住宅を購入するタイミングで購入の参考にする目的でホームインスペクション(住宅診断)を依頼することはよくあることです。対象物件が、新築でも中古物件でも同じように依頼者は多いです。
このホームインスペクションを依頼するとき、まだ購入するかどうかわからないのに、買主が費用負担するのか売主が負担するのか考えたことはありませんか?中古住宅では、不動産会社から売主や買主に対してホームインスペクションを利用するかどうか聞かれることも多くなっているはずですが、その調査費用をどうするかまで説明を受けていないこともあるようです。
ホームインスペクションの費用を誰が負担すればよいのか解説するので、依頼するときの参考にしてください。
1.ホームインスペクションの費用はどれくらいか?
費用負担について考えるうえで切り離せないのは、ホームインスペクション(住宅診断)の利用にかかる費用がいったいいくらするのか?という点です。
実は、ホームインスペクションといっても実施者(ホームインスペクション業者)によってある程度の価格差があり、かつその調査内容にも違いがあります。
1-1.最低ラインの調査費用は5万円前後
中古住宅に関するホームインスペクションの調査内容について、国土交通省の告示(既存住宅状況調査方法基準)で最低ラインを示しておりますが、この最低ラインのみを調査する場合は、概ね5万円前後です。思ったより安いと感じる人もおおいでしょう。
但し、最低ラインだけの調査なので、これから購入する人、つまり買主にとって必要な調査項目のうち含まれていない項目が多く、かつ基準が緩いために本来なら補修等の対応が必要なことでも報告擦らされないことが多いため、買主ならもっと詳しい調査を依頼した方がよいでしょう。
1-2.最低ライン+買主が求める調査の費用は6~13万円前後
買主が購入判断や購入後の補修工事範囲の参考などにするために必要とする調査を依頼する場合、最低ラインの調査に比べて調査範囲・時間にも違いがあるため、費用も異なってきます。6~8万円前後の費用がかかるでしょう。
また、床下や屋根裏(小屋裏)の内部までホームインスペクターに確認してもらう場合は、総額で10~13万円前後の費用となります。
建物の大きさや物件所在地によっては料金の加算が生じることもありますので、都度、物件情報を伝えて見積りをとるようにしましょう。
2.ホームインスペクションの費用負担は売主か買主か?
次に、今回のメーンテーマである誰が費用負担するのか?という点について説明します。実は、費用負担者は必ず誰がするのかと固定されているわけではありませんので、ケースごとに関係性を考えていく必要があります。
2-1.売主が費用負担するケース
中古住宅であれば、売主が売却に際してホームインスペクションを依頼することがあります。購入検討者に対してホームインスペクションの結果を見て安心してもらうため、または建物の状況を確認してから購入してもらうことで後々のトラブルを抑制するためといった目的で依頼しています。
このように売主が依頼する場合には、ホームインスペクションの費用負担は売主がしていることが多いです。
但し、売主が依頼しているホームインスペクション業者のほとんど全ては不動産会社が斡旋している業者ですので、その物件を売りたい人たちによって仕込まれている調査結果です。正直な調査結果が提示されることもあれば、大事なことが報告書の載せられていないこともあります。
そこで、買主が売主依頼のものとは別にホームインスペクションを依頼することがありますが、この場合の費用負担は買主がしています。
2-2.買主が費用負担するケース
新築住宅でも中古住宅でも、買主が購入判断のためなどの目的で依頼することがあります。建物の施工不具合や著しい劣化、欠陥などがあれば売主へ補修等の対応を求めたり、購入を中止したりするための利用ですが、このように買主が希望して依頼する場合にはその費用負担は買主がしていることが多いです。
2-3.不動産会社が費用負担するケース
不動産会社が売主となっている物件の場合、売りやすくするため、買主に安心してもらうためなど様々な目的でホームインスペクションを依頼することがあります。この場合は、不動産会社が費用負担しています。
不動産会社が依頼するときは、その提携先であるホームインスペクション業者が診断して結果を出していることから、不動産会社とホームインスペクション業者の関係性に疑問が生じる部分です(ホームインスペクション業者にとって不動産会社は継続的に仕事をくれる大事な取引先となる)。
そこで、買主が、不動産会社が依頼したものとは別に依頼することもあり、その場合は買主が費用負担することもあります。実際に不動産会社が依頼した調査結果と異なる調査結果が出ることも少なくないので、利用する価値はあるでしょう。
2-4.売主や買主の依頼でも不動産会社が負担することもある
不動産会社も商売ですから、取り扱う件数を増やし売上や利益をあげていくために、営業上の工夫をするのは当然のことです。
その一環として、売主が家をうるときに利用するホームインスペクションの費用を不動産会社が肩代わりすることもあります。そうすることで、売却を自社に依頼してもらうというメリットがあるからです。
また、購入検討者が利用するホームインスペクションの費用を不動産会社が肩代わりすることもあります。これも自社を介して購入してもらうというメリットを考えてのことです。
売主にしても買主にしても不動産会社が支払ってくれるのであれば悪い話ではありません。ただ、買主が気を付けておきたいのは費用負担してもらう代わりに、不動産会社が斡旋するホームインスペクション業者の利用に限定されてしまうケースです。
こうなると、提携先のホームインスペクション業者と不動産会社の関係性の問題が出てきて、買主に報告すべきことが報告されないことが起こりうるわけです。実際に、不動産会社が斡旋する業者の多くは、費用のところで説明した「最低ライン」の調査しかしていないことが多いです。
もし、あなたが買主ならば、ホームインスペクション業者は自分の意思で選ぶことに重きをおいてください。調査費用の負担は小さくないですが、大きな買い物をするときに利用する大事な診断サービスですから、安心できる関係でありたいものです。
2-5.新築住宅の建築中のホームインスペクション費用
新築住宅を建築するとき、工事開始から完成するまでの期間にホームインスペクションを依頼する人も多いです。ほとんどの住宅において建築会社や不動産会社が提携先の検査機関に検査を委託しているのですが、結局はこれも提携先ですし簡易的な検査しかしていません。
それで買主が自ら検査依頼しているのですが、この場合、建築会社等が委託しているものはその会社が費用負担(注文建築なら施主が負担)し、買主が自ら依頼するのは買主が費用負担することが一般的です。