注文住宅の間取り講座シリーズの第2弾は玄関です。第1弾では、玄関ポーチについて書きました(玄関ポーチのプラニングの注意点 ~注文住宅の間取り講座~)が、今回はポーチから建物内部へ入ったところの玄関をテーマにしています。
玄関のプランを検討するときの参考としてください。
1.上り框の高さに注意
玄関土間から廊下(もしくはホール)へと上がる境の部分を上り框(かまち)と言います(下の写真の部分)が、この上り框の高さについてはよく考えておいた方がよいでしょう。
玄関土間のところで靴を脱いで廊下へと上がるわけですが、この段差部分をバリアフリーにした方が良いという考えで段差のないものにすることがあります。確かに躓かないですし、框をまたいで廊下へ移動するのも楽です。
しかし、上り框の高さはバリアフリーの視点だけではなく、利便性についても考えるべきでしょう。
例えば女性がブーツを脱ぐときや履くときには上り框の高さが十分にあったほうが、腰掛けて脱いだり履いたりできて便利です。高齢者が靴を脱いだり履いたりするときもそうですね。
それでもバリアフリーを優先したい場合は、ベンチを置くなどして利便性を考える工夫をしましょう。ベンチは腰掛ける以外にも意外と利用できます。買い物から帰宅したときに、ベンチに買い物袋を置くということもできますね。
2.手すりの設置 ~バリアフリー対応~
玄関ポーチでもそうでしたが、玄関においても手すりの設置を検討しましょう。バリアフリー対応ですね。
上り框の上り下りは高齢者に厳しいこともあります。そういう所では手すりをつけておきたいものです。
3.シューズクローゼット・下足入れと収納量
玄関といえばシューズクローゼットですね。収納すべき靴、サンダルなどの量とシューズクローゼット(下足入れ)の収納量を確かめてサイズを決めましょう。普段使用する靴は取り出しやすいところ、そうでないものは収納の奥とわけておくこともできますから、この点も考慮して検討しましょう。
収納すべきものが多いときは、ウオークインシューズクローゼットとすることもありますから、よく検討してください。
4.生活や家族構成に応じた玄関収納
玄関に収納しておきたいものは、靴だけではありません。その家庭によって様々なものがありうるでしょう。
例えば、小さなお子さんがいるならば乳母車がありますね。子供用の雨具や三輪車を置いておきたいこともあるでしょう。また、車椅子や高齢者が使用する買い物カートも玄関に収納したい家庭もあります。
アウトドア派のファミリーならば、BBQコンロや釣竿、ゴルフセットなどもあるのではないでしょうか。
こういった荷物を収納できる玄関収納を慎重に検討しましょう。ウオークインシューズクローゼットをそういった物置スペースと兼ねる方法は有効です。
5.二世帯住宅の玄関の配置
二世帯住宅の場合、玄関の配置についても慎重に検討したいものです。あえて2つの玄関の位置を離すことでお互いのプライバシーを確保するという考えもあれば、1つの玄関を共有するという考えもあります。親世帯と子世帯でよく話し合っておくべきテーマだといえます。
6.顔としての玄関ドア
玄関ドアはデザイン上、大事なものです。建物外観の印象に大きく影響しますし、こだわる施主も少なくありません。外壁との兼ね合いを考慮するのは当然のことですが、門扉やコスト、植栽などのエクステリアと一緒に考えておきたいものです。
7.玄関の飾りつけとライト
玄関についてもこだわりを持ちたい人は多いでしょう。使用するクロスやタイルといった仕上げ材だけではなく、花や絵画などを飾ることで玄関のイメージを完成させることは多いですね。どういった玄関にしたいのか検討するべきですが、玄関収納の形状や収納量との兼ね合いも考慮しながら決めていきましょう。
玄関の照明(ライト)もその選択によってイメージが変わってしまう大事なものです。照明器具の選定は建物の完成が近づいてからということも多いですが、ある程度、創りたい玄関のイメージを考えておき、内装も選んだ方がよいです。
空間全体を照らすためのライトも、飾りを照らすためのライトもよく検討しましょう。
8.北側玄関の採光の工夫
照明とも関連があることとしては、採光です。南側にリビングを配置することなどの影響もあって玄関を北側に配置するプランは多いです。しかし、北側の玄関は採光を得にくくて暗くなりがちです。
明るく快適な玄関とするためには、トップライトやハイサイドライトといった工夫も考えたいものです。トップライトとは天井に設ける窓で、ハイサイドライトとは壁の上部に設ける窓です。上方向から上手く自然光を採り入れましょう。
9.鏡の設置
あると便利なものとしては、鏡です。出かける前に玄関で全身を鏡に移してチェックできれば便利です。女性ならば、靴を履いた状態で全身を写すことができれば理想的ではないでしょうか。
鏡のサイズと人の立ち位置を具体的にイメージして、配置するようにしましょう。玄関収納の扉に取り付けることが多いですが、広いウオークインシューズクローゼットがあるならば、その内部に設置する方法もあります。
10.断熱材の配置
玄関では、そのプランによっては一部で断熱材のない箇所が生じていることもあります。基本的には断熱材で建物全体を覆ってしまう必要があるのですが、玄関では疎かにになっていることがあるのです。玄関土間の周囲の土台・基礎のところにどのように断熱材を設置するのか、設計者と話し合ってください。
11.防犯対策
玄関では、防犯対策についても考えておきたいところですね。ドアの鍵の種類をどうするか(ピッキングに強いディプルキーにする等)、ドア横にガラスを設けないなどの工夫です。
玄関ドア横にFIX窓を設けて採光を得ようとするプランは多いですが、そのガラスを割って玄関ドアを開錠したり、そこから侵入したりということがあります。
玄関は大事な収納が深く関係する場所ですから、時間をかけてプラニングしてもよいのではないでしょうか。