
通常のホームインスペクションでは、検査範囲は目視です。
そのため床下・屋根裏の調査範囲が限定されてしまい、重大な不具合を見落とす可能性があります。
とくに床下・屋根裏には、重大な不具合の症状が表れやすいもの。
- シロアリ被害
- 雨漏り
- 湿気、カビ
- 断熱材の欠損
- 基礎のヒビ割れ
これらの不具合は、初期症状のうちに発見・解決したいところです。
床下・天井裏に潜っての調査は、多くの業者でオプション扱いになっています。
ですが全体の予算や住宅購入の重要度を考えると、決して高い費用ではないでしょう。
ぜひ床下・屋根裏に潜っての調査を活用し、安心できる住宅購入を目指してくださいね。