理想の家づくりを目指して、間取り・仕様などについて悩みながらもプランを決めて、着工・完成まで進んだ後は引渡しです。その引渡しも無事に終えれば、いよいよ入居ですね。ただ、この引渡しを受けた後、建物の施工不良や不具合を施主が発見し、建築会社との間で建築トラブルへ発展していくこともあります。
新築住宅の引渡しの後に施工不良などを見つけたときは、施主が適切な対応方法をとらないとトラブルが長期化したり、満足できる形で解決できなかったりしますから、慎重に注意して進めてください。
1.施工不良・不具合を見つけた後の対応の流れ
引渡しの後、生活しているなかで、雨漏り・結露・設備からの漏水・傾き・歪みなどの問題が見つかったときは、新築工事の施工不良の可能性を検討しなければなりません。適切に対応するため、こういった問題を発見した後の流れについて把握しておきましょう。
<施工不良・不具合を発見した後の流れ>
- 施工不良・不具合の記録
- 建築会社と設計者に連絡
- 建築会社と設計者による確認と調査
- 建築会社と設計者から補修方法の提案
- 補修方法の提案内容を検討
- 補修工事の実施と補修後の確認
以上の流れを基本として対応していくことを心がけましょう。では、それぞれの項目について以下で補足説明します。
1-1.施工不良・不具合の記録
何らかの施工不良や建物の不具合を発見したら、最初に行うべきことはその状況を記録に残すことです。発見した日時、天候、場所(例:1階キッチンの床)、発見したときの状況・経緯を忘れないようにメモします。
そして、写真撮影しておくことも大事です。例えば、壁や天井から水滴が落ちてきたときには、まず拭いてしまいたくなるところですが、先に撮影しておくことを推奨します。但し、感じた異常が臭いや音ならば写真ではわかりませんので、撮影する必要はないでしょう。
1-2.建築会社と設計者に連絡
記録を残した次にすることは、その住宅を新築したときの建築会社や設計者に連絡することです。基本的には建築会社への連絡となりますが、症状によっては設計者にも見てもらった方がよいこともありますから、建築会社のみに固執せず設計者への連絡も考えましょう。
1-3.建築会社と設計者による確認と調査
できる限り早いタイミングで建築会社や設計者に現場へ来てもらい、状況確認してもらうようにしましょう。
現場確認してもらう際、施主が忙しくて確認しているときの様子を見ておらず、後からきちんと見てもらっていたのか不安になっている人もいます。後の対応に不満を持ったときに、いろいろな疑心が湧いてくることがありますから、建築会社等の確認や調査にはきちんと立ち会って、何を見ていたのか、何をしていたのか把握しておいてください。
1-4.建築会社と設計者から補修方法の提案
建築会社等の現場確認や調査によって、見つかった症状・問題が施工不良等によるもの(建築会社が責任を負うべきもの)だと確認された場合、その補修方法を提案してもらうわけですが、その費用負担が建築会社であることを確認しておきましょう。
また、補修方法等の提案内容については、必ず書面で提示してもらうようにしましょう。工事の規模によっては、工事内容だけではなく、補修計画(工程など)まで提示してもらうとよいでしょう。
書面による提示を求めても、建築会社の社名や担当者名が明らかでないものが提出されることがあります。後で責任の所在が不明瞭になることがありますので、社名と担当者名を明記してもらってください。
1-5.補修方法の提案内容を検討
提示された補修内容について、施主側で十分に検討しなければなりません。見つかった症状の発生原因、被害範囲についてきちんと説明を受け、わからない点は遠慮せずに質問して納得できるまでやりとりしてください。その上で補修方法・計画が適切なものかどうか判断しましょう。
特に被害範囲は天井や壁を解体しないと確定できないこともよくあります。建築会社は簡単な補修で済ませようとすることが多いですが、それでは隠れた箇所の被害が残り、建物の耐久性に影響を及ぼすこともあります。被害範囲の特定まできちんとして頂くよう要請しましょう。
1-6.補修工事の実施と補修後の確認
補修工事が始まれば、その工事途中について施主が確認しておくべきです。また、解体した箇所も補修完了時には見えなくなるわけですから、建築会社に写真撮影を依頼しておき、記録を残すよう要請しましょう。もちろん、補修工事の完了後には補修完了報告書を提示してもらいましょう。
建築会社の対応が良くないときや不安があるとき、工事規模・範囲が大きいときなどは、第三者の専門家に原因調査や被害範囲の調査を依頼することも考えましょう。利害関係のない立場から、建築会社の提示する補修内容が妥当かどうか意見してもらうことは施主の安心につながるでしょう。
2.建築トラブル時に絶対にやってはいけないこと
建築トラブルは、前述した流れで適切に対処できれば、被害を小さく抑えることができますが、対応に不適切なところがあるとトラブルを大きくしてしまうこともあります。そこで、ここでは絶対にやってはいけないことをお伝えします。
2-1.施工不良・不具合を勝手に補修してはいけない
日曜大工が得意な人がやりがちなミスが、自分で補修してしまうことです。壁のコーナー部分に隙間が出てきたので自分で補修したという人がいました。しばらくして同じ症状が出てきたので建築会社に指摘したところ、最初の補修方法が悪かったと言って言い訳に使われてしまったのです。
「これくらいなら自分で治せる」と思っても実際にやってしまうと話を複雑にしてしまうリスクがあるので、細かなことでも建築会社に伝えて対応を求めた方がよいです。
2-2.新築した建築会社以外に補修工事を発注してはいけない
住宅を新築もしくはリノベーションしていたときから、関係が良くなかったというケースでは、よく聞く失敗談があります。それは、別の工務店に補修してもらった後にトラブルが再発し、元の会社も補修依頼した会社も責任逃れをして対応してもらえなくなったという話です。
当初の建築会社を信用できないから、もしくは関係が良くないからといって、他の会社に補修してもらうと、問題が再発したとき、当初の会社は「補修工事に問題があったからだ」と主張し、補修した会社は「当初の工事に問題があったからだ」と主張することがあります。
責任逃れに使われないようにするため、また責任を明確にしておくため、あまり関係が良くなくても一貫して当初の会社に対応を求めていく方がよいのです。
2-3.補修工事を建築会社に任せきりではいけない
建築会社に対して信用があるので、補修工事を完全に任せきりにして、施主が現場に立ち会わないことがありますが、そのようなケースでも後から後悔したという人の話を何度も聞いています。
ある住宅で雨漏りが生じたので補修してもらったのですが、しばらくして同じ場所で雨漏りが再発しました。再度、補修してもらったものの、またしても再発(3度目)したのです。対応に問題があるのだと気づいて、補修工事に立会ったところ、解体した壁の中で木材が腐食し大量にカビが発生していました。
状況から見て以前の工事の際にも腐食やカビがあったと思われるのですが、補修するのが大変だから黙っていたようなのです。信用が崩れたのは言うまでもありません。
信用していたとしても、施主としてすべき確認作業はしておくべきだと理解しておいてください。
以上、引渡しの新築住宅で施工不良などが見つかったときの対応の流れや注意点です。こういったトラブルにあわないことが理想ですが、避けきれないこともありますから、ここに書かれていることを参考に対応してみてください。