注文住宅の楽しいところの1つは、自由に好みの住まいをプランニングできることです。単純に全体の間取り(部屋の配置)だけを考えるのではなく、リビングや子供部屋、キッチン、廊下、玄関など1つ1つのスペースについて細部にこだわったプランとすることも可能です。
ただ、設計者と異なり何度も何度も家づくりをするわけではないですから、住宅が完成して住み始めてから「こうするべきだった」と後悔する人は多いものです。1つ1つのスペースにおいてどういうことにこだわればよいのか、また何に注意してプランニングすればよいのかわからないのも無理はありません。
そこで、各スペースにおいて注意すべき点などをあげていきますので、注文住宅のプランニング、間取り作りに活かしてください。注文住宅の間取り講座シリーズとして更新していきますが、その第1弾は玄関ポーチです。
1.玄関ポーチの屋根がフラットルーフなら掃除が大変
1つ目に挙げるポイントは玄関ポーチの上にある屋根です。この屋根は住宅に出入りするときに雨で濡れないようにするためにあるものですが、建てた後のメンテナンスのことも考えたいところです。
平らな屋根のデザインが好まれてフラットルーフが採用されることが多いですが、フラットルーフのデメリットは屋根の上を掃除しづらいということです。フラットゆえに枯葉などが落ちても自然に落ちてもらえないことが多く、2階の窓からフラットルーフの上を見るとひどい状態になっていることに気づくことがあります。
上の写真のような屋根ならば、屋根上にはゴミが溜まりやすいですね。ただ、2階の窓から容易に掃除しやすい距離感であれば、このデメリットを気にしなくてよいわけですから清掃、メンテナンスを考慮したプランニングをしたいところです。
この写真のように庇タイプにすると上の清掃がやや困難です。梯子をかけて清掃しやすいかどうか確認しましょう。デザイン性に優れたものが実用性の面ではデメリットになることは多いものです。
上のように玄関ポーチの屋根が2階のバルコニーになっているプランもあります。これは2階からバルコニーに容易に出られますから清掃しやすいですね。
上の写真はフラットルーフではなく勾配のある屋根です。勾配があれば下へ落ちてきますから、それほどマメに清掃する必要はありません。但し、樋に落ち葉などが詰まってしまうことがありますから、樋はきちんと清掃しておきましょう。
2.玄関ポーチの床や玄関の土間がタイル仕上げなら割れが多い
玄関ポーチの床仕上げ材には、タイルが使用されることが非常に多いですね。大変多くの住宅で採用されています。タイルは素材にもよりますが割れやすいものですから、その点は理解しておく必要はあるでしょう。何か硬いものを落とすと割れてしまうことはよくあることです。
特に、施工する際にタイルに浮きがあるとちょっとしたことでも割れてしまうことがありますから、丁寧に施工してもらいタイルの浮きがないようにしてもらいましょう。建物完成時の施主検査の際に、タイルの浮きがないかチェックすることが大事です。
第三者の専門家に施主検査に立会いを依頼すると、打診棒でチェックしてくれるはずですから、第三者検査(ホームインスペクション)も検討するとよいでしょう。
3.雨でも滑りづらい床材選び
タイルは素材によっては滑りづらいのが難点です。玄関ポーチには屋根を設置すると思いますが、それでも風や雨の強さによってはポーチが濡れることがあるのは間違いありません。また、外で濡れた靴でポーチを歩くことになりますから、雨が吹き込んでいなくとも注意しなければなりません。
玄関ポーチには滑りづらいタイル(タイル以外でも)を選ぶようにしましょう。建築会社や設計者から滑りやすい商品を提案してくることはないと思いますが、施主から指定したときに建築会社等がリスクについて説明してくれないタイプの人であれば選定ミスが起こる可能性もありますから、滑りづらいものかどうか聞いておくとよいでしょう。
ちなみに、ポーチ床タイルは滑り止め対応のものが多いですから、いろいろな商品から選ぶことが可能です。但し、滑り止めのものはボツボツしていて清掃しづらいものが多いことも理解しておきたいポイントです。
4.雨の時に傘をさせるだけの屋根の大きさが必要
雨が降っているときに外出するときをイメージしてください。玄関からポーチへ出て、ポーチの屋根下の位置で傘をさしてから出かけていくのではないでしょうか。
このとき、玄関ポーチ上の屋根が小さいとドアを開けてから傘をさすまでの間に雨でびしょ濡れになってしまうこともあります。強い雨風ならば仕方ないかもしれませんが、それほど強い風でもないのに濡れてしまうのは残念ですね。
5.玄関ドアを開けても人がポーチ上でゆとりあるスペースが必要
玄関ポーチの床が狭いのも問題です。住宅内から外へ出るときは玄関ドアを外へ開くので多少狭いポーチであっても外へ出やすいです。しかし、そのドアを閉めて鍵を閉める動作をイメージしてください。ポーチが狭いとドアを閉めるためにポーチから一度降りないといけないということがあるのです。
外出先から帰宅したときも同様です。外から中へ入るときには玄関ドアを手前に開く必要があり、ドアを開いたときに自分がポーチから降りないといけないということがあります。
さらに雨の日にはポーチが小さく、その上の屋根も小さいと雨に濡れながらポーチを上り下りしなければならず、多少のストレスを感じることになるでしょう。
都市部の狭い土地に住宅を建てるときにおこりがちなことであり、都心の3階建て住宅ではこういうケースを何度も見かけました。プランニング時にはよく注意してください。
6.手すりの設置 ~バリアフリー対応~
家づくりをするとき、バリアフリー対応は非常に大事なことですね。玄関ポーチについていえば、手すりを設置することです。もちろん、ご家族で必要な人がいるならば対応すべきことだと認識しておけばよいでしょう。
地面からポーチへの上り下りのために手すりが必要なご家族がいるかどうか、また頻繁に必要な人が訪れるか同かで判断したいところです。手すりは後からでも容易に設置することはできますから、必要性をよく考えて判断しましょう。
7.スロープの設置 ~バリアフリー対応~
玄関ポーチ周りのバリアフリー対応といえば、スロープも考えてみましょう。車椅子でも出入りしやすいように必要なものです。ただ、現実的には敷地の広さが必要となりますから困難ですね。敷地面積にゆとりがあり、車椅子対応が必要ならスロープの設置も検討しましょう。
8.新聞・郵便物・宅配便の受け取り方法の検討
新聞や郵便物、宅配便の受け取り方法についても考えておきましょう。
例えば、新聞や郵便物を外に出なくても取れる位置であれば、近所や通りがかりの人の目を気にする必要がなくて便利ですね。玄関ドア横などにそういったポストを設置しておくのも1つの方法です。
一方でデザインを重視するならば、上の写真のように何か施主のこだわり、好みを反映してはいかがでしょうか。玄関ポーチ周りはその家の外観イメージを形成する大事な要素であり、ポスト1つでイメージが変わることもあります。
最近は宅配便の再配達問題が話題になっていましたが、一戸建て住宅用の宅配便BOXなども商品化されてきています。留守が多くて荷物の受け取りに困っている人ならば、検討してはいかがでしょうか。
9.床面と基礎の高さ次第で雨水の侵入リスクがある
玄関ポーチの床面と基礎の天端(基礎立ち上がりの一番上の部分)の高さがほぼ同じぐらいになっていて、ポーチの床面ではねた雨水が基礎の天端にあるパッキンから床下へ浸水していた事例があります。強い雨なら床面からの跳ね返りが問題になることがありますから、こういったことになるリスクがないか設計者に聞いてみましょう。
床下へ浸水した上に床下の換気が不十分であれば、床下環境が悪化してカビが生じることもあります。