新築の建売住宅を買うときや注文建築で家を建てるときに注意しておきたい点の1つに点検口があります。点検口は、住宅を永く良い状態で使い続けるために大事な役割を果たすものですから、新築住宅を買ったり建てたりするときには、このコラムで学んだことを実践してください。
1.住宅の点検口とは
知っているようで知らない点検口の基礎知識から確認しておきましょう。まずは、点検口とはどういうものであるか知るところから始めるべきですね。
1-1.点検口は文字通り点検のために
点検口の役割は、壁や天井、床材などで隠れて見られない箇所の点検をするための開口部となることです。
住宅は完成してしまうと、床下や天井裏、さらには壁の中を見ることができなくなりますね。そういった箇所で何か異常がないか確認しようと思うと、いちいち天井や床などを部分的に壊さなくてはなりません。点検口があれば、見たいときに簡単に普段は見られない箇所を点検できてとても便利です。
つまり、建物を点検するために欠かせないものが点検口なのです。
1-2.点検口の設置箇所
隠れて見えない箇所は、床下・天井裏(屋根裏)・壁の中ですが、点検口はこれらを見るためにはいくつも必要になります。
床下の点検口
床下を見るためには1階の床面に点検口を設けることが一般的ですが、住宅によっては建物外部から床下を点検できるようにしていることがあります。特に傾斜地に建つ住宅では、外部から床下に入る点検口を設けやすいという事情もあります。
ただ、そのようなことができるのは傾斜地くらいです。多くの住宅では、外部ではなく1階の床面に点検口を設けています。
また、床下点検口は床下収納庫が兼ねていることが非常に多いです(上の写真は床下収納庫を開けたところ)。床下のスペースを有効活用できる床下収納庫ですが、収納の蓋を開けて中のボックスを取り出せば、点検口になるのです。これは今では当たり前のように採用されています。
天井裏(屋根裏)の点検口
最上階(2階建てなら2階、3階建てなら3階)の天井には、屋根裏を点検するための点検口を設けるものです。室内の天井に設置することもあれば、収納内の天井に設置していることもあります。古い住宅では点検口のような四角形の蓋を見つけることができなくても、押し入れの天井板を簡単にずらして屋根裏を点検できることも少なくありません。
床下の点検口と違って屋根裏点検口の方が住んでいる人でも気づいていないことがあり、住宅診断(ホームインスペクション)で住宅に伺った際に、無いと聞いていた点検口が見つかることもあります。
下屋にも点検口があることもあります。下屋とは、2階建てで言えば1階の屋根の内側です。1階と2階が全く同じ計上であれば下屋がないですが、1階と2階の形状が違えば下屋のある家になりえます。たとえば、1階リビングの上には2階の部屋などがなく外部ということであれば、そこには1階の屋根があるでしょう。
この下屋にも点検口があれば、普段は見られない箇所を見ることができるのでメリットになります。但し、下屋に点検口を設置していない住宅は多く、点検できないケースは非常に多いです。
また、下階の天井裏(2階建ての1階の天井裏)で下屋ではない部分については、点検口が無いことが多いです。仮に点検口があったとしても、1階天井と2階床の間の空間は狭くて確認できる範囲は限定的です。ちなみに、1階にユニットバスがあれば、そこには天井点検口がついていることが多いので、そこから天井裏を確認できますが、確認できる範囲は限定的です。
屋根裏がロフト(屋根裏収納など)になっている住宅では、そのロフトには昇降式の梯子で上がれることが多いです(以下の写真は昇降式の梯子)。
このロフトのなかに、屋根裏を確認できるように点検口を設置していることがあり、その場合はロフトの壁面にあることが多いです。以下の写真は壁面にある点検口です。但し、壁面の点検口はサイズが小さくて体が入らず、頭を入れて覗くくらいしかできないことも多いです。
壁の点検口
床下や天井裏(屋根裏)と違って壁には点検口が設けられていることは少ないです。ほとんどの住宅で壁の点検口はありません(前述したロフトは除く)。マンションの場合は、パイプシャフト(PS)のところに点検口が設けられていることがありますが、ここでチェックできることはあまりに限定的です。
大手ハウスメーカーでは一戸建て住宅でも壁に点検口を設けているケースがありますが、外壁に面する壁に点検口を設けて断熱材や間柱などによって点検できる範囲があまりにも狭いものになってしまっています。点検という本来の役割に向かないだけに壁には点検口を設けないのが一般的になっていると言えます。
1-3.点検口のサイズ
点検口のサイズにはメーカーの規格があり、30cm・45cm・60cmのいずれかであることが多く、このなかでも45cm角のものが採用されていることが非常に多いです。このサイズであれば、人が頭を入れて覗くのはもちろん、点検口から床下や屋根裏へ入ることもできます(但し、点検口周囲の状況にとっては入られないこともあります)。
マンションのキッチンや洗面室の床には、15cmや20cm角の小さな点検口が採用されていることもありますが、これは頭を入れて覗くこともできず、確認するならばデジタルカメラなどを挿入して撮影してから確認するくらいしかできません。
1-4.点検口の無い家もある
そもそも点検口を住宅に設置する義務があるわけではないため、点検口の無い住宅もあります。古い住宅では、点検口がなくても和室の畳下地を開口したり、押し入れの天井材をどけたりして点検口できることもありますが、基本的には点検口の無い住宅は、点検やメンテナンスをしづらい家だと考えた方がよいです。
住宅を購入するときには、点検口があるかどうかは基礎的なチェックポイントだと考えてください。建売住宅や中古住宅を購入するなら、必ず最初の見学時に注意して点検口の有無を見ておくべきです。
参考として、フラット35の基準でも点検口の無い家は不適合と判定されます。
2.建売住宅を買うときの点検口の注意点
点検口が新築か中古かに関係なく大事なものであることは理解できたことでしょう。今回のコラムは新築住宅における点検口がテーマになっているので、ここからは建売住宅と注文建築にわけて点検口に関する注意点のお話です。
2-1.点検口の有無は必ず現地で目視確認
点検口の有無を購入前に確認すべきことはわかりますね。買った後に大事な箇所を点検できないのは問題ですし、購入前の住宅診断(ホームインスペクション)でも点検口がなければ、大事な箇所の診断ができないわけです。
始めて見学に行ったときには、必ず点検口がどこにあるのかチェックしておきましょう。間取図には点検口の位置が掲載されていないことが多く、現地で目視確認しないことにはわかりません。
2-2.建築前の建売住宅なら図面と口頭で確認
建売住宅でも完成する前に売買することも多いですが、まだ着工もしていない住宅ならば、現地で点検口の有無を確認することができません。この場合は、設計図で点検口があることを確認してください。簡易な間取図には記載されていなくても設計図なら記載されているはずです。
図面を見てもわからなければ、営業担当者に聞いて教えてもらってください。そのとき、口頭だけではなくあ、図面のどこの点検口が記載されているのか、指し示してもらうようにしてください。営業マンの誤解ということも少なくはないからです。
2-3.実際に点検できるか要チェック
点検口があることだけで満足してはいけません。見つけたら次は以下の点を確認しましょう。
覗いてもほとんど見えないことがある
点検口があれば、必ず開口して中を覗いてみてください。点検口のすぐ周りが基礎や板材などで隠れていてほとんど点検口の役割を果たせていないこともあるので注意が必要です。また、ビス止めして固定してしまい、そもそもなかなか開口できないということもあります。簡単に確認できない点検口では、本来の役割を果たすうえでは障壁が高いですね。
上の写真は床下の状況です。基礎コンクリートや配管、鋼製束、大引きなどの様子が見えています。
覗きづらくて使えないことがある
点検口を開けてみたところ、中が狭すぎてほとんど中を見られないこともあります。たとえば、屋根裏点検口の設置位置が悪く、点検口のすぐ上に梁などがあってちょっと覗くくらいしかできないということもありました。また、点検口のすぐ近くに体重をかけられる材料がなく、屋根裏内部へ進入することが困難なケースもありました。
これから暮らしていく人や点検する人のことを少しでも考えてもらえれば、点検口の位置を数十cmずらしておけばよいと気づいたのではないだろうかということもあります。
3.注文住宅を建てるときの点検口の注意点
これから注文建築で家を建てる人が点検口について注意したいことも書いておきます。
3-1.設計段階で点検口を要望しておく
このコラムのここまでに述べてきたことを理解して、設計者に点検口を設置すること、そして点検するときのことに配慮した位置に設置することを要望してください。ほとんどの設計者は、そのような要望を施主から出さなくても考えているはずなのですが、一部には何も考えてくれていないことがありますから注意はしていた方がよいです。
打合せの際に、「点検口はどこに付くのですか?」「その位置から床下や屋根裏へ入って点検できるのですね」などと言っておくだけでもよい確認になるでしょう。
3-2.できれば目立たない場所に
建売住宅では点検口の位置は売主側で決めているものです(交渉によって変更できることはありますが)。注文住宅では施主からも要望できるものですから、少し考えてから設置位置を決めましょう。
建売では、廊下や居室の天井に設置していることもありますが、こういったところ点検口があると目立ってしまいます。気にしないという人も多いかもしれませんが、一般的な考え方としてはあまり目立たない箇所に設置するものです。
点検という本来の機能に問題ない範囲で、収納のなかなど目立たない箇所に設置するよう考えるとよいでしょう。
4.点検口から確認できること
点検口の必要性や位置などについて述べてきましたが、そもそも点検口からはいったい何を確認することができるのでしょうか?これを理解しておかないと適切に住宅の状態を把握して適切な修繕・メンテナンスや購入判断に活用することができません。
4-1.床下点検口から確認できること
床下ということは建物の大事なことを数多くチェックできるスペースです。住宅診断(ホームインスペクション)をするときには、できれば調査対象としておきたいところです。
確認できる項目は、基礎コンクリート、床組み(土台・大引きなどの構造材と構造金物)、束、配管、断熱材といったものです。見つかる症状は、基礎や構造材のひび割れや欠損、金物の緩み、断熱材の有無や劣化、配管からの漏水、シロアリなど様々な重要なものがあります。
上の写真は床下にある蟻道で、シロアリがいる(またはシロアリがいた)ことを確認できます。
4-2.屋根裏点検口から確認できること
屋根裏もまた建物の大事なことをチェックできるスペースです。ここもできれば調査対象としたいところです。
確認できる項目は、小屋組み(梁や柱などの構造愛と構造金物)、野地板(屋根材の裏側)、断熱材といったものです。屋根裏で見つかる症状には、構造材などのひび割れや金物の緩み、断熱材の有無や劣化、雨漏り、結露など様々なものがあります。
床下も屋根裏も大事なところだということがわかるのではないでしょうか。新築建売住宅を買うときや注文住宅を建てるときは、必ず点検口のことを考えてください。