新築住宅の建築工事やリフォーム工事を建築業者(ハウスメーカーや地元の工務店など)へ発注する前には、その工事の見積書を提示してもらいます。その見積書の記載内容に問題があれば、追加工事費の請求や希望内容と出来上がった住宅の相違などのトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高まります。
見積書に関連する建築トラブルは、内容次第では金銭負担が数百万円になることもあれば、トラブル解決が長期化することもあり、経済的にも精神的にも負担が本当に大きくなってしまいます。
こういった建築トラブルを回避するためには、住宅の新築工事やリフォームの見積書のことをよく理解し、詳細に内容をチェックしなければなりません。今回の記事では、基本項目に関する見積書のチェックポイントや一般的な見積書の構成についてサンプルを使いながらわかりやすく解説していますので、十分に役立つでしょう。
1.注文住宅やリフォームの見積書に表示すべき基本項目のチェックポイント
見積書のチェックポイントといえば、工事の内訳とその金額こそが大事だと思うことでしょう。それは正解ではありますが、その前にもっと基本的な項目についても抑えておくべきです。新築やリノベーションを請け負う建築業者のなかには、本当に驚くようないい加減な業者がいくつも存在しています。
低次元の建築業者でないかどうかは、工事内訳をチェックする前に基本項目のチェックポイントだけで見分けられることもあります。まずは、基本から抑えておくべきなのです。
- 建築会社の社名・見積書の発行者
- 宛先
- 見積書の発行日と有効期限
- 対象住宅の特定(所在地)
- 工期
以上が基本項目のチェックポイントですが、以下の画像(見積書の表紙のサンプル)を見ながらもう少し詳しく説明しましょう。
1-1.建築会社の社名・見積書の発行者
その見積り金額で工事を請け負う建築業者を明らかにします。基本的には、見積書の発行者と同じです。これは見積書に記載されていて当然のことであり、これが抜け落ちている書面はさすがにお目にかかれません。
上のサンプルでは「株式会社日本優良工務店」と明記され、かつ会社の所在地や担当者名も記載されています。
1-2.宛先
誰に対して見積書を発行したものであるか明らかにしなければなりません。宛先の名前に間違いないか確認しておきましょう。過去に宛先を表示していない見積書を見たこともありますが、やはり見積もり金額の内訳もひどいもので、丼勘定どころではなかったです。
上のサンプルでは「山田一郎様」宛となっていることが確認できます。
1-3.見積書の発行日と有効期限
見積書の発行日は記載されているものの、意外と有効期限が記載されていないこともあります。有効期限は、営業マンから「割引金額が適用される期限だから、それまでに契約しないと割引が受けられない」として営業上のトークに利用されることもありますが、割引の有無や金額に関係なく、その見積金額が有効である期限は書面で確認しておくようにしましょう。
サンプル画像では、右上に発行日と有効期限が記載されています。有効期限までの期間は1ヶ月や3ヶ月などとしていることがあります。
1-4.対象住宅の特定(所在地)
見積書は新築工事の対象を特定したものでなければなりません。建築工事請負契約書であれば、冒頭に建築地や建物床面積などの情報を記載して物件を明確にしていますが、見積書においても所在地を明記することで、特定している必要があります。
項目の名称は、建築予定地などと表示していることが多いですが、サンプルでもそうなっています。
1-5.工期
見積書が提示された時点で工期がわかっているようであれば、工期も記載しておきたいものです。但し、見積書の提示時点では着工日が未確定であることのほうが多いですから、上のサンプルのように着工日と完成予定日を明記することはなかなかできるものではありません。
それでも、想定される工期を「着工より3ヶ月」などと記述しているようであれば、親切なものだといえます。サンプルでは工期を着工から完成予定まで明記していますが、これはそう多くは無い事例です。
2.住宅の新築工事における一般的な見積書の構成
次に新築工事の見積書で見られる一般的な構成について説明しておきます。上のサンプルにも金額が載っていますが、これは総額です。
見積書に記載されている金額が総額だけでは、その時点でそのような建築業者は信用に値しません。総額のほかにも、各工事種別(木工事・建具工事・塗装工事など)の金額やそれぞれの工事種別の詳細項目と金額も記載されていなければなりません。
<表示されるべき金額の種類>
- 新築工事の見積り金額の総額
- 各工事種別の金額
- 各工事種別における詳細金額
これらを見積書のサンプルで見ると以下のようなイメージです。
★各工事種別の金額
サンプル画像を見れば、仮設工事・基礎工事・躯体工事・屋根工事・外装工事・内装工事などのように工事の種別を大別して記載していることがわかりますね。そして、それぞれの工事種別に対しての金額が記載されています。これにより、どのような工事にどれぐらいの金額がかかっているのか理解することができます。
全ての見積書においてサンプルの通りに工事をわけるということではありません。見積書を作成する会社や担当者によって項目の分け方は異なりますので、上の画像は参考程度としてください。
★各工事種別における詳細金額
上のサンプルは、先にあげた各工事種別(仮設工事・基礎工事・躯体工事・屋根工事・外装工事・内装工事など)の1つ1つについて、詳細を記載している見積書のページです。サンプルでは、内装仕上げ工事とタイル工事について記載しています。
全ての工事種別について、このように詳細を書いているわけですから、見積書はそれなりのページ数になるはずです。
今回の記事では、見積書に関する基本的なチェックポイントを挙げています。見積書のチェックという意味では、さらに詳細に見ていく必要がありますが、そのチェックポイントは次回以降に解説しましょう。