東京や大阪などの都市部で一戸建て住宅を取得する場合、どうしても敷地面積が20坪前後までの土地に3階建て住宅を建てるということが多くなりがちです。都心近くの便利な所へ住むならば、マンションか3階建て住宅という選択肢は多いものですね。
狭小地に3階建て住宅を建てて暮らしてから後悔しないために、そのメリットやデメリットを考えてみましょう。
1.狭小地の3階建て住宅で暮らすメリット
敷地面積が15坪や20坪程度の狭い土地に建築される3階建て住宅で暮らすメリットとしては、どのようなことがあるのでしょうか。代表的なものとして、以下の3点をあげておきます。
- 都市部でもマイホームを持ちやすい
- 構造計算されていて構造の根拠が明らかである
- シンプルで効率的な生活ができる
この3点について説明します。
1-1.都市部でもマイホームを持ちやすい
最大のメリットは、都心部へのアクセスのよい立地にマイホームを持ちたい人にとって、手を出しやすい価格帯であるということです。
もともと、便利な立地で土地を所有しているのであればよいのですが、新たに土地を購入してから家を新築するのであれば、土地購入費の負担は非常に大きなものになります。都心近くとなれば、その立地次第では建物の倍以上もの大きな投資が必要なことも多く、あまり大きな土地面積を望むことができません。
土地が狭くなれば、その分、その土地の有効活用を優先的に考えて3階建てにすることは、当然の流れになっています。
「都市部でもマイホームを持ちやすい」と書きましたが、それでも高額な投資になりますから、あくまで2階建てに比べれば3階建ての方がマイホームを持ちやすいということです。
1-2.構造計算されていて構造の根拠が明らかである
住宅を新築するときには、建築基準法に基づいて建築確認申請をして、その承認を得た建物を建築することになります(住宅以外も同じです)。その際、3階建て住宅に関しては構造の安全性を構造計算によって確認するのですが、2階建てでは構造計算までは必須とされていません。
現実に、2階建て住宅では構造計算をせずに建築される住宅が非常に多いです。3階建てでは、構造計算されるために構造の根拠について安心感があることがメリットだということができます。
但し、これは必ずしも2階建てより3階建ての方が安心だというわけではありません。3階建ての方が構造の根拠が明確であるということです。
もちろん、2階建てでも構造計算はできるので、できれば設計する建築士に構造計算を要望されてはいかがでしょうか。
1-3.シンプルで効率的な生活ができる
ある程度、面積が限られる建物であることは、逆に言えばシンプルな生活や効率の良い生活をすることができます。
もちろん間取り次第ではありますが、生活動線を短くできたり、掃除が楽だったりというメリットがあるわけです。狭小住宅ゆえのメリットですね。
2.狭小地の3階建て住宅で暮らすデメリット
次は、狭小地の3階建て住宅のデメリットをあげて解説します。
- 階段が急になり、高齢になると辛い
- 日照・通風がよくない
- 2階建てより建築費用の単価が高い
- 狭小地の細い3階建ては揺れやすい
- ビルトインガレージなら構造的に弱いことがある
代表的なデメリットとして以上の5点をあげてみました。これらを掘り下げてみましょう。
2-1.階段が急になり、高齢になると辛い
狭小地で3階建てにする場合、どうしても階段の勾配が急になりがちです。階段に割くスペースを抑えるためには、勾配を急にしてしまう必要があるのです。
急な階段は日々の利用が面倒だと感じることもありますし、何より高齢になってから上下階の移動をすることが億劫になります。場合によっては、体力的に辛い状況になる可能性もあります。
しかも、1階の一部を駐車スペースにするプランでは1階の居室スペースが狭く、2階や3階での暮らしがメーンとなりますから、階段の上り下りは必須です。若いときには問題なくとも、将来的には厳しくなることもあるため、将来の売却・買い替えのことも考慮しておいてはいかがでしょうか。
2-2.日照・通風がよくない
狭小地の3階建て住宅を建てる場合、その隣地も同じような3階建て住宅であることが多いです。地域によってはもっと高い建物が建築されることもあります。周囲の環境次第ではありますが、日照や通風という点においては不利な条件となることが少なくないことを理解しておきましょう。
新築する時点では問題なくとても、隣地と近隣の建替え、開発次第では日照などについて大きな影響を受けることもあることは理解しておきましょう。
日照、通風という点では郊外の2階建て住宅には適いません。
2-3.2階建てより建築費用の単価が高い
3階建て住宅は、一般的に2階建て住宅を建てるよりも建築コストが高くなります。同じ建物面積の2階建てと3階建てを同じ会社で同じ仕様レベルで建築するケースを比べれば、はっきりと違いが出るものです。
建築するハウスメーカーや仕様レベルによって、建築単価は大きく異なりますから、比較対象によっては価格が逆転することもありますが、階数以外の条件が同じならば、3階建ての方が高くなるのです。
2-4.狭小地の細い3階建ては揺れやすい
狭小地に建築される3階建て住宅は強い風や地震の揺れの影響を受けて、建物が揺れやすいです。これは土地が狭いから揺れやすいのではなく、狭小地に立てる住宅の形状が細長くなりがちだからです。間口が狭くて奥行の長い建物はどうしても揺れやすいのです。
正方形に近い土地に建てるのであれば、建物の間口と奥行きのバランスがよくなりますから、この心配は必要ないでしょう。
2-5.ビルトインガレージなら構造的に弱いことがある
狭小地の3階建て住宅を見ていると、1階部分が駐車スペースとなっているビルトインガレージのプランが多く見られます。駐車スペースを確保するためには仕方ない面もありますが、このプランにした場合、建物1階部分における道路側の壁量が不足しがちであるため、構造的に弱くなることが多いです。
耐震性の点では、道路に対して横方向も縦方向も両方の壁量やバランスが非常に重要なのですが、壁にしておきたい場所に車を止めるために壁を設けられないことにより、耐震性が不利になるのです。
3.狭小地に3階建て住宅を建てるときの注意点・工夫
メリットやデメリットがわかれば、最後に注意点などをあげておきましょう。
3-1.デメリットの解決策は設計者のアイデアで
デメリットが5つあげていますが、これらのデメリットをできる限り抑える対策を考えたいところです。もちろん、これは設計者に相談して対策を考えるべきことですから、プロの設計者に懸念を正直に伝えて対策についてアイデアを出してもらいましょう。
たとえば、採光を得るためには吹抜けが有効だとするアドバイスを設計者からもらえることもあるでしょう。
個々の建物プランによって対策のとり方には違いがあり、こうずればよいという正解があるとも限りません。住まいに対する施主の要望を伝えつつ、懸念事項の解決について話し合いを持つことを忘れないでおきましょう。
3-2.敷地の有効活用を考える
土地の面積が限られているだけに、その有効活用は非常に重要ですね。建物本体のことだけではなく、駐車スペース、駐輪スペース、庭、外構のことも考慮して有効活用を考えましょう。
3-3.明るいリビングを希望なら2階か3階に
狭小地の3階建て住宅では、1階は暗いスペースになりがちです。例えば、リビングの明るさを重視するならば、2階や3階に配置するとよいでしょう。
暗くなりがちな1階に寝室を配置するのは良い案だと言えますが、子供部屋を配置するのは子供の顔が見えづらいという問題があります。このように、各部屋の配置を考えるときには、明るさの他の要素も深く関わりがありますから、優先順位を考慮して総合的に判断することが肝要です。
都心へのアクセス、利便性を重視したい人にとって狭小地の3階建て住宅は1つの選択肢になりますから、メリット・デメリットを理解して判断しましょう。