住宅購入・建築の注意点

内覧会(完成検査)で失敗しないための基礎知識

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内覧会(完成検査)で失敗しないための基礎知識

住宅を購入したり新築したりすれば、引渡し前になって内覧会に対応することになります。初めてのマイホームであれば、初めて経験する内覧会ですから不安を感じる人は多いものです。今回は、そんな内覧会の基礎知識を購入者の目線で解説します。

1.内覧会とは?

内覧会とは、完成検査や施主検査とも言います。契約済みの完成した建物を買主(または施主)が検査する機会のことです。本来は、一戸建ての場合もマンションの場合もあります。

しかし、一戸建ての場合、買主側から、「引渡し前に施主検査(完成検査)をさせてほしい」と言わなければ、そのような機会を設けない売主や建築会社もあるので、要注意です。それで、その会社の姿勢や意識のレベルがわかるってものですね。

では、そのマンション内覧会や一戸建て内覧会では、何を検査するのでしょうか?

それは、契約した図面通りに建てられているか確認したり、仕上り具合に問題がないか確認したりします。簡単に言うならば、「契約した通りに、しっかり建ててくれたのか?」という確認を行う場です。

この内覧会で問題があれば補修を要求し、後日、その補修がきっちり行われているかを確認します。この2度目の機会を、再内覧会とか、確認会などと言います。言い方は、売主・販売会社などによって異なりますが、同じ意味です。

この再内覧会(確認会)でも残念ながらきちんと補修されていないことがあり、そういうときは、さらに確認する機会が設けられます。ときには、内覧会を3度も4度も行うこともあります。もちろん、1回で終えるのが理想ですが、通常、2回はあります。

内覧会が3度も4度もというのは、売主側がしっかり補修してくれていないときに起こりますから、こういうケースに遭遇した買主がかわいそうです。不幸すぎます。

しかし、買主側に問題のあるときもあるので、要注意です。この内覧会は、基本的には買主が、「これでOK」と納得するまで行うべきものですが、一般的には、「もう大丈夫だろう」と思われる場合でも、OKを出さない方もいます。

ここで、よく問題となるのが許容範囲。「この程度なら許容範囲だ」というのがあるわけです。でも、そんな許容範囲なんて、一般の方にはわかりにくいものですね。売主側が、「それは許容範囲ですから」なんて、言っても簡単には信じられないという方も多いようです。気持ちはわかります。売る側と買う側、立場が違いますからね。

ただ、本当に許容すべきではない酷い補修工事が続くこともありますから、判断は簡単ではありません。

基本的には、生活していく上で、支障があるかどうか?という点にあると考えましょう。少しでも支障があると感じれば、毅然と「補修してください」と要求してみましょう。

内覧会の同行・立会い業者の選び方

2.内覧会の同行・立会い業者の選び方

ここ数年、「自分たちだけでの内覧会は不安だ」「素人だけの内覧会で大丈夫なの?」という方が、専門家に中立的な第三者として内覧会立会いを依頼するケースが増えています。

確かに多くの方から、

「自分たちで舞い上がってしまって何もできなかった」
「施工会社の説明が本当かどうか判断できなかった」
「『そんなものです』と言われたら納得するしかなかった」

という声を聞きました。中立的な第三者の存在は心強くもあり、頼りになることでしょう。

主に、建築士が内覧会に同行し、消費者側の立場で問題箇所を指摘し、売る側に補修などを要求していきます。別に、資格に制限があるわけではないので、建築士でなくとも内覧会立会いをされるケースもあります。

なかには、不動産鑑定士や宅地建物取引士などが立ち会うケースや無資格の人も。マンションの営業経験やマンション管理の経験は内覧会での調査とは無縁です。でも、法的には何ら問題ないのでそのような人・会社によるサービスもあるようです。ただ、依頼するときの目安としては、建築のプロとしての資格はあった方が安心材料でしょう。

但し、建築士であっても、それは単にペーパー試験に通っただけです。最も大事なのは、豊富な経験と知識ですから建築士ならだれでもよいわけでもありません。

マンション内覧会であれば、マンションの設計監理の経験は有効でしょう。一戸建て内覧会なら、一戸建ての設計監理の経験ですね。

ただ、マンションの内覧会では、専有部分の内側(室内)の検査が中心となります。完成時点では、基礎・構造部分は、ほとんど確認しようがありませんから。そういうことを考えると、設備面のチェックの比率が高いために、設備に詳しい人も有利だと言えます。

一戸建ては、自分で何度も何度も図面を書いて、監理して、現場の職人さんを指導して、ということを繰り返ししている人であることは必須でしょうね。

内覧会の同行・立会い業者へ依頼する場合は、その人の過去の経験や資格を確認することが、内覧会を無事に乗り切る為の第一歩です。

3.内覧会の所要時間

内覧会立会い・同行サービスに関することで、よくある質問があります。それは、内覧会の所要時間です。売主側から「30分でお願いします」などと時間制限について説明を受けることが多いです。ほかにも45分とか、ひどい場合は15分なんてときも。

結論から言えば、それは無視すべきことです。

そんなに早くチェックすることなど、できるわけがありません。

専門家が内覧会で全ての調査をしますと、広さによりますが、1時間30分~2時間程度はかかります。施工の出来が悪いときなど、5時間もかかったことがあります。

この内覧会の所要時間は、物件の出来、面積、売主側の対応の仕方、そして買主側の考え方によってもかなり影響を受けます。だから、人によっていろいろです。

売主が、補修の要求に即答できない担当者であったり、現地に付き添わないケースであったりすると、時間がかかることがあるのです。

また、買主側の性格的に、細かなキズや汚れを必死にどこまでもチェックしていくとどうしても時間がかかります。キズや汚れへの許容範囲には、個人差がありますから仕方ないところでもあります。

「どうせ入居したら、子供がキズをつけるので細かく見ません」という方もいますが、そのような場合は、比較的、早いものです。

内覧会の所要時間は、売主側の都合で決めるのではなく、買主側が納得できるまでにかかる時間です。

「30分で」

などと言われたら、

「それは無理」

とはっきり言いましょう。

4.内覧会の調査道具

次によくある質問は内覧会で用意していた方が便利な調査道具についてですので、内覧会でよく使う道具を挙げてみます。

・メジャー

これは、家具などの採寸に使うわけですが、図面通りのサイズであるかも確認できます。

・デジタルカメラ

指摘箇所を保存しておくことができます。再内覧会で補修後の確認をするときに、補修前の写真があれば参考になることもあります。

・スリッパ

内覧会の時点では、まだきちんと清掃されておらず室内が汚れていることもあります。特に工事が遅延していた住宅では、ぎりぎりのタイミングで内覧会を行うことがあるため、スリッパがないとかなり汚れてしまいます。また、寒い時にはスリッパがないと長時間、室内に立っていることもできないです。

売主側でスリッパを用意していることもありますが、無い時に備えて準備していた方が無難です。

・筆記用具

指摘箇所などのメモに使用できますが、採寸結果を記録するときにも使えます。

・付箋

指摘箇所に貼っていくのですが売主側が用意していることが多いです。

しっかり準備して内覧会に臨みましょう。

5.内覧会の正しい情報

今は簡単に多くの情報が得られる時代です。多くの方がインターネットで内覧会の情報を得ているようです。でも、インターネットで情報収集すると消費者の不安を増幅させることが非常に多く書かれており、内覧会に関して不安になる方が多い。

実際に、インターネットで内覧会に関する情報をチェックしてみると、マンションの購入者同士で意見交換を行う掲示板があります。情報交換を行うには、有意義な場なのですが、何分、素人同士の意見交換だけに、あきらかに間違った情報もあるし、かなり誇張されていると思われる表現も目に付きます。

こういった情報の中から本当のことを拾い出すのは、結構、たいへんな作業です。書き込みしている方も悪意なく、純粋に誤解されていることが多いように感じられます。

内覧会に関する情報源としては、内覧会同行会社のホームページが非常に多いです。この手のサイトの場合は、次のことがよく掲載されています。

  • 内覧会での内覧会同行業者によるチェックポイント
  • 内覧会で使用する道具
  • 内覧会で見つかった悪い例

このうち、はじめの「内覧会のチェックポイント」ですが、おそらくどこの会社も掲載しているもの以外もチェックはしているはずです。現地で調査を行う上で目視できる範囲は、原則、調査対象になっていると予想されるし、何しろ建築物の部位は数が多すぎて、全てを書いていられないです。

次に、「内覧会で使用する道具」。これは、中にはたいそうな道具まで含まれていますが、これを見た一般消費者の中には、「こんな道具を使わないと、調査できないのか」と思わず、誤認してしまうのではないかと心配になります。実際には不要なものも含まれるのが実情です。

さらに、「内覧会での悪い例」。これは、実際にそんな事例もあるのですから、写真で見ると役立つものもあります。でも、誤解しないでほしいのは、極端に悪い例は、ほんの一部です。

実際に、専門家が内覧会に同行しても、マンションにおいてはかなり心配されるような不良箇所はそんなに多くないです。ただ、一戸建てでは重大な指摘が見つかることも少なくないので注意が必要です。

また、細かな補修箇所を指摘していくと相当な数になることはあります。「欠陥」と言えるような問題をマンション内覧会で発見することは、かなり可能性が低いです。このことをわかった上で自分たちで内覧会に対処するか、専門家に内覧会立会いを依頼するか判断してほしいものです。

ここで以下のことを確認しておきます。

  1. 売主(不動産会社)は売ることが目的で、売った後の対応が良くないとして、よく消費者が不安になっている。
  2. 内覧会同行会社は、同行サービスを受注することが目的であり、消費者の不安が大きいほど受注につながり易いために、過剰な表現が多くなりがちである。

以上の2点を念頭において、情報収集してみましょう。

内覧会は最後の砦なのか

6.内覧会は最後の砦なのか

マンションでも一戸建てでも、未完成物件を買う場合、売買契約を締結してから完成するまで待ち遠しいものです。

多くのマイホーム購入者の方は、物件探しをして売買契約を行うまでは、その過程を楽しんでもいるようです。しかし、売買契約を締結してから完成までの間に徐々に不安が大きくなっていくことがあるようです。

「本当に買っても良かっただろうか・・・」
「あのマンションでよかったのか・・・」

などと考えてしまうのですね。

そして、完成が近づくということは、同時に引渡し(=決済)も近づくということでもあります。決済の際に、住宅ローンの借り入れを行うのですが、何千万円もの大きな借金をすることでもありますから、余計に不安が大きくなるのではないでしょうか。

そんなときに、売主(または販売会社)から内覧会のお知らせが届きます。

不安が大きくなってきているマイホーム購入者にとっては、完成した建物をチェックすべき内覧会という新たな不安要素が生まれるわけですね。

そこで、インターネットで検索などして調べると、「内覧会は最後の砦」などというフレーズが目に飛び込んできます。余計に不安になりますね。思わず、専門家に内覧会へ立ち会ってもらいたいと思うのではないでしょうか。

ここで言いたいことは、内覧会というものを正確に知って頂きたいと言う事です。執筆者の会社では住宅購入者向けのコンサルティング業をやっておりますが、不安ばかりが先走ってしまっている方がたくさんいるように感じます。

果たして、内覧会は、本当に最後の砦なのでしょうか?

結論からいえば、それは少し事実と異なります。内覧会では、確かに引渡しを受ける前に購入者がマンションや一戸建てをチェックする機会であることは間違いないです。しかし、これが「最後」なのかと言えば少し微妙です。

その理由は以下の通りです。

  • 内覧会の後に「再内覧会」がある(確認会ともいう)
  • 入居後も不具合があれば売主が対処してくれることは少なくない
  • 引渡し後も定期点検などがあり不具合を指摘する機会がある

さらに、マンションの場合は、

  • 内覧会で発見する不具合は入居後でもスムーズに対処できることが多い
  • 内覧会では構造部分の確認ができない

ということも言えます。

但し、内覧会後の引渡しを受けてしまうと対応が悪化する会社や担当者がいることも事実です。内覧会の後の指摘でも簡単に対応してもらえそうなことでも、スムーズに対応してもらえないケースもあることは理解しておきましょう。

内覧会を自分たちだけで対応し、その結果、不安が残った場合に再内覧会(または確認会)に専門家に同行してもらうというのも1つの方法です。

専門家が内覧会に立ち会うメリットは、

  • 売主側に誤魔化されない
  • 素人が気づきにくい点も指摘することがある
  • 専門家がいると売主側も素直に対処する傾向にある

ということが挙げられます。これらから、専門家が内覧会に立会いする意味があることも確かです。しかし、全ての方に必要だとは思わないのです。内覧会の本当の意味と専門家に立ち会ってもらうことによる本当の効果を知ってください。その上で、

「自分にとって、本当に内覧会への専門家の同行が必要か?」

とよく考えましょう。

7.引渡し後に内覧会?(内覧会の開催時期)

マンションでも一戸建てでも内覧会を行うタイミングが問題となることがあります。内覧会とは、契約した一戸建て(またはマンション)が契約通りに建てられたか、施工不良などがないか、といったことを確認する機会です。

そして、問題なければ、引渡しと残代金の支払いを行うわけです。大事なことは、内覧会は引渡しの前に行うということなのです。引渡しの前の最後の確認ですね。

しかし、今までの経験上、

「引渡しの後に内覧会を行い、チェックして欲しい」

などという不動産会社がありました。実に驚くべきことです。

引渡し、残代金の支払いの後に内覧会を行い、指摘事項に真摯に対応していただけないケースもあります。気をつけましょう。

こういったケースは、12月や3月のように、年末・年度末に多発する傾向にあります。不動産会社が決算に間に合わせたいという身勝手な理由で強引に引渡しをするために起こっているのです。

もちろん、このようなことは、はっきりと拒否してください。

また、この内覧会を引き渡しの前とはいえ、引渡し日の直前に実施するのも良くありません。内覧会で指摘したことを補修してもらう為の期間が必要であり、さらに補修工事が適切に実施されたかを確認する必要もあるからです。

これらのことを考えると、内覧会は引き渡し日の10日以上か、2週間以上前に実施されるのが望ましいでしょう。なかには、内覧会の翌日に引渡しをして翌々日には引越し予定・・・、なんてケースもありました。

こういったことは、入居後のトラブルの基ですから避けるようにしましょう。内覧会・引渡し・引越しには、余裕のあるスケジュールで臨んでください。

8.一戸建てとマンションでは内覧会の重要度が大きく異なる

内覧会は、引渡しを受ける前に購入者が施工精度・品質をチェックできる重要な機会ですね。しかし、一戸建てとマンションではその重要度に違いがあります。

マンションの内覧会では、内装や設備といった表面的な部分のチェックが主となります。構造躯体をチェックしたくとも、ほとんどできないからです。

一方で一戸建て住宅であれば、主要構造部分のチェックも可能です(全てではありません)。たとえば、床や壁の傾きを調査することで、構造上の異常がないかどうかの判断材料とすることができますし、床下や屋根裏では柱や梁などの主要な構造部分を直接に調査することもできます。柱や梁を接合する金物も見ることができます。

主要な構造部分以外でも、床下では配管や断熱材なども確認できますね。マンションでは、これらをごく一部しか確認できません。

同じ内覧会における検査であっても、マンションと一戸建てでは確認できる範囲・項目が大きく異なるために、一戸建ての内覧会の重要度が高いと言えるのです(決してマンションなら適当に対応してよいという意味ではありません)。

引渡しを受ける前に、こういった大事なところをチェックしておき、売主や施工会社にしっかり補修を求めておきたいですね。

以上のように、一戸建てでは大事な項目をチェックできるわけですが、問題はそれを一般消費者にできるか?という点です。マンションに比べて一戸建ては専門家に内覧会立会い・同行サービスを依頼する価値は大きいですから、そういったサービスを検討するのも良いでしょう。

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