中古住宅を購入し、買主の好きなようにリノベーションしてから居住するという選択肢も定着しつつありますが、このようにリノベーションを前提とした中古住宅購入の進め方、取引の流れについて把握しておかないと物件見学の過程で不動産業者などの都合に流されて契約してしまうことがあります。
中古住宅の購入とリノベーションの両方を成功させるため、まずはリノベーションを前提とした中古住宅購入の流れを正しく理解しておきましょう。
ここで取り上げるのは、小規模なリフォームではなく間取り変更や設備交換等を伴うリノベーションです。建物の一部または全部を解体してスケルトンにするような工事ですね。
1.いつリノベーション業者選びをするか
中古住宅を購入してからリノベーションすることを前提としている場合、リノベーション業者との接触・打合せなどはどの時点から行うべきものでしょうか。購入する物件を決めてからでは、時期的に遅いとか購入した物件がリノベーションに適していないといった問題に遭遇することもありますから、この点をよく考えておく必要があるのです。
1-1.中古住宅の見学前がオススメ
リノベーション業者との最初の接触は、中古住宅を見学する前の段階をオススメします。その理由はいくつかありますので、以下にあげておきます。
良いリノベーション業者であれば、物件見学から購入、工事に至るまでの流れや見学時にチェックすべきポイントなどについてアドバイスをもらえることがある。
購入希望の物件に同行してもらってアドバイスを得ることができることがある。
購入希望の物件が希望するリノベーションを実施できるかどうかアドバイスを得ることができる。
こういったアドバイスを得られることは、買主にとって大きなメリットとなりますから、物件見学の前に話しておくとよいでしょう。購入する物件を決めてからでは、初めての打合せからリノベーション業者に現地同行してもらいアドバイスを得るまでに、その物件が売れてしまうリスクが高くなります。
中古住宅の購入は、スピード感も必要であるため、事前に出来ることはやっておいた方がよいという面があるのです。
1-2.リノベーション業者の都合に流されないように注意
中古住宅の見学前にリノベーション業者に問合せをするときに注意しておくべきことがいくつかありますので、それをここで紹介します。
複数のリノベーション業者に問い合わせる
リノベーション業者もいろいろな会社がありますから、あなたの条件と合致する業者を1社との接触のみで決めてしまわずに、いくつもの会社と会って絞り込んでいくべきです。また、具体的な物件が決まる前から、絞り込みすぎる必要もありません。
物件見学後の業者変更も選択肢に
複数のリノベーション業者の話を聞いた後、その段階で特定の1社に絞ってしまうことはオススメできません。物件見学をした後でも、いや売買契約をした後でも業者変更をする可能性があることを考えておくべきです。
早い段階で1社に絞ってしまうと、具体的な工事見積りを提示してもらう段階で割高なものを提示されてしまう可能性が高くなります。また、他の業者ならば、その物件に合ったよりよいプランの提案があるかもしれません。
3社程度は候補を残しておくことをお奨め致します。そして、具体的なプランの提案を詳細見積りの提示を受けてから業者を絞り込んでいく流れとすることが中古住宅購入とリノベーションを成功させるために大事です。
2.リノベーションを前提とした中古住宅購入の流れ
次に、リノベーションすることを前提として中古住宅を見学したり購入したりするときの流れを見ていきましょう。以下がその流れです。
- 中古住宅を見学
- 実施するリノベーションの概要を検討
- 住宅診断(ホームインスペクション)で建物状況を把握
- リノベーションにかかる概算費用を把握
- 購入申し込みと価格交渉
- 売買契約の締結
- リノベーションの詳細を検討
- 売買代金の決済と引渡し
- リノベーション工事に着手
複数のリノベーション業者と事前に会って話しておくタイミングは、上の流れのなかで「1.中古住宅を見学」の前か「6.売買契約の締結」の前後くらいということになりますが、「1-1.中古住宅の見学前がオススメ」で書いているように見学前、すなわち「1.中古住宅を見学」の前をオススメします。
以下では、上の1~9についてもう少し詳しく解説します。
2-1.中古住宅を見学
不動産物件の広告などを見てから不動産業者に問い合わせて物件を案内してもらったり、オープンハウスへ行ったりすることです。リノベーションするわけですから、新しくする内装(壁クロスや床フローリング等)や設備(トイレ・キッチンなど)の状態を細かく見ても意味はありません。
大きさ、立地、建物の主要構造部の劣化状態などを確認することを中心として見学するとよいでしょう。ただ、主要構造部の劣化状態を買主が自分で理解するのは難しいですから、後述する「2-3.住宅診断(ホームインスペクション)で建物状況を把握」を参考にしてください。
2-2.実施するリノベーションの概要を検討
購入希望の物件が見つかれば、その時点で実施したいリノベーションの内容を検討します。検討するといっても詳細な仕様まで決める時間はとれない(売主や不動産業者が待ってくれない)ため、概要を考えるまでとなります。
変更後の間取り、キッチン・トイレ・バスを含めた各スペースの大よその広さ、外壁・屋根などの変更・補修の必要性(一戸建ての場合)などを検討していくことです。
2-3.住宅診断(ホームインスペクション)で建物状況を把握
ここで大事なプロセスとなるのが住宅診断(ホームインスペクション)です。リノベーションをする際に、一緒に補修すべき項目がないか、そもそも購入しても大丈夫な物件であるのかといった点を第三者の専門家に診てもらうのです。
また、リノベーション業者をどこにするか概ね決めている場合には、その業者に希望するリノベーション工事が実施できそうな物件かどうかもアドバイスしてもらうようにしましょう。住宅診断(ホームインスペクション)を依頼した会社からアドバイスをもらう方法もありますから、その対応が可能かどうかも依頼する前に確認しておきましょう。
2-4.リノベーションにかかる概算費用を把握
リノベーションを依頼予定の業者に、どれくらいの工事費用がかかるものか大よその概算金額を出してもらいましょう。この時点では、詳細な仕様・プランが未定ですから、後から金額が変更になる前提ですが、ここで概算金額を聞いておかないと購入及びリノベーションの資金計画を立てようがありませんね。
ちなみに、はじめからリノベーションの予算上限を決めている場合は、その金額に収まるかどうか確認してください。こういったことをできるだけ早くするためにも、物件見学前にリノベーション業者と打合せておくことは有効です。
2-5.購入申し込みと価格交渉
予算にゆとりがある等の理由で、リノベーションの概算費用にかかわらず購入するという人ならば、リノベーション業者との話と同時並行で購入申し込みをして、売主との価格交渉まで進んでもよいでしょう。予算がぎりぎりならば無理をせず、リノベーション費用を確認してから進めてください。
中古住宅の購入申し込みは、不動産購入申込書に署名・押印して買主へ提出することで行うのですが、その申込書に記載する購入希望金額から価格交渉することになりますから、注意してください。
2-6.売買契約の締結
売買価格などの条件がまとまれば、次に売買契約の締結です。売買契約は必ず書面で実施するものです。契約の前日までに契約書を受け取って、その内容を確認しておくことを忘れないでください。
2-7.リノベーションの詳細を検討
売買契約が済めば、リノベーション工事の内容を検討し、何度もリノベーション業者と打合せを重ねてプランを決めていきます。プランの検討は、購入した住宅の引渡しの前でも後でも構いませんが、希望する入居日から逆算して全体のスケジュールが間に合うようにしましょう。
2-8.売買代金の決済と引渡し
購入した中古住宅の代金全額を支払い、そのときに売主から買主へ引渡しを行います。
この引渡しの前に、リノベーション検討のために現地見学したいということもよくあることですが、所有権が移る前ですから売主の許可が必要となります。その可能性があるならば、売買契約の際に売主へお願いしておくとよいでしょう。
但し、売主が居住中である場合は、何度も何度もお願いするわけにもいきませんから、1度で効率的に確認できるようリノベーション業者と事前にしっかり打合せしておくことです。
2-9.リノベーション工事に着手
リノベーションの内容が決まればその業者と建設工事請負契約を締結し、工事に着手することになります。
工事期間や金銭の支払い時期と金額などを契約前によく確認しておきましょう。また、見積りに関するトラブルは多いですから、本サイト(住むプロ)の見積りのチェックポイントに関する記事も参考にしてください。