ZEHの導入で頭を悩ますのが、「結局ZEHはお得なの?」ということ。
最大125万円(+60万円)※の補助金がもらえるものの、ZEHを導入するには初期費用(200~300万円)がかかります。
補助金だけでZEHに対応するのは難しく、手持ちの住宅資金からの捻出が必要です。
ZEHを導入することで毎月の光熱費は下がります。
しかしZEH導入でかかった初期費用は、下がったランニングコストで回収できるのでしょうか?
この記事ではZEH導入にかかる初期費用をもとに、「ランニングコストでペイできるのか?」、シミュレーションしていきます。
結局ZEHはお得なのか?導入すべきなのか?導入のヒントになれば幸いです。
※ZEH+Rの条件を満たし、蓄電池システム・太陽熱利用温水システムなどを導入した場合。
ZEHの導入で増える初期費用はいくら?
ZEH補助金の対象となるためには、高断熱・高気密化し、太陽光発電の設置が必要です。
そのためZEHの導入にかかる初期費用は、「一般住宅に比べ、+200~300万かかる」、といわれています。
【ZEHに必要な初期費用】
- 高断熱化・高気密化の費用(断熱材・気密処理)
- 太陽光パネルの設置費用
- エコキュートなどの省エネ設備費
- HEMS※のエネルギー管理システム
- 電気自動車の充電設備
※HEMSとは?
ハウス・エネルギー・マネジメント・システムの略。家庭で使うエネルギー(電気・ガス)を管理するためのシステム、ならびに管理モニタのこと。家電製品とつなぐことで、節電・自動制御できる。
ZEHの補助金は最大で125万円(+60万円)。ただしこの金額はZEHよりも厳しい条件をクリアした、「ZEH+R住宅」での金額。ZEHだけの補助金は70万円です。
補助金だけで初期費用をまかなうのは難しく、負担の少なくなったランニングコストでペイできるのか?がポイントになります。
ZEH導入で安くなるランニングコストは?
ではZEH導入で負担が軽くなるランニングコストはどのくらいでしょうか?
何年で初期費用をペイできるか、簡単にシミュレーションしてみましょう。
理論的には光熱費がゼロになる。
ZEHとはゼロ・エネルギー・ハウス。
つまり理論的には、「使うエネルギー≦創るエネルギー」となり、光熱費がゼロになる住宅のことです。
戸建ての4人家族の光熱費の目安を月20,000円(年間平均)として計算すると、ZEHによる光熱費の削減効果は、
「月20,000円 × 12カ月 = 24万円」
「年24万円 × 10年 = 240万円」
年間24万円。10年で240万円の節約効果があるといえます。
ただしZEHの「光熱費ゼロ」の意味は、「毎月支払う光熱費がゼロ」ではありません。
設置した太陽光発電による余剰電力の売電を加味し、年間をトータルして「使うエネルギー≦創るエネルギー」とすることです。
ですので、月によっては光熱費が発生します。
太陽光発電による売電。
ZEHでは太陽光発電により、エネルギーを創出します。
ZEH補助金事業を管理しているsii(環境共創イニシアチブ)による公表データによると、発電による収支の平均は「年間3万円の黒字収支」です。
仮に同じ条件で10年間売電できたとすれば、
「年3万円 × 10年間 = 30万円」
10年で30万円の売電収入が見込めます。
ただしこの数字はあくまでも平均値です。太陽光発電は、設置した地域・立地による影響を強く受けます。
- 地域ごとの気候(夏に晴れが多いと、発電量が増える)
- 立地ごとの日照条件(南向きがもっとも発電量が増える)
これらの条件を加味すると、売電による収支は過度の期待はできません。
ZEH設備の更新費用がかかる。
太陽光パネルは、定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンスで大きな割合になるのが、パワーコンディショナーの交換です。
パワーコンディショナーとは、太陽光パネルで発電した電気を家庭で使える状態に変換する精密機器。
太陽光発電のパワーコンディショナーは、およそ10年に1度の交換が推奨されています。
現在では1回の交換で30~40万円かかりますが、将来的には太陽光パネルと同様に値下がりする可能性が高いです。
ただしHEMS、エコキュートが故障したときも、更新費用がかかります。
家電製品の寿命は一般的に10年が目安。10年おきに設備更新を考えると、ZEHを導入したあとの維持費も安くはありません。
ZEH導入はお得なのか?
ZEHによるランニングコストを単純にシミュレーションしてみると、およそ10年で初期費用がペイできる・・・というのが1つのラインでしょう。
しかしこの結果だけで、ZEH導入はお得だといえるのでしょうか?
得する可能性はある。ただし本当に得するのは、初期費用をペイしてから。
ハウスメーカー・工務店の一部では、過剰にZEHのメリットを強調し、「初期費用は光熱費ゼロ・売電でペイできる」と営業しています。
たしかにZEHにすることで光熱費を抑え、売電収益で初期費用をペイできる可能性もあるでしょう。
ですが初期費用をペイするまでに、早く見積もったとしても10年はかかる見込みです。
ペイするまでの10年間は得しているように感じますが、初期費用を回収しているだけ。
つまりZEHの導入で本当に得するのは、最低でも10年先。初期費用をペイして、ようやくスタートラインに立てるのです。
「投資案件として、ZEHが優秀かどうか?」
これは人によって判断が分かれるところでしょう。
天候不順などでシミュレーションより発電量が下がれば、初期費用をペイするまでの期間は長くなります。
「お得」だけに焦点を当てるなら、外壁・屋根材をメンテナンスフリーの素材にして、メンテナンス代(10年に1回150万円~/サイディング外壁・スレート屋根)を節約した方が賢いかもしれません。
災害リスクまで考えると、得することは増える。
ただしZEH対応にすることで、
- 断熱性、気密性の高い家になるので、快適な家に住める。
- 断熱性、気密性の高い家になるので、ヒートショックの予防になる。
- 太陽光発電があるので、災害で停電したときのリスク回避になる。
というメリットがあります。
ランニングコストの損得だけでなく、災害へのリスク回避まで含めると、ZEH対応にする意味も変わります。
「ZEH対応にする費用は回収できないかもしれないが、ZEH補助金のあるうちに太陽光をつけておくか・・・」
これぐらいの温度感でZEH導入を検討すると、判断を間違えないでしょう。
ZEHの建築費とランニングコストのまとめ
ZEH導入による初期費用は、およそ200~300万円が相場といわれています。
それに対し、ZEHによるランニングコストの削減効果は、およそ年間27万円(太陽光の売電収入含む)。
単純なシミュレーションでは、約10年で初期費用がペイできる計算です。
しかし実際には、
- 太陽光発電が想定より下回った。
- 導入した設備が想定より早く故障した。
などのリスクがあり、初期費用をペイするまでに想定より時間がかかるかもしれません。
一部ハウスメーカー・工務店が過剰にPRするほど、ランニングコストに期待するのは危険でしょう。
ZEHを導入するときは単純な損得のシミュレーションよりも、ZEHにすることによる、
- 毎月の光熱費の負担が少ない、エコ住宅に住める。
- 断熱性、気密性が高く、快適な家に住める。ヒートショックの予防になる。
- 太陽発電があるので、災害時のリスク回避ができる。
などのメリットも加味すべきでしょう。
「ZEH補助金を利用して、ランニングコストの少ない、快適な家にお得に住める。」
ZEH導入は損得だけでなく、自分のライフスタイルに合わせて検討してみてくださいね。