誰もが知っているような大手ハウスメーカーで注文住宅を建築したり、その建売住宅を購入したりする理由の1つとして大手だから安心できるという考えがあるのではないでしょうか。家づくりの相談を受けるなかで、大手だから大丈夫だろうとの考えを聞くことは非常に多く、多くの日本人にとって共通の認識になっています。
一方で、契約する前にそのハウスメーカーの社名とトラブル、欠陥などのキーワードを入力して検索してみるといくつものトラブルや欠陥住宅問題が出てくることに驚くという声を聞くことも多いです。
新築住宅の建築時には、ハウスメーカーがいれている検査機関とは別に、第三者による住宅検査(ホームインスペクション)を利用する人も多いですが、大手ハウスメーカーの住宅であっても、こういった検査(インスペクション)サービスが必要かどうか悩む人も多いです。
そこで、今回のコラムでは大手ハウスメーカーと中小規模の工務店を比べつつ、ホームインスペクションの必要性についてアドバイスします。
1.大手ハウスメーカーは中小より安心感は高い
大手ハウスメーカーの住宅について安心してよいのかどうか、いくつかの観点から見てみましょう。
1-1.ホームインスペクション会社の経験から
2003年からホームインスペクションを実施し、大手ハウスメーカーの住宅も数多くの実績がある住宅診断(ホームインスペクション)のアネストの経験から、大手ハウスメーカーが建築する住宅においては、中小零細工務店が建築する住宅に比べると大きな欠陥、施工ミスが見つかるケースは少ないです。
このことは、実際に多くの住宅を見てきた結果としての経験値があるだけに確かなことです。
但し、欠陥、施工ミスが見つかるケースが少ないということであって、全く無いというわけではありませんから、誤解しないでください。
1-2.第三者検査機関の検査があるから大丈夫か?
安心できる住宅だとPRする際に、第三者機関による検査を受けているから大丈夫だと説明していることがよくあります。ハウスメーカーが言う第三者機関とは、ほとんど全ての場合においてハウスメーカーや住宅設備会社などの業界関連会社が出資して設立した機関です。
本当に第三者性を保てているかどうかは疑問があるところですが、検査自体はしています。ただ、その検査にかける所要時間の短さや検査内容から、本当に安心できる検査を実行するのはほぼ無理です。本来なら1時間程度は係るはずの検査を10分や20分で終えてしまうもので、そういった検査にあまり多くを求めるのは酷です。
ハウスメーカーが言う第三者機関と施主もしくは買主が利用する第三者の住宅検査は似ているようで異なることも理解しておきましょう。施主や買主が利用するものは、ハウスメーカー等の出資をうけておらず完全独立系の会社です(そういった会社を探して依頼しなければなりません)。
1-3.工事監理はしていない
住宅を新築する際には、工事監理者が現場で設計図書と現場の照合をしたり、施工不具合等がないかチェックしたりしなければなりませんが、大手ハウスメーカーといえどもこれを適切に実行しているケースはほとんどありません。
施工棟数に対して人員が不足していることもあって(その人員を整える考えもなさそうですが)、常に工事監理は期待できない状況になっています。
1-4.工場での製造だから大丈夫か
昔の住宅と異なり、多くの部材を現場ではなく工場で製造するようになりました。中小零細の工務店でも工場で製造したものをメーカー等から仕入れて使用していますが、大手ハウスメーカーは工場で製造する部分がより多いわけです。
工場で製造されているのだから、人が作るものと違って安心だと説明された人は非常に多いでしょう。確かに昔に比べて、品質の点でも工場生産によるメリットがあるのは確かです。
しかし、全面的に信用できるものかといえばそうでもありません。現場で検査していると現場に納入された時点で部材に問題(欠損・割れ等)が生じているケースもありましたし、現場で作業員が作業する際に取り付けミス等を起していたケースや、大量の雨水に濡らして部材の腐食・カビを招いているケースもありました。
工場で製造されることは品質面でプラスにはなっていますが、手放しで喜べる状況でないことは間違いありません。
1-5.それでも大手ハウスメーカーは安心感がある
ハウスメーカーが入れる第三者機関の検査、工事監理者、工場生産といった安心・安全の根拠のいずれにも問題はあり、その問題は決して小さなものではありません。
しかし、「1-1.ホームインスペクション会社の経験から」に書いたように、中小零細工務店と比較したときに、欠陥、施工ミスが見つかるケースが少ないことは確かですから、やはり安心感は高めであると言えるでしょう。
2. 中小規模の工務店でも安心できる会社は多い
大手の方が安心できると書くと、逆に中小零細の工務店で建築を予定している人は不安になるかもしれません。
前述の住宅診断(ホームインスペクション)のアネストでは、当然ながら中小零細工務店の住宅に対しても多くの検査実績があります。むしろ、大手の住宅よりも非常に多いです。
その経験から言えることは、中小零細の工務店であっても非常に施工品質の高い会社がいくつもあるということです。そして、現場等における品質管理に真剣に取り組んで、大手よりも良い施工品質の住宅を建築している工務店がいくつもあるのです。逆にひどい会社も多く、そういった会社のおかげで中小零細の全てに対するマイナスイメージを持つ人もいますが、品質管理に真剣に取り組んで実行している工務店も多いことを知っておいたもらいたいです。
ただ、これから家を建てる人にとって問題であるのは、1つ1つの工務店を見極めることはあまりに難しいということです。専門家でも、実際の現場を見てみないことには判断が難しいことですから、契約前に工務店を見極めるのは無理があるかもしれません。
本サイト(住むプロ)のなかの「業者選び」カテゴリーにある記事を参考にして、工務店選びに役立ててください。
3.大手ハウスメーカーでもホームインスペクションで安心をプラスできる
今回のコラムのメーンテーマである「大手ハウスメーカーの住宅にもホームインスペクションが必要か?」にまだ答えていませんでした。
結論を言えば、必要です。
ただ、安心感に違いがあることから、予算や工法・工程を考慮して、建築中の住宅検査(ホームインスペクション)の検査回数を抑制する案がよいでしょう。中小工務店の木造住宅なら、6~10回程度の検査回数が多いですが、4~7回程度が目安となるでしょう。
工法や工程、図面を見ながら、検査をする専門家と相談して具体的な検査回数を決めていくとよいでしょう。