注文住宅の建築やリノベーションをするためにハウスメーカーや工務店と商談をはじめた初期段階に、ハウスメーカーなどから見積書が提示されます。その見積り書は工事の詳細を取り決めていない段階で出てくるものですから、概算見積書です。
概算見積り書は1つの参考にはなるものの、これだけでハウスメーカーや工務店と請負契約を結んでしまってはトラブルになることや後悔することが多いですから注意しなければなりません。
1.概算見積書とは
概算見積書とは、その名の通り建築工事費の概算金額を示すものです。この見積り書には大事なメリットもありますし、これが提出されないと話を進めることもままならないですから、必要なものではあります。
1-1.概算見積書といってもハウスメーカー(工務店)によって異なる
概算見積書は、これを作成・提出する会社によって書式や内容に差異があります。大手ハウスメーカーでも街の小規模な工務店でも概算見積りを提示するはずですが、各社で内容に相違があることから単純に比較しづらいのが難点です。
工事項目があまり細かく分類されず、大きな分類でのみ金額を提示することもあれば、細かく分類して本見積りと変わらない提示をする会社もあります。これは見てみるまでわかりません。
1-2.最初に予算感を把握できる
概算見積り書のメリットは、早い段階で予算感を把握しやすいということです。希望する建物の規模・工法・デザイン・間取り・仕様レベルで、だいたいどれくらいの建築費になりそうなのか確認することができ、資金計画や初期段階のハウスメーカー・工務店選びに役立ちます。
それまで希望していた内容が、考えていた予算では厳しいものなのか、ゆとりあるものなのか、1つの判断基準になることでしょう。
1-3.各ハウスメーカー(工務店)の大よその価格帯がわかる
概算見積り書の他のメリットとしては、発注先の候補として検討しているハウスメーカーや工務店が、どれくらいの建築費となるのか、把握することができることがあります。
実際には、予算や自己資金、所得などの条件から、自社で建築するのは無理だろうと勝手に判断されて、概算見積りの相手にされないという事例もありますが、基本的には概算見積りを見てからその後の検討対象とすべき会社かどうか施主が判断します。
1-4.相見積もりで比較検討できる
概算見積りは複数社に依頼するものです。まだ、候補とする会社をそれほど絞っていない段階では、いくつかの会社の概算見積書を並べて比較検討するとよいでしょう。それも2~3社というものではなく、5社程度で比較しても構いません。
多いほど参考にはなりますが、それだけの回数の打合せをこなすのも大変ですから、無暗に見積り依頼するものでもないですね。
2.概算見積書だけで契約してはいけない
概算見積り書は確定した金額ではないですから、これだけを見て工事請負契約を交わすべきではありません。これによるトラブルはあまりにも多いです。
2-1.概算見積書は仕様詳細が不明
概算というだけあって、細かな仕様まで明確ではなく、概算見積り書の提示後に決めていく内容次第では大きく金額が変わることも少なくありません。百万円単位で金額が変わることは割と普通にあることです。
仕様詳細が不明なわけですから、不安定な金額とも言えますから注意してください。
2-2.プランを決めずに契約するのと同じ
概算見積書だけを見て契約することは、建物プランを決めずに契約してしまうことと同じです。ハウスメーカーや工務店は、概算金額しか提示していないにも関わらず、契約を迫ることが多いですが、この求めに対しては堂々と拒否して、詳細見積りの提示後に契約するようにしましょう。
たとえば、概算見積りで契約した後に、設備機器などのグレードアップや追加を提案して建築費をあげることがあります。契約後に追加・変更を要望した内容・仕様に対しては、ハウスメーカー等からの値引きも少なくてかえって割高になってしまうことも少なくありません。
契約に束縛されてからでは、施主の交渉力が弱い立場になりますから、契約前に仕様・プランを詰めておくようにしたいものです。
概算見積り書は必要なものであり、便利なものでもありますが、これだけで契約してはいけないことを肝に銘じておきましょう。