注文住宅の間取りプラン等を作成するときに活用できる注意点や考えておくべきことを紹介する注文住宅の間取り講座の第8弾は、リビングとダイニングです。
リビングは、毎日、家族の誰もが利用し集う場所です。今では来客時にお迎えするスペースとしても使用することが多いです。そういった大事な空間であるリビングやダイニングについて検討すべき点をアドバイスします。
1.リビングとダイニングは一体型にすべきか?
最近の日本の住宅では、リビングとダイニングを分けるケースが減りました。これから住宅を新築する人の多くが、当然のようにリビングとダイニングを一体とする間取りとするかもしれませんが、念のため一体型でよいかどうか検討してみましょう。
1-1.リビング・ダイニングの一体型が非常に多い
以前の日本の住宅では、居間と食堂をわけることが一般的でしたが、最近の住宅では居間(リビング)と食堂(ダイニング)が一体となっている間取りが非常に多いです。中古住宅の売買の際、リビングとダイニングのスペースが分かれているだけで売りづらいということは多いです。
間取りは時代を反映しているわけですね。
1-2.リビングとダイニングを分ける必要性が薄れた
最近の家族構成は以前に比べて小さく(5人程度までが多い)、来客も限られているために分ける必要性もなくなってきたということも言えます。
また、リビングは来客用というよりも家族のための空間、ファミリールームとしての意味、役割が大きく、来客があまり多くないことも考慮すれば、ますます分ける意味がないと言えます。
もちろん、各家庭の考え方や使い方によることなので、日々の暮らしをイメージして決めてください。例えば、来客を招いてのホームパーティをする機会が多く、且つあまりダイニングを見られたくないということであれば、分けておいてもよいでしょう。
1-3.リビング・ダイニング一体型は広く使える・広く見える
限られた面積を有効活用するという意味でもリビングとダイニングを一体にしておいた方が効率的です(スペースを共有できるため)。都市部では面積にゆとりがないことが多いですから、その傾向はより強いものとなっています。
最近のトレンドとしては、リビングとダイニングだけではなく、キッチンまでつなげたグレートルームといったものもあります。オープンキッチンですね。これにより広く見えるようになりますね。
1-4.リビング・ダイニング一体型の注意点
リビングとダイニングが一体となった間取りである場合、何も対策していないとその2つのスペースの境がなく、間延びした印象を与えることがあります。これを気にしないならばよいのですが、感覚的にリビングとダイニングのスペースを分けた印象としたい場合には工夫する必要があります。
たとえば、天井の内装材を分けたり、ダイニングの天井高を低くしてリビングを高くしたりするといった工夫です。
1-5.リビングとダイニングを分けるメリット
リビングとダイニングを分けることのメリットも考えてみましょう。
まずは、食事する空間とくつろぐ空間を完全にわけたいという人には向いています。日本においては、食事はプライベートなことと考えることが多いため、分けておきたいと考える人もいるのです。
また、家族が食事している最中の来客をリビングで対応するということも可能です。客間としてリビングを活用しやすくなりますね。
建物面積の関係で書斎をもちたいけど持てないというケースでは、ダイニングを書斎代わりにして利用するケースもあります。広く使えるので、無理に小さな書斎を持つよりもよいかもしれません。
2.LDの採光と開放感の工夫
次にリビング・ダイニングの採光や開放感について考えてみましょう。このスペースには、明るさや開放感を求める人が多いですから、大事なことではないでしょうか。
2-1.LDを2階・3階に配置する
リビング・ダイニングを1階ではなく、2階や3階に配置することで採光を確保しやすくなります。特に都市部の狭小地では1階がどうしてもくらくなりがちです。
2階建ての2階部分や3階建ての3階部分のように最上階に配置すれば、より採光を得やすくなりますから、採光重視の間取り作りならば是非考えるべきでしょう。
ちいなみに、最上階ならば屋根勾配に合わせた勾配天井とすることもできます。これは、開放感のアップになります。
2-2.LDを南向きにする
建物の南側に配置することで採光を得やすくなりますから、リビング・ダイニングの位置を南側にするとよいです。但し、南側の隣地の建物と近い場合は陰になりますから周囲との関係もよく考えなければなりません。
結果的には北向きにした方がよいというケースもあるわけです。
2-3.窓を工夫する
リビング・ダイニングの窓のサイズを大きくすること、トップライト(天窓)を設けること、そして中庭や坪庭を設けてリビング・ダイニングに面する外部を増やすことで窓を増やすのも良いですね。
上図は建物を上から見下ろした図ですが、このように中庭を設けることで採光を得やすくなりますから、リビングに隣接した中庭について検討するとよいでしょう。
2-4.吹抜けにする
採光と開放感を強く求めるならば、吹抜けのあるリビングにすることを考えるとよいでしょう。但し、吹抜けにはデメリットもありますから「吹抜けのある家のメリット・デメリット・注意点」で学んでから判断するとよいでしょう。
3.LDの広さの工夫
限られた土地、建物の面積の住宅なら、広く使うための工夫を優先的に考えた方がよいことがあります。リビングを広く使うための工夫も考えたいですね。
3-1.隣室に和室を配置して来客時は一緒に使う
リビングと隣室を必要時にだけでも一体で利用できるようであれば、便利です。それでよく採用されるのはリビングの隣に和室を配置し、必要なときに襖を取って(もしくは開けて)一体で利用する方法があります。
普段、その和室はあまり使用しなくても来客者の寝室に使用することもあります。
3-2.庭やバルコニーとの往来し易さで広く使う
リビングの横に中庭を配置することで採光面のメリットがあることをあげましたが、その中庭へリビングから容易に出やすいようにしておく(掃き出し窓にしておく)ことでリビングと一体で利用でき、広く使うことが可能になります。
但し、具体的にどのような使い方をするのか想定し、実際にそれを必要とするかどうかよく考えておくべきです。中庭で朝食をとりたいからと考えてプランニングしたものの、実際には全然使わなくなったというケースは多いものです。もったいないですね。
4.家具・家電・インテリアの配置
リビングやダイニングに配置する家具や家電のことも考えて、最初からプラニングしておくべきです。実際に置くダイニングテーブル、チェアー、ソファー、ローテーブル、テレビとテレビ台、その他の棚などのことはもちろん、観葉植物などのインテリアのことも考えておきましょう。
観葉植物の位置は、日照のことも考慮して決めておき、その部分の床をタイルにするという考えもあります。
また、配線も重要です。テレビの設置個所、PCを使用する箇所、インターネットのLAN、防犯、電話・FAXなどの配線のことを考えて決めましょう。配線はなるべく集中させることが好ましいですから、利用シーンのことも想像しながら考えてください。
5.帰宅した子供が通る配置
リビングで子供の顔を見えるようにしたいという親の希望は多いです。帰宅した子供が、玄関から子供部屋へ直行するのではなく、一度、リビングを通る流れをあえて作る方法もあります。リビングをただ集う場所とせず、家族みんなが通過する場所とすることで、家族のふれあいが生まれやすくなるでしょう。
6.床暖房の必要性と設置範囲
床暖房を設置するかどうかは、個々の好みの問題もあります。ただ、天井が高い家であるならば、床で温められた空気が上へあがっていくため、暖房装置として効果的です。サーキュレーションがあれば、より空気が循環してよいでしょう。
但し、リビングやダイニングの全面に床暖房を設ける必要はありません。人がいる場所などに限定すればよいです。たとえば、ソファーとローテーブルの周辺やダイニングテーブルの周辺といった具合です。家具や家電を配置する場所には設置する必要はありませんし、重みで床が沈みやすくて床を傷めてしまうでしょう。
7.その他
リビングやダイニングに関して考えておくべきことは他にもあるので、ここで挙げておきます。
リビングの天井を高くする人は多いですが、そうなると容易に照明を交換しづらくなってしまいます。大きな脚立を保有しておくなどの対策も一緒に考えておかなければなりません。
インテリア、見た目といったことを考慮した工夫もした方がよいですね。たとえば、飾り棚を設けることや壁の内装材をオシャレなもの(タイル等)とするなどの方法も考えてみましょう。ショールームを見学していくなかで良いアイデアに出会えるかもしれません。
また、リビングで使用するものはリビングに収納できると便利ですから、リビングにも収納スペースを設けておくとよいでしょう。具体的に収納するものをイメージして、収納スペースのサイズを考えるとよいです。
いかがでしょうか。リビングやダイニングでは考えるべきことも多いですね。完成してから後悔することのないように、時間を取って間取りのことを考えてみてください。