新しい新築に比べ、劣化が気になる中古住宅は購入に不安が残ります。
だからこそ、安心して住むためにも、契約前の十分なチェックが大切です。
契約前のチェックは物件だけでなく、契約・法関係からのアプローチも忘れてはいけません。
とくに注意したい視点は次の3つ。
- 安全な家であるか
- 契約関係でトラブルにならないか
- 将来の増改築時に問題がないか
中古住宅購入において、チェックすべき法令・耐震基準について、解説していきます。
ハザードマップを確認する
ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、地図化したものです。
災害リスクのある土地を調べられます。
- 地震による強い揺れ
- 津波
- 液状化現象
- 洪水
- 土砂災害
- 火山被害
住宅を購入しようとしている場所のハザードマップは必須です。
ハザードマップは、地方自治体で公開されています。
用途地域を確認する
用途地域とは、「その土地をどのように使っていいか?」、を定めたもの。
土地は自由に建物を建てられる訳でなく、用途地域によって建築できる建物が決められています。
そのため、仮に今、周辺が閑静な住宅街であったとしても、将来ずっと同じとは限りません。
もしその土地の用途が、「中高層住居専用地域」であれば、
・高層マンション
・大型商業施設
が建つ可能性があります。
将来の周辺環境を予測するためにも、用途地域を確認は必須です。
住環境を優先したいなら、「低層住居専用地域」の物件購入がおすすめです。
新耐震基準をクリアしているか?
中古住宅の中には、耐震性が劣る物件もあります。
耐震性の低い物件は大きな地震で倒壊する恐れがあり、大変危険です。
そのため購入する物件は、「新耐震基準」をクリアしている物件がおすすめです。
新耐震基準を満たした物件であれば、震度6強~7の地震でも倒壊しないとされています(但し、物件によります)。
中古住宅の場合、1981年6月1日以降に建築確認済証が交付された物件が目安です。
ただし、旧耐震基準の建物でも、
- 耐震性に問題がないか?
- 耐震補強工事を行っているか?
を確認し、必要があれば入居までに耐震リフォームを実施すれば安心です。
欠陥住宅ではないか?
住宅購入でもっとも深刻に後悔するのが、「欠陥住宅」です。
欠陥住宅とは、
- 法令等を満たしていない
- 設計図どおりに施工されていない
- 安全性・使用性が損なわれている
という物件をいいます。
家が傾いている、雨漏りするなど、重大な問題(欠陥)がある場合は、迷うことなく「欠陥住宅」。
欠陥が見つかった場合、瑕疵担保責任の期間内であれば補修等を請求できます(契約条件によります)。
もしくは既存住宅売買瑕疵保険に加入していれば、保険で修繕費用も賄えます。
「欠陥住宅は、保険で対応できるから安心」
ということはなく、欠陥住宅に住むこと自体、大きなストレスです。
また修繕工事では生活に支障が出ます。
不動産会社や売主との交渉も、非常にストレスです。
住宅に欠陥がないか、契約前にしっかりと確認しましょう。
ただし、不具合のすべてが欠陥住宅に認定されません。
簡単に修繕できるものは、欠陥とはちがいます。
- 基礎の軽微なひび割れ
- 壁紙のはがれ
- 乾燥によるドアの建付け不良
とくに中古住宅では、軽微な不具合はつきもの。多少目をつむることも必要です。
建築基準法に適合しているか?
築年数が古い物件の場合、法令(建築基準法など)に適合しているかのチェックをお忘れなく。
物件価格が相場より割安であれば、何らかの不適合があるかもしれません。
ありがちなケースとして、次のようなものがあります。
既存不適格建築物
「既存不適格建築物」とは、新築時は問題なかったのに、法律の改正により不適格な建築物になってしまった住宅のこと。
これは違法ではないので、建物がそのままの状態であれば、罰則や改修工事の必要はありません。
しかし既存不適格建築物は、増改築の際に現在の建築基準法に適合させる必要があります。
建ぺい率や容積率オーバーであれば、増改築時に今より小さくなることも。
(ただし緩和措置のケースもあるので、自治体や専門家への確認が必要です。)
違法建築物
違法建築物とは、
- 新築時から違法だった建物
- 新築時は合法でも、その後建築確認申請をせずに増改築し、違法となった建物
法律改正により適合しなくなった、「既存不適格建築物」とはちがいます。
既存不適格は、増改築の制限が緩和されるケースもありますが、違法建築物に緩和措置はありません。
違法建築物には多くのデメリットがあり、購入は避けた方が賢明です。
- 融資が受けられず現金一括購入になることもある
- 是正命令がおりた場合、法律に適合するよう工事を行わなければならない
- 取り壊しや使用禁止が命ぜられることもある
再建築不可
中古住宅の中には、「再建築不可」、つまり「建て替えできない建物」があります。
再建築不可物件は、
- 敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していない
- 接している道路が建築基準法で認められた道路でない
面している道路の要件を満たしていない物件です。
道路が狭く、消防車が入ってこられないなど、安全性にも問題があります。
それだけでなく、
- 担保価値が低いので、融資が受けられないか、金額が安くなる可能性がある
- 地震や火事で全壊・全焼しても建替えできない
- 避難しにくい
長期的に考えると、慎重な判断が必要なデメリットが多いです。
一方で、メリットもあります。
- 安く購入できる
- 固定資産税が安い
- 一定の条件を満たすことで再建築できる場合もある
デメリットを理解した上で、あえて再建築不可物件を購入する選択肢もアリです。
要セットバック
要セットバック物件とは、建替え時に敷地のセットバック(後退)が必要な物件のこと。
狭い道路(4m未満)に面した物件では、自分の敷地の一部を道路として提供し、面した道路を4mとみなす、という制度があります。
4m未満では再建築できませんが、セットバックにより再建築できる物件となります。
セットバック制約があるため相場より安く購入できます。
しかしデメリットもあるので注意が必要です。
- 建替え時に有効な敷地が狭くなる
- 建ぺい率や容積率はセットバック後の面積で計算されるため、希望の広さの家が建てられない可能性がある
- セットバックした部分を道路にするための舗装費用がかかる(自治体によっては補助金あり)
権利関係にトラブルがないか?
中古住宅の購入時のチェックとして、不動産登記簿の確認があります。
通常、契約直前の重要事項説明時に登記簿の写しが渡されます。
登記簿の不一致は金銭トラブルになりやすいため、事前に法務局で確認しておくと安心です。
不動産登記簿は「土地登記簿」と「建物登記簿」の2つからなっており、
- 表題部
- 甲区
- 乙区
の3部構成となっています。
表題部のチェック
物件探しの参考にした広告、重要事項説明書の記載内容と違いがないか、確認しましょう。
また土地の面積は、
- 公簿面積…登記簿上の面積
- 実測面積…測量を行って算出された実際の面積
の2種類があります。
公簿面積による「公簿売買」を行った場合、後日測量してみると登記簿に記載されていた面積より小さいケースも。
支払った土地の代金に不満が残ったり、希望していた広さの建物が建てられないなどのトラブルもあります。
契約書上で、公簿売買か実測売買か、確認しておきましょう。
甲区のチェック
甲区では、「物件の所有者が本当に売主であるか?」、確認しましょう。
売主と所有者が異なる場合、売主が勝手に物件を売ろうとしている可能性もあります。
後々のトラブルを避けるためにも、売主と所有者が異なる場合は慎重に進めてください。
乙区のチェック
乙区では抵当権が抹消されているか、確認しましょう。
もし抵当権が残っていると、最悪、借金を負わされる可能性もあります。
ただし、「抵当権が残ったまま=住宅ローンの残債が残ったまま」、売主が売却するケースは非常に多いです。
この場合は、契約書に次の記載を確認してください。
- 物件の引渡し時までに抵当権が抹消される
- もし抹消されなければ契約解除できる
住宅ローン控除が受けられるか?
住宅ローン控除は、住宅ローン残高の1%が控除される制度。
マイホーム購入における、大きな優遇支援の1つです。
しかし中古住宅は、住宅ローン減税を受けられない場合もあります。
- 木造住宅…築20年以上
- RC造マンション等の耐火建築物…築25年以上
希望している中古住宅が、住宅ローン控除を受けられるか、しっかり確認しておきましょう。
ちなみに上記に当てはまる場合でも、新耐震基準に適合する証明書があるなどの条件を満たせば減税を受けられます。
- 購入する物件が住宅ローン控除を受けられるか?
- そのための工事が必要かどうか?
契約前にホームインスペクションを実施して、専門家に相談しておくと安心です。
まとめ:法令関係からも厳しくチェック!
中古住宅の購入は、どうしても物件のチェックに目がいきがちです。
もちろん物件のチェックも大切。しかしそれだけでなく、法令関係もしっかり確認しておきたいところです。
- 契約上、問題のない物件か?
- 将来的に問題は発生しないか?(増改築など)
中古住宅ならではの確認を忘れずに行い、後悔のないマイホームを手に入れてください。