2020年の民法改正により、ホームインスペクションの通知が義務化されました。
そのため不動産会社から、契約前にインスペクションの希望があるか確認されます。
インスペクションの認知度が高くなり、公平な不動産取引が目指せるようになった一方で、
「いきなり通知されても、実施するべきか判断できない!」
とのトラブルが増えたのも事実です。
(さらに不動産会社が紹介した業者のインスペクションによるトラブルもあり)
本来であれば、ホームインスペクションは「契約前」に受けて頂きたいところ。
しかしやむを得ず、契約後の診断を検討しているケースもあるかと思います。
そこでこの記事では、
・契約前にインスペクションを受けるべき理由。
・契約後にインスペクションを受ける効果、タイミング。
を解説させて頂きます。
ホームインスペクションを有効活用するため、ぜひ最後までお付き合いください。
ホームインスペクションは、原則「契約前」。
ホームインスペクションは、原則「契約前」に診断を受けることをおすすめしています。
理由は2つ。
1・受診して重大な欠陥があった場合、契約を白紙に戻せるから。
2・インスペクション業者を自分でじっくり探せるから。
以下、詳しく理由を解説します。
「事前診断」がインスペクションの基本。
新築、中古住宅に関わらず、一定の確率で重大な欠陥は起こります。
・屋根から雨漏りしている。
・基礎に大きなヒビ割れがある。
・シロアリ被害が見つかった。
・窓の開閉が悪いと思ったら、家が傾いていた。
大手ハウスメーカー・築浅物件・パワービルダーの建売住宅。
いずれにしても、一定確率で欠陥は起こるため、「この家は絶対に欠陥はない」と言い切れないのが住宅です。
ですので、購入(契約)前に、第三者の立場から客観的に診断することが大切なのです。
ホームインスペクションの結果、重大な欠陥が見つかった場合、契約前であれば、契約を白紙に戻せます。
しかし契約した後に欠陥が見つかった場合、契約は簡単には解除できません。
・売主の責任で補修する(責任を問える場合のみ)。
・保証の範囲で費用を支払う。
・補修も費用の支払いも対応できない場合、契約解除。
「欠陥が見つかった → すぐに契約解除!」とはなりません。買主が自分で補修するしかないことも非常に多いです。
そのため「契約前」にホームインスペクションを受けることで、契約後の諸々のトラブルを未然に防げるのです。
契約前なら、インスペクション業者もじっくり選べる。
ホームインスペクションで大切なのが、
・診断内容
・診断の客観性
の2点です。
どちらかが欠けてしまうと、適切なインスペクションにはなりません。
そのためホームインスペクション業者は、時間をかけて選ぶべきです。
注意したいのが、不動産会社が紹介するインスペクション業者です。
どうしても不動産会社と利害関係に当たってしまうため、
・最低限の範囲でしか診断しない。
・規定値に達しない不具合は、報告しない。
・診断の表現がマイルドになる。
物件が売れることを優先した診断になるケースが散見されます。
客観性を担保したインスペクションを実施するには、自分で業者を探す必要があります。
そのベストタイミングは、やはり「契約前」になるのです。
ほかの客に先を越されてしまうリスクも。
とはいえ、「契約前のホームインスペクションが絶対正しい!」と言い切れないケースもあります。
それは人気物件の購入を検討しているときです。
購入希望者の多い人気物件では、じっくり検討する間もなく売れてしまうこともあります。
ホームインスペクションを契約前に受けると、
・ホームインスペクション業者を調べる、連絡する、比較する。
・ホームインスペクションの日程を調整する。
・ホームインスペクションを実施して、診断内容をもとに検討して契約する。
どうしても契約までの期間が長くなってしまい、先に購入されてしまうかもしれません。
そのため人気物件の場合、「契約前に受けるべきか?」の判断は、ケースバイケースです。
目安としては、
・築浅物件(築1~3年で、目立つ欠陥がない)
・修理履歴、メンテナンス履歴がしっかり残されている。
・すでにホームインスペクションを受けている。(※)
・ハウスメーカーの診断を受けている。(※)
などの物件では、ほかの購入希望者の状況を加味して、トータルで考えるべきでしょう。
※ただし売主主導で実施したインスペクションは、第三者性が担保しにくいケースが多いです。
同様にハウスメーカー独自の診断も、すべてを鵜呑みにはできません。
「どうしてもこの物件がいい」
「じっくり内覧した結果、重大な欠陥がある確率は低そうだ」
「重大な欠陥があったとしても、この物件を契約したい」
住宅購入の事情はさまざまです。
どうしても契約前の診断が困難なら「契約前」のインスペクションに囚われることなく、「契約後」のインスペクションも視野に入れて考えてみましょう。
契約後のインスペクションは、「引き渡し前」に!
ホームインスペクションの原則は「契約前」。
ただし「契約後」のタイミングでも、インスペクションを受ける意味は大いにあります。
具体的なタイミングとしては、
・引き渡し前
・瑕疵の保証期間内
・リフォームを実施する前
などのタイミングでホームインスペクションを受けることで、適切な住宅購入(リフォーム)が目指せます。
「契約後~引き渡し前」なら、補修対応がスムーズになる可能性あり。
住宅購入の流れの中で、大きなポイントになるのが、
・契約
・引き渡し
の2つです。
引き渡しとは、物件の代金を支払い、その物件の権利を手に入れること。
つまり引き渡しが完了して、晴れて「自分の家」となるのですね。
自分の家になることは、業者の手を離れてしまうこと。
住宅の代金を手に入れた業者とは、連絡がつきにくくなることもしばしば。
そのため引き渡し後のトラブル対応は、難しくなりがちです。
・業者との連絡がつきにくい。
・業者の対応が遅い。
・業者が素直に欠陥を認めない。
など、補修対応がスムーズに進まないこともあります。
しかし引き渡し前のホームインスペクションであれば、
・重大な欠陥であれば、補修をしてから引き渡し。
・補修できない欠陥であれば、契約解除も可能な場合あり。
といった対応も可能です。
不動産会社にとっても代金を未回収のため、親切・丁寧な対応になることでしょう。
引き渡し後のインスペクションは、「保証期間内」に!
「引き渡し前」に受けたいホームインスペクション。
とは言っても、引き渡し後でも不具合が気になるときもあります。
引き渡し後でも不具合が気になるのなら、早い段階でのホームインスペクションをご検討ください。
なぜなら瑕疵の保証期間内に欠陥が発見できれば、補修などの対応が期待できるからです。
とくに中古住宅には注意が必要です。
中古住宅の保証期間は3カ月と短く、早く診断しないと期間が過ぎてしまいます。
中古住宅の瑕疵の保証の正式名称は、「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものがあるときに売主が負う責任(略して、契約不適合責任)」です。
売主が個人である場合、保証期間は1~3カ月になることが多いです。
引き渡し後のタイミングでのインスペクションでも、十分に効果が見込めます。ただし検討するなら、できるだけ早いタイミングで。
瑕疵の保証期間内に診断を受けることをおすすめします。
リフォーム前のインスペクション。
引き渡し後のインスペクションのタイミングとして、「リフォーム前」があります。
リフォーム前提で中古住宅を購入した場合、リフォーム前にインスペクションを受けることで、
・第三者の立場から、リフォームが必要な部分が分かる。
・優先的に補修、補強する部分が分かる。
・見た目だけでなく、本当に必要なリフォームが分かる。
などのメリットがあります。
リフォーム業者でも事前診断は可能ですが、工事費において利害関係となるため、診断内容が担保できないデメリットがあります。
注文住宅は、建築中のインスペクションが効果的。
インスペクションは、建売・中古住宅だけではありません。
注文住宅でもインスペクションを受けることができます。
ゼロから建築する注文住宅では、建築中のタイミングでのインスペクションがおすすめです。
・内部構造までチェックできる。
・建築状況に合わせて、複数回チェックできる。
・家が完成する前に、不具合のチェックができる。
インスペクションが複数回に渡ることで、費用はかさみます。
しかし全体の住宅費用から考えると、ホームインスペクションの費用の割合は低いです。
注文住宅であれば、建築中のタイミングでインスペクションを受けてみてください。
まとめ:適切なタイミングでホームインスペクションを。
ホームインスペクションを受けるタイミングは、原則「契約前」をおすすめしています。
「契約前」であれば、契約を白紙に戻せるからです。
ただし「契約後」であっても、
・引き渡し前
・瑕疵の保証期間内
・リフォーム前
などのタイミングで、ホームインスペクションは活用できます。
※いずれにしても、早いタイミングをおすすめします。
客観的な立場から住宅の状態を診断するインスペクション。
民法改正により、認知度が一気に高まりました。
ぜひ有効活用するためにも、ベストタイミングでの診断をご検討ください。