都会の狭小地、例えば面積が20坪(66平米)程度の土地に3階建て住宅を建築するとき、室内への採光について悩む人は多いです。都会では隣家との距離も近いことが多いため、1階や2階はどうしても暗くなりがちです。
家づくり(住まいの新築)をするときに、狭小地の3階建て(もしくは2階建て)であっても上手に採光をとり、明るい住宅にするための方法を紹介します。上手な明かりの採り方を建物外部から内部への明かりの採り込み方の工夫と建物内部に採りこんだ光の上手な利用方法にわけてご紹介します。
1.建物外部からの上手な採光
最初に住宅建物そのものが、自然光をどのように上手く外部から内部へと採りこむかを考えます。もちろん、各窓から内部へ採光がありますが、工夫次第で採光を増やせるはずです。
1-1.窓を大きくする、増やす
窓が大きく、そして数が多いほど採光が増えるのは当然ですね。できる限り窓の大きさと数で採光を増やしたいものです。
しかし、建物の構造上の都合によって、そう簡単に大きくしたり増やしたりできるわけではありません。また、都会の狭小地特有の理由ですが、隣家の外壁が目の前にあるところで窓を増やしてもそれほど効果的でないことも多いです。
よって、以降の対策こそが重要になってきます。
1-2.明るくしたい部屋を3階や道路側にもってくる
部屋によっては、明るさを優先したいものと優先度が低いものとがあるのではないでしょうか。例えば、リビングは明るい方がよいが、寝室では自然光を重視しないといった具合です。
明るさを優先したいスペースを建物の最上階に配置することで、目的を達成しやすくなります。3階建て住宅ならば3階ということです。しかし、リビングを明るくしたいものの、3階にリビングは嫌だということも少なくないでしょう。
道路側のスペースは隣の建物と近くないために採光がよいでしょう。道路側にリビングなど明るさを優先したい部屋を持ってくることも考えましょう。
1-3.トップライト(天窓)を設置する
効果的な採光としては、トップライト(天窓)の設置が挙げられます。トップライトとは、天井部分に設置する窓ですが、外壁面の窓が横方向(斜め上からも)からの採光であるのに対して、真上方向から採光があるために非常に効果的です。
上の写真は大きなトップライトですね。下は小さなものです。
3階建て住宅であれば、3階の天井にトップライト(天窓)を設けることで3階の採光を増やすことができます。
しかし、3階建ての2階部分や1階部分では上階があるためにトップライトを配置することができないケースが多いです。ただ、それでも建物の形状次第では下階にもトップライトを設置することは可能ですから形状を決めるときから採光のことも考えるべきです。
上の図は3階建て住宅を水平方向から見たものです(形状はかなり単純化しています)。3階部分の面積が小さくて凹んだ形状になっているため、2階の天井が外部に接するプランになっています。その天井にトップライトを設けることができ、採光がよくなります。もちろん、2階建て住宅でも同じようにすれば1階天井から明かりを採ることができます。
1-4.中庭(光庭)を設ける
都会の狭小地と言えば、下の図のような奥に向かって長細い土地と建物をイメージしませんか?東京でも大阪でもこういった住宅は非常に多いです。建物の中心付近ではあまり採光を望めず、どうしても暗いスペースができてしまいます。
しかし、建物の中心付近に中庭(光庭)を設けることで採光を増やすことができます。以下の図を見てください。
中庭周りの壁に窓を設けて、建物内部の3方向へ自然光を採りこむことが可能になります。中庭の部分が凹んでいることで、隣の建物との距離が出来て、光が入りやすいですね。薄暗い部屋が明るくなり、効果的な手法だと言えます。
2.建物内部に入った光の上手な利用方法
次に建物内部へ採りこんだ光を上手に各スペースへ流す工夫について解説します。ここで挙げる点を実行するだけでも随分と変わることがあります。
2-1.吹抜けのある家にする
建物内部に吹抜けを設けることで内部へ入った光を効率よく利用できるようになります。例えば、3階建て住宅の2階リビングが3階から吹抜けになっていれば、3階の窓から入った光がリビングを明るくします。2階リビングの窓のすぐ前に隣の建物があったとしても3階からの採光でリビングが明るくなるのです。
上の写真では吹抜けの天井部分にもトップライトがあり明るいですね。
2-2.階段にトップライト(天窓)を設けて階段の隣室へ光を
階段は下階と上階の間に床がありませんね。つまり、吹抜けと同じ状況です。その階段の天井部分にトップライト(天窓)を設けて階段スペースに十分な自然光を採りこみます。さらに、その階段スペースとその隣接するスペース(居室など)との間仕切壁に窓を設けることで、階段と隣接する居室などへ明るさをもたらすことができます。
上の写真は階段の天井ではなく壁面からの採光ですが、これが天井のトップライトでも効果的でしょう。階段もただの移動スペースと決めつけずに上手く活用するわけです。
2-3.間仕切壁の工夫で明るくする
外部から内部へ入った光の障害となるのは間仕切り壁です。その間仕切り壁を工夫することで、本来なら自然光が届かないスペースまで光をもっていくことができます。
まず、単純に間仕切壁をできるだけ少なくすることです。家族構成や使い方を考えて、最小限の間仕切り壁としたり、光の通り道をよく考えて途中にある間仕切壁に窓を設けたりする工夫は有効です。
マンションのリノベーションを見ていると、間仕切り壁の上部を窓にしているケースは増えています。両隣に住戸がある中住戸であれば、バルコニーからのみ採光があることも多いですね。その光を奥の部屋で通すために間仕切壁に窓を設けるのです。
これはもちろん、一戸建てでもできることです。無暗に間仕切壁に窓を設けるのではなく、どこから入った光がどこを通るのか考えて設置しましょう。開閉できる窓ではなく、ガラス入り欄間にするのも有効ですね。
もう1つ間仕切壁で工夫できることとしては、間仕切り壁そのものについて光を通す材料にする方法です。ガラスやプラスチック製にすることで、これを実現できます。透けて室内が見えやすくなりますから、そのスペースの利用方法と合わせて考えるとよいでしょう。
2-4.ドアを開けたままに
建物内部に入った光を遮るのは間仕切り壁だけではありません。出入りに使う扉もそうですね。その扉を開けたままにしておくことで光を奥まで通すことができます。開けたままにできるように、引き戸にしたり、ドアストッパーを設けたりすることを考えましょう。
これにより、階段の吹抜け部分などから各室に採光が確保できるようになります。
2-5.ガラスの活用
ガラスを上手く利用することでも採光を増やすことができます。例えば、玄関ドアの横の壁面にガラスの固定窓(FIX窓)を設けることで暗くなりがちな玄関に明かりを採りこむことができます。
実はこのFIX窓は室内でも有効な場合があります。室内ドアの横にも同じように設けることで室内へ光を通すことができます。間仕切壁をガラスやプラスチック製にするのと同様のアイデアですね。ちなみに、ドア自体をガラス入り框戸にすることも有効です。
2-6.床も工夫する
最上階の採光はよいものの下階の採光が悪いということが悩みの種になることが多いですが、解決策の1つとして床の一部をガラスにするといった工夫も面白いでしょう。下階へ光を通すことができ、建物内の天窓のような役割を果たしてくれます。
床をガラス以外にも、グレーチング(格子状のもの)にする方法もあります。
ここまで見てきてわかる通り、建物外部からどのようにして内部へ光を採りこむかという点と、採りこんだ光をどれだけ上手く内部で利用するかという両方の視点が必要だということです。なかには奇抜だと感じるアイデアもあるかもしれませんが、使い方、考え方によっては有効なものとなるでしょう。
明るい住まい造りに活かしてください。