ホームインスペクション

ホームインスペクションの利用前に抑えておくべき基礎知識

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ホームインスペクションの利用前に抑えておくべき基礎知識

この数年の間に、不動産業界・住宅業界ではホームインスペクション(住宅診断)と呼ばれるサービスが急速に普及してきました。主に住宅購入時に利用されていますが、その他にも様々な場面で利用され、重宝されています。

住宅を購入・新築・リフォームする消費者はもちろんですが、この流れを理解できていない不動産・住宅業界の人もホームインスペクション(住宅診断)の基礎知識をここで学んでおき、住宅取得や売買、建物のメンテナンス等に上手に活用しましょう。

1.ホームインスペクションとは?

ホームインスペクションと聞いてもどんなものであるのか、ほとんどイメージできない人のために概要を説明しましょう。

1-1.ホームインスペクションの概要

ホームインスペクションとは、住宅診断や住宅検査など同じ意味で利用されていることが多い言葉で、住宅建物の劣化具合や施工不良の有無を調査するものです。インスペクション時点における建物の状態を把握するためのものであり、将来の建物の状態を確認できるわけではありません。

しかし、ときには見つかった症状の原因や今後の影響まで検討することもあります。この点については、ホームインスペクションサービスを提供する事業者によく確認してから利用するとよいでしょう。

1-2.既存住宅インスペクション・ガイドライン

ホームインスペクションの概要を知るうえで参考になるものがあります。それが、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」です。このガイドラインは、2013年6月に策定し公表したもので、既存住宅、つまり中古住宅を対象としたものです。

対象物件は中古住宅ですが、考え方は新築住宅においても参考になりうるものです。

このガイドラインのなかで、基本的な考え方は以下の内容だとしています。

<現況検査の内容>

●現況検査の内容は、売買の対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位毎に生じているひび割れ、欠損といった劣化事象及び不具合事象(以下「劣化事象等」という。)の状況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・検査結果を依頼主に対し報告することである。

●現況検査には次の内容を含むことを要しない。

  1. 劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否か、欠陥とした場合の要因が何かといった瑕疵の有無を判定すること
  2. 耐震性や省エネ性等の住宅にかかる個別の性能項目について当該住宅が保有する性能の程度を判定すること
  3. 現行建築基準関係規定への違反の有無を判定すること
  4. 設計図書との照合を行うこと

前述したように、劣化や不具合を把握するものであって、その原因を判別する調査までは含めていないことがわかります。ちなみに、建物の有する性能や法規違反、図面との照合も含まれないとなっています。

但し、一次的なホームインスペクションに含まないということであって、依頼者と事業者の間で合意してこういった調査まで実施することはできます。

2.ホームインスペクションの基礎知識

ホームインスペクショの概要の説明だけで少し長くなってしまいましたが、次に基礎的な知識を解説しましょう。

2-1.ホームインスペクションでは何を調査するのか?

利用を検討している人が、「結局、何を調査してくれるのだろうか?」と疑問をもつことがあります。これについて説明します。

対象となるのは、建物本体のみです。事業者によって外構まで対象としていることがらいますが、基本的には建物本体です。

建物の外側では、基礎・外壁・軒・屋根・バルコニー(ベランダ)・開口部(サッシ等)が調査対象となりますが、このうち屋根についてはその上へ登って調査することは基本的にありません。敷地内やバルコニーから目視確認できる範囲に限られます。

建物の内側では、リビングや洋室、和室などの居室のほか、廊下、玄関、階段、洗面室などの全てのスペースが対象となります。収納内もそうです。また、点検口があれば、その内部の確認も含まれます。点検口は床下や天井裏、小屋裏を点検するためにあるものです。

2-2.なぜ普及したのか?

2000年頃には、まだ日本にホームインスペクションという言葉が使われることもなく、このようなサービスが利用されることも稀なものでした。2000年半ばごろから、普及し始めて、今では大変多くの人が利用するに至っています。

それでは、なぜこういったサービスが普及したのでしょうか。それは、消費者の潜在的なニーズと改善されない建築・不動産業界の体質、そしてインターネットの普及の3点が非常に大きく関わっています。

欠陥住宅の問題は昔からありますが、今でもこの問題は解決しておらず、全国で多数の欠陥住宅関連のトラブルが続発しており、多くの被害者がいます。また、中古住宅の購入直後に雨漏りや著しい劣化などの問題で対応に苦慮する人も多いです。

実際に問題を抱える住宅建物が多いなかで、消費者が心配を抱くのも無理はありません。建築業界は現場任せできちんと管理することが出来ていないことが多く、不動産会社は建築現場に興味を持たないためにチェック機能が働かず、欠陥問題が改善しないのです。

そういった状況下で、第三者の専門家によるホームインスペクションが登場し、普及してきたのです。

2-3.これからのホームインスペクション

中古住宅の売買においては、2018年4月より、不動産会社が売主と買主の双方に対してホームインスペクションを利用するかどうか確認することが義務付けられることになりました。これは宅地建物取引業法の改正で定められたことです。

これまで、不動産会社の多くは、買主がホームインスペクションの利用を希望しても、何か理由をつけて拒もうとしてきました。調べられて何か問題が発覚すれば、買ってもらえない可能性があるからです(他にも理由はある)。

しかし、ホームインスペクションを説明し利用の意思確認まで義務付けられたため、これで利用拒否は通りづらくなります。これまで普及してきたものですが、2018年以降はさらに加速することになるでしょう。

3.ホームインスペクションを利用する目的

ホームインスペクションを利用する人の目的は様々です。誰がどのようなときに利用しているのか、解説していきましょう。

3-1.住宅購入前の利用

最も多く利用されているのは、住宅を購入する前のホームインスペクション(住宅診断)です。新築物件でも中古物件でも数多く利用されており、契約前に購入判断をするために、もしくは念のための確認のために利用したいという人が多いです。

売主や不動産仲介業者から抵抗にあうこともあり、契約前に利用できなかったという人もいますが、このような対応の悪い不動産会社も徐々に減ってきつつあります。

3-2.住宅購入後の利用

住宅購入後に利用する人もいます。契約してから引渡しを受けるまでの間に利用するパターンで、引渡し前の最終確認という意味合いがあります。特に、新築物件ではこのタイミングで利用する人が多く、施工不良などを指摘して補修を求めるのです。

竣工検査や完成検査、内覧会などと呼ぶこともあります。

3-3.居住中

自分が居住している自宅に対してホームインスペクションを利用する人も増えつつあります。ホームインスペクションで建物の悪いところがわかれば、早めに補修・メンテナンスすることができ、結果的に建物を長持ちさせることができます。

人の病気と同じで建物の問題も早期発見・早期対処が肝心です。

また、築後10年近く経過した住宅の所有者のなかには、売主や建築会社による10年保証が切れる前にホームインスペクションで問題が無いか確認し、保証対象となる事象が見つかれば、補修を求めるために利用する人も増えています。

3-4.リフォーム・リノベーション

住宅をリフォーム、リノベーションしようとする人が利用することもよくあります。建築会社の意見だけではなく、第三者の客観的な意見を取り入れて、リフォーム時に建物の悪いところを一緒に補修しようということです。

また、リノベーション工事の途中で施工品質の検査を利用する人もいます。

3-5.売却前

今はそれほど多くありませんが、今後は、自宅を売却する人が利用するケースも増えると考えられます。買主が利用することが多いのですが、売主が自らホームインスペクションをしておくことで、買主に対してアピール材料になると考えられているため、売主からの依頼が増えるのです。

 
ホームインスペクションの基礎知識をまとめてきました。今後もいろいろな目的で利用されることになりますが、必要に応じて上手に利用してはいかがでしょうか。

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