中古住宅を買おうとしたとき、検査済証のない物件だということがよくあります。売買契約の直前になって不動産業者から「この物件には検査済証がありません」「検査済証のない家なんて、この時代の住宅ではよくあることです」と説明をうけてビックリすることもあるでしょう。
検査済証がなくても当たり前だ、大丈夫だというニュアンスで説明を受けたけど、本当に問題ないのだろうか?この家は買ってもよいのだろうか?と心配する人向けに、検査済証の無い中古住宅について解説します。また、その解決法の1つとしてホームインスペクション(住宅診断)を活用する方法を解説します。
1.検査済証とは何か?
検査済証と聞いてピンとくる人とそうでない人がいるでしょう。まずは、ここから理解しておく必要があるので説明しておきます。
1-1.建築確認申請から完了検査まで
住宅を建てるときには、工事開始前にこのような家を建てるということを特定行政庁や確認検査機関に設計図を提出して申請しなければなりません。これを建築確認申請と言います。その後に着工し、工事の途中で中間検査を行い(実施しない場合も多い)、建物が完成したら完了検査を行います。
この最後の完了検査を無事に終えた住宅に交付されるのが、検査済証です。
この建築確認申請、中間検査、完了検査は、建築基準法で定められたものですが、検査自体は非常に簡単なものですから、これだけで建物の安全性や施工品質が確認されるわけではありません。法基準の最低ラインは満たしたものであることを確認するだけなのですが、実際にはその確認も一部分のみであるために検査済証のある住宅でも建築基準法に適合していない住宅がいくらでもあります。
1-2.住宅以外でも建築確認や完了検査が必要
このコラムは住宅を対象として記載していますが、この建築確認申請や完了検査は住宅以外の建築物も同様です。用途を問わず対象となっているわけです。
2.検査済証の無い中古住宅
検査済証が何であるかわかったところで、本題に入りましょう。検査済証の無い中古住宅でも問題ないのか、購入しても大丈夫なのか、という点です。
2-1.検査済証の無い中古住宅は多い
検査済証の無い中古住宅は少なくありません。いや、多いと言ってもよいでしょう。
不動産業者から「検査済証のない家なんて、この時代の住宅ではよくあることです」と説明を受けている人もいますが、確かに多いのは事実です。地域にもよりますが、2000年前後までに完成している住宅では、検査済証がない物件は非常に多いです。特に、都市部の土地面積が20坪前後くらいまでの住宅では非常に多いです。
検査済証がないということは、完了検査を受けて不合格になってそのままの住宅であるか、そもそも完了検査を受けていないかのいずれかです。実態としては後者の方が多く、建築業者や施主が完了検査を最初から受ける気もなかったというケースです。
そう聞くと驚くところですが、そのようなことが当然のようになされていた時代があったわけです。
完了検査を受けず検査済証がないわけですから、一般の人から見れば、大丈夫だろうかと心配します。検査済証のない住宅を肯定するつもりはありませんが、新築当時の施工品質やその後の建物の状態とはあまり関係ないことなので、しっかりした住宅も多いです。
逆に検査済証のある住宅であっても、完了検査が簡単なものだけに、不具合の多い住宅はいくらでもあります。つまり、検査済証の有無だけでは建物の状態や新築当時の施工品質を判断できないわけです。
2-2.ホームインスペクション(住宅診断)で建物の状態を確認すればよい
それでは、どのようにして建物の状態を確認するのかというと、ホームインスペクション(住宅診断)を利用する方法が有効です。建物の専門家である建築士に診断してもらい、補修すべき点などがないかアドバイスしてもらうのです。
ホームインスペクション(住宅診断)にもいろいろありますが、不動産業者が斡旋しているような建物状況調査は最低ラインの調査しかしていないので、できれば買主の立場でインスペクション(診断)してくれる業者へ依頼しましょう。
売主が事前に実施しているホームインスペクションも不動産業者が斡旋する建物状況調査であることが一般的ですから、別途、自分で依頼した方が無難です。
2-3.建築確認申請時と建物が変わっていると心配
「2-1.検査済証の無い中古住宅は多い」で、検査済証の有無だけでは建物の状態や新築当時の施工品質を判断できないと書きましたが、そもそも完成当時に検査済証を取得していても、その後に建物の形状が変わってしまっている住宅もあるので注意してください。
これまでの所有者等が、リフォームしている中古住宅は多いですね。リフォームと言ってもいろいろありますが、壁の位置を変更したり、壁を無くしたり、追加したりする工事をしていると建物の大事な構造部分が変わっている可能性が高いです。
増築している住宅も同様で、増築した部分や元の建物との接合部分あたりに構造的な問題が生じていることはよくあることです。
構造部に関わる工事をする場合、本来ならば構造の安全性を確かめて所定の手続きを経て工事するべきですが、リフォーム業者が安易に考えて構造の安全性を確認せずに工事していることがあるのです。
新築当時の設計図を入手できたなら、その図面と現状の建物を比較して壁の位置や形状が変わっているところがないか調べてみるとよいでしょう。所有者が何度か変更になっている住宅なら、直近の所有者が、変更があった履歴を把握していないこともあります。
もし、建物の形状や壁の位置が変更になっていた場合で、変更後の設計図(構造図面)があるならば、専門家に耐震診断で確認を依頼するとよいでしょう。その変更が原因で耐震性が著しく劣ってしまっている住宅もありますから有効なものとなります。
3.検査済証の無い中古住宅のまとめ
購入時に検査済がないからと言って、それだけに購入すべきではないとまでは言えません。そのように判断すると都会では少し古い中古住宅の多くが購入対象外となってしまう問題があるからです。
しかし、建物の状態は気になるところですから、ホームインスペクション(住宅診断)を使って購入判断の参考にするとよいでしょう。