注文住宅を建てるための土地探しをするなかで、不動産業者から旗竿地を紹介されることがあります。旗竿地とは、敷地延長土地やかぎ型土地と呼ばれることもあるもので、その形状が旗(フラッグ)と竿に似ていることから旗竿地(はたざおち)と呼ばれています。
旗竿地での住宅の建築を考えるうえで施主が知っておくべきメリットとデメリットや土地購入を判断する前に検討すべき注意点を紹介します。
1.旗竿地(敷地延長・かぎ型土地)とは
旗竿地の呼び方は、不動産業者や地域によって異なることがありますが、筆者の印象では旗竿地との言葉が最も多く使われていると考えています。この旗竿地は、もともと大きな土地であったものを分筆(土地の分割)していくなかで出来たものです。現代的な都市計画でこういった形状の土地が作られることはほとんどありません。
ただ、今でも不動産業者が広い土地(駐車場・工場・邸宅など)を購入した後に土地を分筆して建売住宅の分譲をする場合には新たに旗竿地が形成されることも少なくありません。
旗竿地の最大の特徴は通路です。上の図のように土地に接する道路から通路を通って土地の奥へ入っていく必要があります。その通路の巾が2メートル以上ないと、その土地に建物を新築したり、既存の建物を建て替えたりすることができません。
但し、通路が2メートル以下であっても既存の建物がある場合には、主要構造部分を残してリフォームすることはできるため、不動産業者や建築業者が「ほとんど新築みたいなものです」などと営業、説明しているケースは多いです。基礎や土台、柱などの主要構造部を再利用していて「新築みたいなもの」とは言うのは無理があると思いますが。
この旗竿地を購入すべきかどうか検討する上で、メリットとデメリットを理解しておくべきなのは当然ですね。旗竿地を購入して住宅を新築してから後悔しないために、メリット・デメリットを解説しますからよく理解しておいてください。
2.旗竿地(敷地延長・かぎ型土地)に家を建てるメリット
旗竿地(敷地延長・かぎ型土地)を購入して家を建てる最大のメリットは、土地価格が安いということです。物件によっていろいろですが、同じ地域の同じ大きさの土地と比較すれば、20%程度安いことはよくあることです。
価格が最大のメリットであるにも関わらず、それほど周囲の土地と価格差が無い場合は、価格交渉するか他の物件を探した方がよいでしょう。
価格が安いとはいえ注意点があります。通路部分には現実的に建物を建てることができず、駐車スペースとする程度しか使えないわけです(駐車スペースについては後述します)。よって、通路を除いた土地面積で周囲の土地と比べて安いかどうか確認した方がよいでしょう。
このポイントを確認していないと、安いつもりで高く買っていることもあるので注意してください。
3.旗竿地(敷地延長・かぎ型土地)に家を建てるデメリット
次に旗竿地を購入する上でのデメリットを紹介します。
3-1.建築費が高くなる
一般的に旗竿地での建築費用は一般の土地に比べて割高になります。その理由は、通路が狭くて重機やトラックが入らず、建築資材の運搬等を人力で対応せざるを得ないからです。それくらいで建築費が上がるのかと考える人もいるかもしれませんが、建築費に占める人件費の割合は非常に高いですから、影響が大きいのです。
但し、旗竿地の手前の土地(道路側の隣地)が空き地で、その土地を使用できる場合は建築費に影響がありません。例えば、不動産業者が新たに開発して下の図のように4件の建売住宅を分譲する場合は、奥の土地(旗竿地)から先に建築することでこの問題に対応していることが多いです。
奥の旗竿地に建築する間は、手前の隣地を使うことで重機などが出入りできるため建築費は上がらないわけです。旗竿地の建物が完成してから、手前の隣地で建築するわけですね。
ただ、一般の人がこういった土地を購入して家を建てるときには、不動産業者と同じ方法を取れないですからどうしても建築費が上がってしまうのです。
3-2.日照・通風が悪い
土地の広さや形状、そして建物の大きさや隣地の建物などの条件によっても異なりますが、基本的には日照・通風という点において不利になります。旗竿地であり、尚且つ隣地の建物との距離が近い場合には影響が顕著ですから注意してください。
敷地の状況が酷い場合には、いつでもジメジメしている土地もあります。
洗濯物は2階か3階のベランダで干すようにしないと、なかなか乾いてくれないため建物の間取り作りの時に注意しましょう。
3-3.4方を隣地に囲まれる(プライバシー)
旗竿地は基本的には周囲を囲まれた土地になるため、建物間の距離が近くてプライバシーの点で問題が生じることがあります。
4方に建物があるということは、自分の家の窓と隣家の窓の位置が近い位置になる可能性が高く、注意しないとお互いのプライバシーに問題が生じます。隣の人の気配(声・物音・人影)をいつも感じているのは、気が抜けなくて嫌ですよね。
道路からの距離がある分、プライバシーが確保されやすいという考えもありますが、それよりも4方を囲まれていることによるデメリットの方を感じやすいでしょう。
3-4.防災上のデメリット
旗竿地は、敷地外へ出る方向が1箇所ですが、その1箇所である通路が狭いことから防災上の心配があります。仮に道路側の隣地で火災が起こって、通路に多くの煙が出てきたとき、逃げる方向が他にありません。間口が広くて道路に面している土地ならば道路に出るのは簡単ですが、旗竿地では少々リスクがあるのです。
若い人ならば、別方向の隣地へ塀を超えて逃げることができるかもしれませんが、高齢者になると大変です。
地震で隣地が崩れて通路を塞いでしまったときも同じですね。
3-5.旗竿地の駐車スペース問題
旗竿地でよく問題になるのは駐車スペースです。多くの場合、通路部分に駐車することになりますが、通路巾が狭いと非常に使いづらいものとなります(実質的に駐車できないことも多い)。
通路の巾が2メートル以上あれば新築や建て替えをできると述べましたが、2メートルでは車を駐車することができません。車の巾は普通車で1.6~1.7メートル、軽自動車でも1.5メートル近くあります。駐車してドアを開閉し、乗り降りするために必要な巾や車と塀までの距離のゆとりを考えれば、最低でも通路巾が2.5メートルは必要です。
この2.5メートルは何とか使用できるという程度のものであり、実際には使いづらいですから本来ならもっとゆとりが欲しいものです。人が通るスペースや自転車やバイクが車の横を通るスペースのことまで考えれば3メートル以上は欲しいところです。子供が自転車を通すときに車に傷をつけてしまうという悲劇もありえますからね。
車を複数台所有している家庭なら、上の図のように通路に縦列に並べて駐車しなければなりませんが、奥の車を出すときには手間の車を一度出してから入れ替えて、、、などという手間が生じます。これも大きなデメリットになりますね。
通路から奥に入った部分(四角形の部分)の土地面積が十分に広くて、そこに駐車スペースを作れる場合は対応を考えやすいです(下の図を参照)。
しかし、このように駐車できる旗竿地は多くないのが現状です。車Bの方は通路巾が十分でないと出し入れが難しくなります。
先に挙げたような4区画の分譲地の場合は、旗竿地同士で協定を結んでおき、通路部分の境界に塀やフェンスを設けず、お互いに車の乗り降りを考慮した使い方を取り決めておくケースがあります。下の図のように車の駐車位置まで決めておくこともありますが、そういった物件を中古住宅として購入する場合は協定内容を吟味したうえで将来の建替えなどを考えてもよいでしょう。
4.通路の使い方
旗竿地を購入して注文住宅を新築するのであれば、やはり通路部分をどう使うのか考えておくべきでしょう。最も多い利用方法は既に解説したように駐車スペースです。上の内容をよく読んでどうするのがよいか考えましょう。
駐車スペース以外の利用方法も検討してみましょう。駐車しない場合は、敷地の奥へ入るためのただの通路として考えるのでしょうか。そうではなく、デザイン性を考えて魅せる通路にしてはいかがでしょうか。
京都の古い町家は奥に長細い土地が非常に多いですが、門構や石畳などで風情のある住宅が見られます。また、植栽が好きな人ならば通路沿いに綺麗な花壇を設けて魅せるのもよいでしょう。考え方次第でただの通路を価値あるものにすることは可能なはずです。
5.旗竿地(敷地延長・かぎ型土地)のまとめ
基本的には敬遠されがちな旗竿地ですが、車を所有していない人にとっては価格が安い分だけ、むしろオススメかもしれません。また、マンションと同じで駐車場を近隣で借りるという方法もありますから、検討してはいかがでしょうか。
そして、地域によっては家づくり全体の予算に対して土地代金の占める割合が高いですから、予算を最優先で考えるならば旗竿地も一考の価値はあります。資産価値が低いことを理由に敬遠する人もいますが、購入するときも安いのですから、資産価値を考える必要性はそれほどないはずです。
高い土地を買って高い資産価値を保つのも、安い土地を買って低い資産価値を保つのもそう変わりないですね。