注文住宅を新築する際には、建物本体工事費にばかり意識がいってしまいがちですが、本体工事費用以外に必要な費用も馬鹿にならない金額です。ハウスメーカーや工務店から提示された見積り書をチェックするときには、本体工事費用以外がどこまで含まれているか確認し、含まれない費用についても質問したり、調べたりして把握するように努めましょう。
以下では、注文住宅を建てるときに必要な建物本体の建築費以外の諸費用について説明しますので、請負契約を締結する前に確認してください。
1.建物本体工事の着工までに必要な費用
最初に説明する費用は、建物本体工事に着手するまでに必要な費用です。請求されるタイミングは、完成後であるケースは多いですが、発生時期が着工前のものから説明します。
- 工事請負契約書の印紙代
- 設計料・工事監理料
- 境界確定費用
- 土地の造成費
- 既存建物等の解体費
- 地盤調査費
- 地盤改良・補強費
- 確認申請費
- その他の申請費
- 仮住まい費用
以上が、着工までに発生する費用の一覧ですが、これらを以下でどういった内容のものであるか説明しましょう。
1-1.工事請負契約書の印紙代
ハウスメーカーや工務店と建築工事の請負業務について締結する契約書のことを工事請負契約書と言いますが、これに印紙を貼って納税しなければなりません。その印紙代(印紙税)が必要です。
契約当日にハウスメーカー等が印紙を準備しておき、施主がハウスメーカー等へ現金で支払うことが一般的です。もちろん、施主が予め印紙を購入しておいて、それを使用しても構いません。
1-2.設計料
住宅建物の設計作業への対価(報酬)です。設計事務所と設計業務を契約した場合には、設計事務所へ支払いますが、ハウスメーカーが設計する場合はそのメーカーへ支払います。ハウスメーカーが外部の設計事務所に設計業務を委託しているケースでも施主からハウスメーカーへ支払うことがあります。
ハウスメーカーや工務店が設計している場合には、見積り書のなかに設計料という項目が記載されていないことも多いですが、その場合は工事費用のなかに含まれております。これは設計料が無料だということではなく、工事費と一緒にしているだけですから施主が得しているわけではありません。むしろ、費用詳細が不明瞭で分かりづらいものです。
設計料の金額はわかりづらいことも多いですが、建築費の2~5%程度が多いです。極端に安い金額だったとしても、本体工事費などがその分高くなっていることも多いです。
1-3.境界確定費
建築予定地と隣地との境界位置が不明確な場合には、境界確定のために費用がかかることがあります。隣地の所有者が立会いしたうえで境界位置を確定させます(合意します)が、境界杭などの設置費用や測量費用などが生じることがあります。
土地によって異なるものですが、全くこの費用がかからないケースも多いです。予め境界が確定している土地ならば費用はかかりません。境界確定費は、高くつくときで10万円を超えることがあります。
1-4.土地の造成費
荒れた土地の整地や擁壁の構築などにかかる費用です。これも必要となるケースと必要ないケースがあります。擁壁を構築する必要がある時は、その規模・構造等によってはこれだけで数百万円もかかることがありますから、予算検討段階で計算していないと請負契約の直前までいって計画を中止せざるをえなくなってしまいます。
1-5.既存建物等の解体費・処分費
建築予定地に既存の建物等が残っている場合、その解体費用も必要ですし、解体した後の廃材等の処分費用もかかります。処分費用は結構高いので驚く人も少なくありません。解体費と処分費で100万円を超えることもあります。
1-6.地盤調査費
建築工事に着手する前には、必ず地盤調査をして地盤改良・補強工事の必要性やその工事内容を検討しなければなりません。地盤調査は必須ですから、必ず予算に計上しておきましょう。
敷地の大きさや建物の大きさ・形状にもよりますが、最低でも5箇所の調査は必要となり、10万円台からの費用となります。
1-7.地盤改良・補強費
地盤調査の結果を受けて、建物プランに合わせた地盤改良・補強プランを検討しなければなりません。そして、その工事費用が生じます。地盤改良・補強が必要ないケースもありますが、日本は地盤の弱い土地が非常に多いですから地盤改良・補強費用がかかる可能性が高いと考えておいた方が無難です。
その費用は数十万円からとなりますが、高いときは200万円を超えることもあります。建築計画に大きく影響するような工事費ですね。
1-8.建築確認申請費
建物を建築する際は、建築基準法に則って建築確認をとらなければなりません(一部を除く)。多くの場合は、その住宅の設計者がこの業務を請け負っており、施主は報酬と共に費用を支払うことになります。
また、完了検査費(その建築する住宅の条件にもよっては中間検査費も)も必要となり、この建築確認申請費と一緒に請求されます。条件によりますが、5~20万円が多いです。
1-9.その他の申請費
住宅によっては、施主の希望やハウスメーカーや工務店の推奨によって、任意で長期優良住宅の認定をとったり、住宅性能評価を利用したりすることがありますが、これらにも費用がかかります。数万円~20万円程度の費用となります。
1-10.仮住まい費用
自宅の建替えをする計画ならば、一度退去しなければならず、仮住まい費用が生じます。仮住まいの家にどの程度の物を求めるかによって大きく異なりますから、予算と一緒に希望を検討しましょう。
2.建物本体工事の工事中・完成後に必要な費用
次に建物本体の工事中や工事完了後に生じる費用について説明します。以下がその一覧です。
- 工事監理料
- 各種検査費用
- 外構・エクステリア
- インテリア
- 配管敷設費・水道負担金
- 登記費用
- 融資(住宅ローン)関連費用
- 引越し費用
- 地鎮祭・上棟式の費用
- 火災保険・地震保険・家財保険の保険料
以上の項目について、以下で詳細を説明します。
2-1.工事監理料
工事監理とは、建築工事が適切になされているか、その施工精度の確認や設計図書との照合を行う大事な業務です。
設計事務所に設計を依頼するケースでは、その設計事務所が工事監理も一緒に引き受けることが一般的です。ハウスメーカーで建築する場合は、その従業員である建築士が工事監理者となることが多いです。前者の場合は工事監理のために何度も現場へ足を運ぶものですが、後者の場合はあまり現場まで出向いてくれず、名前だけの監理者になっていることが多いです。
前者は建築費の4~6%の設定にしていることが多いですが、後者は明確にしていない(本体等の工事費に含めていることもある)こともあります。
2-2.各種検査費用
建築確認申請のところで説明したように、中間検査や完了検査を受ける必要があるのでその費用がかかりますが、それ以外にも住宅性能評価や瑕疵担保責任保険のための検査費用がかかることも多いです。ただ、多くの場合、建築確認をした機関に一緒に依頼するため、それほど高くはありません(数万円~10万円台)。
これらの検査は、一応、第三者性を謳っているものの実質的にはハウスメーカーや工務店がその検査機関のお客様になっていることから、第三者としての疑問や簡易的な検査内容が心配されて、施主が自ら第三者検査会社に検査依頼するケースもあります。
その第三者検査を依頼する場合は、その内容(検査回数等)によりますが、10~70万円程度かかります(依頼する人は30~50万円かける人が多い)。第三者の住宅検査(ホームインスペクション)はこちらです。
2-3.外構・エクステリア
建物本体以外という意味では外構(エクステリア)の費用もそうです。外構にはほとんど予算を割かないという人もいますし、かなり凝ったものにして費用をかける人もいますが、あなたの好み次第ですね。カーポートや門扉、植栽、玄関までのアプローチなどのことです。
2-4.インテリア
家具や家電・照明などのインテリアに関わる費用も大きなものとなりますから、予算組しておくべきでしょう。カーテン代も決して安くはありません。使用している家具等を使うのか、買い替えるのかといったことも考えておきましょう。
2-5.配管敷設費・水道負担金
敷地内の埋設配管の敷設に関する費用です。元々あったものを使用する場合でも、ある程度は新たに敷設することが多いですが、耐久性を考慮すれば古いものを使うよりも新たに設置し直すことも多いでしょう。
水道の利用に際して自治体へ支払うことのある費用が水道負担金です。自治体によっては分担金などと呼ぶこともあります。
2-6.登記費用
完成して引渡しを受ける段階で登記申請をしますが、その費用として登録免許税や司法書士の報酬が必要となります。建物の表示・保存登記のほか、住宅ローンを利用するならば抵当権の設定登記、土地を購入したのならば所有権移転登記も行います。
2-7.融資(住宅ローン)関連費用
住宅ローンを利用するならば、融資関連費用もかかります。事務手数料や保証料、団体信用生命保険料もかかります。つなぎ融資を受ける場合には、その費用も必要です。
2-8.引越し費用
引越し費用も馬鹿にならないですから、予算検討段階から考慮しておきましょう。
2-9.地鎮祭・上棟式の費用
最近は地鎮祭も上棟式もやらない人が多くなりましたが、実施するならばその費用がかかりますね。
2-10.火災保険・地震保険・家財保険の保険料
住宅を新築したら、皆さん火災保険に加入しますね。強制ではないですが、加入しないときのリスクが大きすぎますから加入するようにしましょう。そして、その際、地震保険や家財保険の加入もよく検討した方がよいでしょう。家財も被害にあったあと再調達するコストは大きいですから前向きに検討した方がよいでしょう。