「建売住宅は寒い」
あなたはこの言葉、聞いたことはありませんか?
価格を抑えている建売住宅は、「断熱性も期待できない」、ということでしょう。
たしかに建売住宅はコストを抑えているので、断熱材のグレードが低い物件もあります。
ただし、「寒い=買うべきではない」ではなく、建売住宅が「なぜ寒いのか?」という理由をしっかり知ることが大切です。
この記事では、建売住宅が寒いと言われる理由を解説していきます。
建売住宅への先入観を一度なくし、フラットな視点で検討してみましょう。入居後の満足度も変わりますよ。
建売住宅が寒い6つの理由
「建売住宅は寒い」とは聞くものの、じつは寒い理由はさまざまだったりします。
もちろん、「単純に断熱材のグレードが低い」スペック的な理由もあれば、「断熱材の施工に欠陥がある」など冗談ではすまない理由まであります。
建売住宅の物件によって「なぜ寒いのか?」を考えることは、自分に見合った最適の物件選びにおいて重要です。
また建売住宅といえどグレードがあり、大手ハウスメーカーの手がける建売住宅は断熱性が高い傾向があります。
(ただしスペック的な部分であり、施工は別問題なことが多いです)
1・使用されている断熱材のグレードが低い。
建売住宅が寒いと言われる、もっとも大きな原因。それはやはり断熱材のグレードです。
建売住宅はコストを抑えて建てられているので、断熱材のコストも抑えられています。
そのため使用される断熱材も必要最低限であり、お世辞にも「冬暖かく、夏涼しい家」と呼べない物件が多いのです。
パワービルダー系の建売住宅でよく使われる断熱材は、グラスウール。
グラスウールとは、ガラス繊維を細かく砕いた断熱材で、安くて保温力が高いのが特徴です。
建売住宅でグラスウールがよく使用されるので、「グラスウール=性能の低い断熱材」と思われがちですが、いいえ、そうではありません。
グラスウールは「安くて、断熱性の高い素材」です。そのため大手ハウスメーカーの注文住宅でも、グラスウールはよく使用されます。
しかし同じグラスウールでも、細かくグレードが分かれており、
・グラスウールの密度
・グラスウールの厚み
によって、断熱性は大きく変わります。
建売住宅の場合、グレードの低いグラスウールが使用されることが多く、その結果「寒い」と言われてしまいます。
同じグラスウールを使用した注文住宅では、密度が濃く、厚みのあるグラスウールを使っているので、「暖かい家」となるのです。
2・窓の断熱性能が低い。
家の断熱性で大きな影響を与えるのが、「窓」です。
窓は家の熱がもっとも多く出入りする部分であり、断熱性の高い家にするならば、窓の断熱は避けては通れません。
ですので、いくらグレードの高い断熱材を使用していても、断熱材だけでは意味がありません。窓の断熱性が低ければ、家の熱はどんどん外に逃げていってしまいます。
建売住宅の窓の断熱性能は、非常に頼りないスペックで、
・窓:ペアガラス
・サッシ:アルミサッシ
どちらも「暖かい家」にするには、断熱性が不足しています。
一方で注文住宅で採用される窓は、
・窓ガラス:low-E複層ガラス(アルゴンガス入り)
・サッシ:樹脂サッシ(アルミ樹脂サッシ)
など、どちらも断熱性が高い窓・サッシです。(ただしローコスト住宅を除く)
これでは断熱性に差が出るのも、無理ありません。
3・気密性が低い。
断熱性と同じくらい重要なのが、気密性です。
気密性とは、家の中の空気を閉じ込めておくこと。
気密性が高ければ、暖かい空気は家の外に逃げません。しかし気密性が低いと、暖かい空気が外に出ていき、冷たい空気が家の中に入ってしまいます。(すき間風)
最近の住宅は気密性が高くなり、従来のようなすき間風を感じる住宅はほとんどありません。
しかし注文住宅の気密性に比べると建売住宅の気密性は低く、どうしても暖かい空気が外に逃げてしまいます。
4・断熱材の施工が雑である。(欠陥住宅の可能性)
建売住宅の断熱性のスペックが低いだけなら、寒さにもまだ納得できます。
しかし寒いと感じる建売住宅の中には、断熱材の施工が雑で本来の性能が発揮できない物件もあります。(欠陥住宅の可能性)
建売住宅で使用されるグラスウールは、すき間なく施工するのがポイントです。
しかし施工が雑で断熱材にすき間があると、そこから空気が出入りするため暖かい空気が逃げてしまいます。
また断熱材のすき間から室内が急に冷やされるため、壁の内側で結露が発生するケースもあります。
これは内部結露と呼ばれ、そのまま放置してしまうと、
・カビの原因。
・木材の腐食。
・シロアリ発生の原因。
など、重大なトラブルにつながる恐れがあります。
5・暖房器具の性能が低いから寒い。
「建売住宅は寒い」とは言っても、そもそも建売住宅の暖房器具の性能が低いから「寒い」場合もあります。
とくに体感温度に影響が出るのが、床暖房です。
足元からじんわり暖める床暖房は、体感温度を上げる効果があります。
コストを抑えている建売住宅で床暖房を期待するのは難しく、その結果、注文住宅に比べて「寒い」印象を受けてしまうのです。
6・換気システムが「熱交換型」ではない。
地味に寒いと感じるのが、24時間換気システムの影響です。
近年の住宅はシックハウス対策として、24時間換気が義務つけられています。
24時間、ずっと換気扇をまわし続けることで、室内の空気は2時間に1回入れ替わる設計になっているのです。
24時間換気すると、冬は外の冷たい空気が入ってきます。
注文住宅では、外の冷たい空気を暖かくしてから取り込む物件が多いです。(熱交換型換気システム)
しかし床暖房と同様に、建売住宅では通常の換気扇しかついておらず、外から次々と冷たい空気が入ります。
「建売住宅は寒い」とは、寒い空気をそのまま室内に入れてるから寒いのですね。
建売住宅でできる、断熱性能のチェックポイント!
「安い建売住宅だから、寒いのは仕方ない」
と割り切って購入するのであれば問題ないですが、期待を裏切る寒さであれば後悔してしまいます。
では建売住宅を購入するときは、どんなポイントに注意すればいいのか?
ここでは断熱性能のチェックポイントを解説していきます。
建売住宅の断熱性能をチェック。
まずチェックすべきは、その建売住宅の断熱性能のスペックです。
・使用されている断熱材は何か?どんなグレードか?どれくらいの厚みか?
・窓、サッシの種類
・暖房器具の性能(床暖房など)
・24時間換気システムの種類(熱交換型であれば、暖かい)
「寒い」と言われる建売住宅には理由があり、その理由の多くはスペックが低いことです。
「どのスペックが低いのか?」、事前に納得してから契約するようにしましょう。
断熱材のチェック①小屋裏
住宅の断熱性能はスペックだけでなく、実際の施工もとても大切です。
そのため断熱材がどのように施工されているか、チェックする必要があります。
建売住宅の断熱材でチェックできるのが、小屋裏です。小屋裏への点検口から確認できます。
・断熱材に隙間はないか?
・施工されていない部分はないか?
・配線周辺は丁寧に作業されているか?
もし断熱材の施工が雑であった場合、本来の性能が発揮されず、寒い建売住宅となってしまいます。
断熱材のチェック②床下
建売住宅の断熱材でチェックできるのが、床下です。
床下の断熱材は、床下点検口から床下に潜ることで確認できます。
・断熱材に隙間はないか?
・抜け落ちている断熱材はないか?
ただし点検口からの目視だけでは点検できる範囲に限りがあります。
ですので、床下の断熱材のチェックは必ず床下に潜って確認したいところです。
もし「床下に潜るのに抵抗がある・・・」とのことでしたら、住宅診断(ホームインスペクション)を利用するのもおすすめです。
まとめ:「寒い理由」を納得してから契約を。
「建売住宅は寒い」とは、まさにその通りかもしれません。
しかし寒いには理由があります。その理由までしっかりして契約するのと、理由を知らずに契約するのでは、入居後の満足感に大きな差が出ます。
必ず「建売住宅が寒い理由」に納得してから、契約するようにしましょう。
【建売住宅が寒い理由】
・使用されている断熱材のグレードが低い。
・窓の断熱性が低い。
・気密性が低い。
・断熱材の施工が雑である。(欠陥住宅の可能性)
・暖房器具の性能が低い。
・換気システムが「熱交換型」ではない。
また断熱材の施工をチェックするとき、住宅の欠陥を発見し改善策を提案する「住宅診断」を利用するのも1つです。
欠陥住宅を買ってしまう前に、一度プロによる厳しいチェックを受けてみることをおすすめします。