住宅のプランを検討する際、採光を考慮してトップライトを採用しようと考える人もいます。トップライトのある家に憧れている人もいますが、そのメリットだけではなくデメリットも把握してから判断したいものです。デメリットの詳細は後述しますが、決して軽視できないものです。
ちなみに、トップライトとは、屋根面に設けられる窓のことで天窓とも呼ばれています。例えば、2階建て住宅の2階の屋根に設置されることもあれば、2階建て住宅の1階部分の小屋根に設置されることもあります。
家づくりで後悔しないため、トップライト(天窓)のメリット・デメリットと注意点をここで学んでおきましょう。
1.トップライト(天窓)のメリット
まずは、トップライトのメリットをあげて解説します。
1-1.採光
最大のメリットは採光と言ってよいでしょう。明るい家にしたいという人がトップライトを前向きに検討しています。狭小地などで建物の形状から採光を得にくい場合には、採光面の問題を解決するための1つの対策としてトップライトが採用されることがあるのです。
トップライトは、北向きであったとしても明るさが望めますから、設計者とよく相談しながら、その設置位置を考慮しましょう。
明るいということは、それだけ照明を使用せずに済むことがありますから、電気代の節約になることもあり、これもメリットの1つと言えます。
1-2.吹抜けにすれば階下まで採光がある
トップライトの設置位置は重要です。リビングや寝室に設置することを考える人も多いですが、吹抜けや階段室にトップライトを設置することも考えてみるとよいでしょう。
そのメリットは大きく、階下まで光を採れるのです。例えば、2階建ての階段室にトップライトがあれば、1階まで階段や廊下まで自然光を採りいれることが可能です。たとえ階段に窓がなくても明るい昼間なら、照明を付けずに階段を利用できます。廊下まで明かりが届くような設計ならば、暗くなりがちな廊下まで明るくできますね。
1-3.通風
通風もトップライトを採用する大きなメリットだと言えます。温かい空気は上へ移動していくので、トップライトを開閉式のものにして開けておけば、壁面の窓から入った空気が上へ流れていき、自然と換気することができます。
24時間換気システムの利用が当たり前になってきていますが、自然と換気できる設計と言うのも魅力的ですね。
1-4.プライバシー性が高い
壁面の窓は隣から見えやすいため、常にカーテンで室内側を見られないように隠す必要がありますが、屋根面にあるトップライトならば、外部から見えないため、プライバシー性が高いと言えます。もちろん、すぐ近くのマンションなどから見えない位置であるかどうかは事前に確認すべきですから注意してください。
1-5.開放感
トップライトのメリットとして開放感を挙げる人は多いです。プライバシー性とも関係がありますが、カーテンをせずに開放したままにしておけるため、開放感を感じやすいです。その窓の面積によっては、相当な開放感を感じることになるでしょう。
空気がそれほど汚れていないエリアならば、寝室のベッドの上にトップライトを配置することで、寝ながら開放感を感じつつ星空を眺めるなんてこともできます。贅沢ですね。また、浴室に採用する事例もありますが、これも想像するだけでワクワクしませんか?但し、換気をきちんとするよう注意が必要です。
1-6.建築基準法の採光面積不足の対策になる
建築基準法では、居住のために使用する居室とするには、床面積の1/7以上としなければならないことになっています。しかし、この条件を満たせない部屋もあり、その場合は居室とすることはできず納戸などと表示されることが多いです(実際には居室として使用している人も多いです)。
これを居室とするため、トップライトを設ける対策が有効です。トップライトは3倍の面積として扱われるため、採光に必要な面積要件を満たしやすいのです。
2.トップライト(天窓)のデメリット
次にトップライトのデメリットをあげていきます。そのデメリットとともに注意点も紹介します。
2-1.夏は非常に暑い
夏になれば非常に暑く、これが最大のデメリットだと感じる人は多いでしょう。メリットである採光や開放感を重視して大きなトップライトを設置すると、それだけ暑く感じやすいですから注意しなければなりません。
対策として、ガラスを遮熱性・断熱性の高いものにしたり、可動式の遮光カーテンやブラインドを設置したりすることは必須だと言えます。ただ、それでも夏の強い日差しには不十分だと感じる人もいますから、慎重に検討しましょう。
また、暑さだけではなく、直射日光が邪魔になることもあります。読書スペースで眩しいと感じることもありますし、テレビを見る方向と光の入る方向の検討もしておかないと眩しいと感じることがあります。さらに、日焼けの心配もして、UVカットについても検討しておきましょう。
2-2.ガラスの清掃が困難
室内側からガラスの清掃をするにも、簡単には届かない位置になりますから、梯子をかけるなどの対応が必要となります。
そして、室内側よりも外部側については汚れやすくて清掃すべき機会も多くなりますが、その清掃も困難です。自分で屋根へ上がって清掃するのは危険ですから、清掃業者へ依頼することも検討することになりますが、その費用がかかることはデメリットです。
清掃しても黄砂ですぐに汚れてしまうこともあり、綺麗な状態を保ち続けるのは難しいことが多いです。
2-3.雨漏りが多い
トップライトの代表的なデメリットは雨漏りリスクが高いことです。雨漏りは開口部周りからすることが非常に多いのですが、トップライトは壁面の窓よりも発生リスクが高いです。
そのため、建築会社もトップライトの施工を嫌がることがあります。建築会社は雨漏りについて保証しなければなりませんから、嫌がるのも無理はないかもしれません。
注意点は、防水工事を適切に丁寧に行ってもらうことです。
ちなみに、開閉式のトップライトを開けたまま夕立にあって雨水が大量に室内へ侵入したという事例もありますから、普段から注意しておくべきですね。
2-4.結露が生じることがある
普段から結露に悩んでいる人は多いでしょう。結露の多くは窓や窓枠に生じていますが、トップライトも例外ではありません。特に冬場の北側にあるトップライトは結露水が滴ることもありますから注意が必要です。
手に届くところの窓と異なり、簡単に結露を拭くこともできないですから、対策を考えておいた方がいいでしょう。たとえば、窓を開閉しなくてもよいのであれば、トップライトの下にFIX窓を設置する対策もあります。
2-5.トップライトの設置コスト
屋根面に窓を設置するわけですから、全面を屋根にしている場合と比べて建築費用が高くなるのは当然のことです。雨漏りしたときのメンテナンス費用もかかりますが、設置するときもコストがかかわるのです。
3.住宅にトップライト(天窓)を採用するときのその他の注意点
トップライト(天窓)を採用するときの注意点について、既に挙げたもの以外についても説明しておきます。
3-1.網入りガラスに要注意
最近はそれほど網入りガラスを採用することはないですが、もし採用した場合には別膨張によりガラスが割れてしまうことがあるので注意が必要です。ガラスと網(ワイヤー)の熱膨張率が異なるために、膨張の差が大きくなったときに割れてしまうことがあるのです。
3-2.トップライトの代わりにハイサイドライトが有効
トップライトは屋根面に設ける窓ですが、屋根ではなく壁面の上部(屋根に近い位置)に窓を設けるという方法があります。これをハイサイドライトと呼びます。
トップライトと同じく高い位置にあるため、開けておけばトップライトと同じで通風に有効です。階段室の上に窓(ハイサイドライト)を設けておけば、暖かい空気が上がっていってその窓から出ていき、階下の窓から空気を取りいれることができます。
ハイサイドライトから取り入れる明かりは壁面にあたるなどして、柔らかい日差しになりますから、気に入る人も多いでしょう。
トップライト(天窓)のメリット及びデメリットについて解説してきましたが、デメリットが大きいと感じる人が多いかもしれません。リスクが小さくないだけにそのような印象を受けやすいかもしれませんが、必ずしも否定的に考える必要はありませんから、設計者とデメリットへの対策について相談しながら検討してもよいのではないでしょうか。