家づくりでプランを検討するときに役立つ注文住宅の間取り講座シリーズの第6弾として、トイレを取り上げます。トイレは住まい全体に占める面積割合は小さいですが、毎日、使用する大事なスペースですし、意外と間取り検討時に考えるべきことは多いです。
トイレの位置、数、バリアフリー対応、採光など様々なチェックポイントについて解説していますので、間取り作成時の参考にしてください。
1.トイレの位置・配置
最初に考えることはトイレの位置をどこにするのかということです。トイレの位置、配置に関するポイントを挙げていきます。
1-1.トイレの数
まずは、トイレの箇所数がいくつ必要であるか考えましょう。3階建て住宅なら2フロアに1つずつ配置(合計2箇所)、2階建て住宅なら1箇所のみか2フロアに1つずつ配置(合計2箇所)するかで迷うところですね。
その住宅に暮らす人の人数、その人たちの考え方や希望、面積にもよって異なることです。都会の狭小地で建物延床面積が60平米台の2階建て住宅では、各フロアにトイレを設置すると他のスペースが狭すぎると感じるでしょう。
ただし、考え方や家族構成にもよることですから、話し合って決めてください。
1-2.トイレの位置
3階建て住宅で1階にトイレと浴室があり、2階にリビングとトイレ、3階に寝室や子供部屋といったプランを見かけることがありますが、1階のトイレはあまり使われなくなります。限られたスペースをどう活用するかという問題はありますが、リビングや寝室のあるフロアにトイレが欲しいものですね。
また、高齢者が同居する場合、その人の寝室があるフロアにトイレを配置する必要性は高いですね。結果的に1階に高齢者の寝室とトイレを配置することは多くなっています。
他にトイレの配置で考えておきたいことは、玄関との位置関係です。玄関近くにトイレがある場合、来客時(玄関で誰かが来客対応しているとき)にトイレの出入りがわかりますし、使用中の音が気になることもあります。トイレは玄関から離してプライバシー確保を考えたいものです。
そして、ダイニング(食堂)からトイレのドアが見られないようにするのもチェックポイントです。家族だから気にしないということもあるかもしれませんが、来客が多い家ならば考えておいた方がよいでしょう。
音の問題への対策として、トイレと廊下の間(もしくはトイレとリビングの間)に洗面スペースを配置する方法があります。洗面スペースが音の緩衝スペースとなりますから、広さにゆとりがあるならば考えてみるとよいでしょう。
1-3.階段下スペースをトイレに
限られた住宅スペースのなかではいろいろな工夫が求められます。例えば、狭小住宅で複数トイレを設置するとき、階段下のスペースを上手く利用してトイレを設置してはどうでしょうか。
天井が下がって十分な天井高を取れないトイレになるかもしれませんが、それでも2つ目のサブ的なトイレとしては十分だという考えもあるでしょう。階段下を収納にするという家も多いですが、トイレとして活用することを検討してみましょう。
2.トイレのバリアフリー対応
住宅の間取り検討時、設計時にはバリアフリー対応について考えることは外せない課題ですが、トイレにおいてもそうです。ここでは、トイレのバリアフリー対応の注意点を紹介します。
2-1.手すりの設置
バリアフリーといえばまずは手すりです。トイレの便座に座ったり立ち上がったりするときや、立ったまま使用するときをイメージすれば、手すりは垂直方向と水平方向の両方に必要です(L型)。適当な工務店が施工した現場では座ったり立ち上がったりするときに使いづらい位置に設置していたこともありましたので、設置位置には気をつけてもらいましょう。
2-2.介護スペースを考える
トイレ使用時に介護を必要とする場合、介護者がいるスペースを考えなければなりません。トイレの形状やドアとの関係によっては、トイレ内に介護者が入って手伝う必要が出てしまい、広いスペース(便器の横にスペースが必要など)が必要となってしまうことがあります。
引き戸であれば戸を開けたままで介護できるので、オススメです。開き戸にするならば、外開き(廊下側に扉が開く)にしてください。内側へ広く扉にしてしまうと、なかで人が倒れると開かなくなってしまうことがあるからです。
自走式の車イスで出入りするときには、引き戸の方が使いやすいということもありますから、引き戸はいいですね。
2-3.緊急用のブザー
万一のときのためにトイレ内に緊急用ブザーを設置することも検討してみましょう。同居する家族に知らせるためのものもありますが、セコム等につながっていて緊急時のサポートを求められるものもあります。高齢者のみで暮らすときには有効かもしれません。
3.トイレの換気対策
トイレで換気対策を取るのは当然だと思うでしょうが、住宅によっては何も考えていなかったのかなと思うケースもありました。たとえば、換気扇のないトイレです。普通の考えならばあり得ないと思うでしょうし、設計者も気づかなければいけませんね。
ちなみに、ローコストを売りにする建売住宅では換気扇のないトイレを標準仕様だとしているケースもありました。
トイレや浴室の換気扇が24時間換気を兼ねていることが多いですが、このスイッチを切ってしまう住み手もいるため注意が必要です。24時間換気システムが常時作動していることを前提にプランニングされていますから、切ってしまうと換気不足になってしまい、住まいの空気の入れ替えが不充分となります。
トイレには換気扇があるから窓が無くても良いと考える人もいます。しかし、換気効果もありますが自然光を取り入れられることから窓があった方がよいでしょう。
4.トイレ内の収納
トイレ内にも収納があった方が便利ですね。トイレで使用するもの(トイレットペーパーや掃除道具等)を収納できる場所があると便利です。トイレットペーパーなどはトイレ内上部に設置した収納を使い、掃除道具は床面(トイレの隅)に小さな収納を設置することが多いです。
トイレ内に手洗いがあるときは、その手洗い器の下を小さな収納にすることも多いです。
ちなみに、高齢者の場合は、おむつなどの処理、保管のことも考えたスペースを考えたいところです。
5.トイレ内の手洗いの有無と化粧室という考え方
最近はタンクレストイレを採用する住宅が多いですが、その場合はトイレ内に洗面台を設置したいところです。但し、トイレ内のスペースが限られるため、小さな洗面台を設置するケースが多いですが、その場合は水が周囲に飛び散る量が多くて手洗い時に気を遣うという人もいます。
※タンクレストイレについて学びたい人は「タンクレストイレのメリット・デメリットとタンク型との比較」を参照してください。
トレイのすぐ外に洗面台を配置する(洗面室の洗面台と共有する)ことで、対応する方法もありますから、トイレのことだけで考えず、周りのスペースと一緒に考えましょう。但し、来客時にお客様が使用するトイレである場合は、洗面室を見られたくないという意識もあるでしょうから、トイレ後の洗面と兼用にしない方がよいでしょう。
逆に、スペースにゆとりがあるならば、トイレの手洗いをただの手洗いではなく、化粧室にアップグレードする方法もあります。大きめの洗面台をつけ、鏡や収納スペースも考慮してみてもよいでしょう。来客時のお客様用手洗いと兼用する使い方もいいですね。
6.トイレの工夫・その他の注意点
トイレに関して考えておいた方がよいことは他にもいくつかあります。細々としたことも含めて、ここで列挙しておきます。
6-1.トイレ周りの照明の工夫
夜間にトイレを使用するとき、トイレのすぐ近くに足元灯を設置しておくことで、廊下などの照明をつけずにトイレに行きやすくなります。
また、トイレのドアに灯窓を付けておくと、トイレ付近まで行ったときに中に人がいるかどうかわかります。家族だからと鍵をかけない人もいますからね。
6-2.カウンターの設置
トイレ内で新聞や書籍などを読む人も多いのではないでしょうか。そういった使い方をするならば、トイレ内に小さなカウンターがあれば便利です。また、何か小物を置いてインテリアの見ためを考えるのもいいですね。
6-3.汚れ対応
トイレについては汚れ対応についても考えておきたいところです。床は水分に強い塩ビシートを採用することが多いですが、壁のクロスも濡れた雑巾で掃除しやすい素材にした方が便利です。男の子がいる家庭なら尚更です。
ちなみに、男の子が多い家では小用の便器を設置すると利便性が良いという利点がありますが、汚れやすいことも考えておきましょう。
いかがでしょうか。トイレだけでもこれだけのことを考えながらプラニングする必要があります。住宅の広さや家族構成のことなどを考慮しながら、トイレとトイレ周りのプランを考えましょう。