中古住宅を購入しようと考えている人のなかには、少しでも新しい家を買いたいと考えている人が多いです。やはり、新しい住宅の方が綺麗だし安心できるという意識は強いのでしょう。
しかし、多くの中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)の経験から、築年数だけで物件選びをすると失敗することが多いことを知っていますので、あまり築年数にとらわれすぎないことも大事だと考えています。これまでの経験をもとに築年数だけで選んではいけない理由や判断材料をアドバイスします。
1.見た目が綺麗でも安心できない
築年数の浅い住宅を優先したい理由の1つは、古い住宅より見た目が綺麗だからでしょう。はじめて物件見学したときの第一印象は多くの住宅購入者に大きな影響を与えるように、見た目の綺麗さ、良し悪しは重視されています。
重視するつもりがなくても、心理的に影響していることは多いでしょう。
1-1.見た目=表面的なこと
建物の外観でも内装でも見た目とは、つまり表面的なことです。室内壁や天井のクロスが綺麗とか、床フローリングが綺麗といったことは、表面的なことであり、その建物が構造的に問題ないかどうかとはほとんど関係ありません。
ホームインスペクション(住宅診断)を依頼する人が、「見た目は綺麗なんですが、念のためにインスペクションしてもらいたい」と言いますが、見た目とインスペクションで見る点はあまり関係ないのです。見た目では、大きな傷や破れ、汚れがないかくらいの確認になりますが、インスペクションでは機能・性能的に問題ないかといったことをチェックしていきます。
1-2.表面上の問題とホームインスペクション
表面的な部分がいくら綺麗であっても、ホームインスペクションでいくつも指摘事項があがる住宅は多いのです。逆に、表面的に汚れていて印象が悪くても専門家がインスペクションして建物の状態を見ると大きな問題がないことだって多いです。
見た目が綺麗でも安心できないですが、見た目が悪くてもすぐに悲観的になる必要はないということです。
2.築浅でも構造上の不具合がある
築年数の浅い住宅を好む人が多いもう1つの理由は、構造上の不具合が少ないという思い込みです。あえて思い込みと書きましたが、築浅なら構造上の不具合が少ないというのは事実ではないからです。
2-1.構造上の不具合とは?
住宅の構造上の不具合といってもいろいろありますが、例えば床や壁の傾きが大きい場合、構造上の不具合である可能性があります。できれば、各部屋で床・壁の傾斜を測定して大きな傾きがないか確認すべきです。
また、床下や小屋裏(屋根裏)を覗いて確認すると、構造金物の緩みやアンカーボルトのはずれ、基礎の破壊・大きな欠損などが見つかることがあります。これらも構造的に問題のあるものです。状況によっては耐震性を著しく落としているケースもあります。
雨漏りや設備漏水、著しい結露などによって木構造部が腐食・不朽しているケースが見つかることもあります。漏水による被害の拡大ですね。
2-2.新築工事の不具合は補修しない限り存在し続ける
前述したような構造上の不具合には、新築のときの手抜き工事(欠陥工事)が原因となっているものが少なくありません。このような場合、その不具合は新築の時点から存在しているわけですから、築年数の浅い中古住宅でもそのまま問題が残されているわけです。
つまり、築浅の住宅を購入してもリスクがあるというわけですね。
一度、きちんと補修しない限りは新築時の不具合は存在し続けているのです。もちろん、それは古い住宅になっても同様です。
3.購入前のホームインスペクションが大事
築年数の浅い中古住宅だからといって安心できないですし、築年数だけで選んでしまってはマイホーム購入に失敗することがわかったでしょう。しかし、リスクがあることがわかっただけでは解決になりません。
そこで役立つのが、建物の専門家によるホームインスペクション(住宅診断)です。中古住宅を売買するときには、専門家である一級建築士によるインスペクションが有効です。
ただし、注意すべき点は、不動産会社が斡旋するホームインスペクション業者や売主が依頼したホームインスペクションの結果に惑わされないことです。売主も不動産会社もどのような物件であっても売買を成立させることで利益を上げる立場ですが、買主はどのような物件であってもよいわけではありません。
つまり、利害が対立しているのです。
売主や不動産会社が斡旋するホームインスペクションは、簡易的な最低ラインの調査しかしておりませんが、買主にとってはそれでは不十分です。より詳細な調査をしてもらい、見つかった不具合は大きなものでも小さなものでも報告してもらうべきです。
買主は、自分たちのために実施してアドバイスしてもらえるホームインスペクション(住宅診断)業者を探して依頼すべきです。
4.旧耐震基準より新耐震基準の住宅を優先
中古住宅を購入するときに築年数に関して考えるならば、古すぎる建物の耐震性については注意すべきです。
建物を建てるときには、建築基準法に則って建築確認申請をしてから建築しなければなりませんが、その建築基準法は改正を重ねており、新しいものほど建物の基準が厳しくなっています。
最も参考にしたいのは、1981年(昭和56年)6月から施行された改正です。これ以前の建物と以後のものとでは耐震性に対する考え方が変わったため、1つの重要な判断材料とすべきです。
ただし、改正された建築基準法の施行が上の年月ということであって、建物の完成時期はこれとは少しずれてきます。1981年5月に(古い基準で)建築確認申請した住宅が6月以降に完成している物件がいくらでもあるからです。
一戸建て住宅の建築には、規模等によりますが3~8か月程度かけることが多かったことを考慮しなければなりません。また、住宅によっては1年ほどかけて建築していたこともあるくらいです。
建築確認申請書が残っているならば、それを見て1981年(昭和56年)6月以降に申請されたものであることを確認すればよいですが、残っていなければ1982年以降に完成したもの、それも同年6月以降に完成したものであれば、新しい基準で建てている可能性が高いといえるでしょう。
1981年(昭和56年)6月以降に建築確認申請している住宅を新耐震基準の住宅と呼んでおり、これに対してそれ以前の住宅を旧耐震基準の住宅と呼ぶこともあります。
築年数だけで中古住宅を選ぶと失敗する恐れがありますが、それでもこの年代は1つの重要な参考とするとよいでしょう。