建売住宅が安いのは、単に「グレードの低い家だから」と思っていませんか?
たしかに建売住宅の中にはグレードの低い素材を使うことで、コストを抑えている物件もあります。
しかし建売住宅が安い理由は、それだけではありません。
建売住宅が安い理由は、実は11つもあるのです。
この記事では、建売住宅が安い理由を解説していきます。
先入観で建売住宅を選択肢から外す前に、ぜひチェックしてみてください。
建売住宅が安い11の理由
「建売住宅は安い材料を使っているから安い。」
その理由も間違いではありません。
しかし建売住宅といえど、ハウスメーカーによってグレード・性能はバラバラです。
大手ハウスメーカーが手がける建売住宅であれば、ローコスト注文住宅よりグレードが高い場合もあります。
ではなぜ建売住宅は安いのか?
その秘密は、販売方法・取引形態にあります。
1・モデルハウス・住宅展示場の経費がないから安い。
建売住宅が安いのは、注文住宅のようなモデルハウス・住宅展示場の経費がないからです。
モデルハウスを建設するには、数千万かかると言われます。
またモデルハウスを運営する費用、住宅展示場でのイベント代も必要です。
これらの経費は、家本体の価格に上乗せされます。
しかし建売住宅は、現地の物件を内覧するだけで、住宅展示場はありません。
つまり注文住宅でいえば、すべて「モデルハウス使用済み物件」。注文住宅でかかるコストがないため、安く販売できるのです。
2・間取り・仕様が規格化されているから安い。
建売住宅が安いのは、間取りが選べないからです。
規格化された間取り・仕様で建築されるので、施主(購入者)とハウスメーカーとの打合せコストがありません。
家作りの打ち合わせ期間は半年~1年(場合によっては2年~)と長く、その間に行われる打ち合わせコストはハウスメーカー負担です。
しかしハウスメーカーが負担しているコストは、最終的に家の価格に上乗せされます。つまり打ち合わせのコストは、施主が払っているのです。
その点、建売住宅はすでに完成した家を買うだけですので、余分なコストを払う必要がありません。
3・土地を安く購入しているから安い。
建売住宅が安いのは、土地が安いからです。
建売住宅の建築会社は、広い土地をまとめて購入します。そのため地主との交渉に強く、相場よりも安く買えるのです。
一方注文住宅では、購入するのは家1軒分の土地だけ。よくも悪くも相場通りの価格となります。
建売住宅と注文住宅の価格のちがい。これは土地の安さとも言えます。
4・大量に販売しているから、1軒当たりの利益が低い。
建売住宅の販売方針は、大量販売です。
グレードの高い1軒で儲けるのではなく、均質な家の量産によって利益を稼ぎます。
そのため建売住宅は、1軒当たりの利益が低いです。
利益とは、その会社の利益(儲け)であって、利益をいくら払おうと、家のグレード・品質には関係ありません。
「値引きで削っているのは会社の経費ではなく、利益」と考えると、イメージしやすいでしょう。
5・建築して時間が経つと値引きされるから安い。
建売住宅が安いのは、買う人を見つける前に家を建ててしまうからです。
そのためすぐに購入者が見つからないと、徐々に値下がりしていきます。
建築して1年が近くたつと「未入居物件」となり、新築と呼べなくなります。
「未入居物件」になるとますます買い手が見つからないため、ハウスメーカーはギリギリの値引戦略を展開します。
対して注文住宅は、オーダー(契約)を受けてから建築するので、建売のような値引きの必要性がありあせん。(ただし契約欲しさに値引き合戦をする場合もあります)
分譲直後、建築直後であれば、建売住宅の価格もそう安くはありません。
しかし建築してからちょっと待つだけで、建売住宅の価格はみるみる値引きされていきます。
6・工期が短く、人件費がかからない。
建売住宅の間取り・仕様は規格化されています。
複雑で特殊な設計、工法がなく、建築する側にとっても作業しやすい家になっています。
そのため工期が短縮できるので、人件費がかかりません。
注文住宅では1軒ごとに違った間取りであり、こだわりのデザイン・特殊な工法があると、工期は長くなりがちです。
また建設途中での追加工事、やり直しが発生すると、その分工期は長くなり、人件費がかさみます。
7・作業者に安定的に仕事をまわすことで、人件費を削減。
建売住宅のハウスメーカーは、多くの現場を抱えています。
そのため現場作業者に安定的に仕事をまわすことで、人件費(単価)を削減しているのです。
年間建設数の少ない工務店では、どうしても仕事が途切れがちになってしまいます。
これでは単価が高くても、作業者は十分な収入は確保できません。
「人件費を削減」とだけ聞くといい印象はありませんが、「安定的に仕事を発注し、安定収を作っている」という面も考慮するべきでしょう。
8・資材を大量発注するため、原材料費が安い。
建売住宅の間取り・仕様は似ていることが多く、使われる資材も同じものが使われがちです。
そのため資材の大量発注が可能になり、原材料費をコストカットできます。
また建売住宅のハウスメーカーでは、資材メーカーと直接取引することで、中間マージンをカットしています。
これは取引数量(年間棟数)の少ない地元工務店(注文住宅)では難しいことです。
パワービルダーに特有の安い理由
建売住宅のハウスメーカーの中には、年間に何万棟も建築している、「パワービルダー」と呼ばれる会社があります。
パワービルダーは、安い建売住宅をさらに安くした建売住宅が特徴です。
以下、パワービルダーの建売住宅によく見られる「安い理由」を解説していきます。
9・外装・内装のグレードが低い。
パワービルダーの建売住宅では、グレードの低い外装・内装が使われていることが多いです。
グレードの低い外装
- サイディング外壁
- コロニアル屋根
- アスファルトシングル屋根
- 通常のペアガラスのみ
- アルミサッシ
グレードの低い内装
- ビニール壁紙
- MDFのフローリング
- グレードの低いキッチン
- グレードの低いトイレ
- グレードの低いお風呂
※MDFとは、木材のクズを圧着したもの。
もし住宅展示場でモデルハウスを見学した経験がある方であれば、パワービルダーの外装・内装はとても貧弱に見えるでしょう。
家賃の安い賃貸アパートと、さほどグレードが変わりません。
ただし、その分価格は安く、注文住宅の半額程度で販売されている物件もあります。
10・必要な設備もオプション扱いだから安い。
パワービルダーの建売住宅では、必要な設備もすべてオプション扱いとなっています。
パワービルダーでオプション扱いの設備
- 網戸
- カーテンレール
- シャッター
- 照明
これらの設備抜きで生活するのは難しく、オプションを加えて入居しなくてはいけません。
オプションを加えると、一般的な建売住宅と価格が変わらなくなるケースもあります。
11・アフターフォローが簡略化されているから安い。
建売住宅、とくにパワービルダーの建売住宅では、購入後のアフターフォローが簡略化されています。
簡略化されているアフターフォロー
- 購入者専用のコールセンター
- 自社メンテナンスの有無
- 購入後の定期メンテナンス(有料、無料問わず)
- 購入後の担当者による定期訪問
一生に一度の買い物をしているにも関わらず、パワービルダーのアフターフォローは随分あっさりしています。
購入後に担当者が訪れることもなく、むしろ契約したら担当者と疎遠になってしまうケースもあります。
まとめ:建売住宅が安いのは、販売方法・取引形態の違いから。
建売住宅が安く販売されるのは、販売方法・取引形態による部分が大きいです。
建売住宅は量産体制で販売しているため、1軒当たりの利益を低く設定できます。
さらに築1年で売り切る必要があるため、大胆な値引き戦略が行われます。
その結果、注文住宅よりも安く販売できるのです。
もちろん、グレードの高い注文住宅のような素材を使わないことで、コストカットをしている面もあります。
ですがそれは建売住宅のローコストの一部分であることを知るべきでしょう。
「建売住宅の安さの秘密は、ローコストを支える販売体制にある。」
建売住宅の安い理由が気になったら、「注文住宅でかかっていて、建売住宅でかかってない経費」に注目してみてください。