注文住宅を建築するための土地を探すときに注意すべきチェックポイントはいくつもありますが、そのなかでもよく隣地の所有者とトラブルになることについて取り上げます。
土地を購入してから建物の設計を終え、いよいよ着工しようというときなどに隣地との境界や越境物に関してトラブルが起こることがあるのです。そのトラブルのために建築が進まず、いつまで建っても完成させられないために入居できないということにならないため、土地選びの段階で気をつけておきましょう。
1.土地購入前にチェックすべき境界
境界と越境は非常に近いテーマなのですが、それぞれに分けて解説します。まずは、境界についてお伝えしましょう。
1-1.境界トラブルのリスクとは?
購入する土地と隣地の境界が不明瞭であり、隣地の主張する境界位置と購入する土地の売主(=所有者)の主張する境界位置が相違していることに起因する境界トラブルが少なくありません。両者の言い分が異なるため、家を新築したり増改築したりするときに、建ぺい率や容積率との関係、もしくは境界から建物までの距離などについてもめてしまうのです。
境界位置がはっきりしないということは、購入する土地の本当の面積や形状がはっきりしないということでもあります。
こういった土地を購入してしまった場合、その土地の買主が隣地と話し合って境界位置を確定させるように努めなければなりません。住宅を建築する建築会社が、話を進めるために隣地との交渉を対応してくれることもありますが、解決できるとは限りませんし、費用がかかることもあります。
建築予定地の土地の所有者が売却するときには、隣地との間で境界トラブルになっているという認識がないこともあります。たとえば、境界位置について深く考えたこともなかったとか、境界位置を理解しているつもりであったが、隣地の考えとずれていることに互いに気づいていなかったということもあります。
それだけに土地を購入する時点で売主から境界トラブルがあることを知らされない可能性もあるので、土地の売買契約前には慎重に対応した方がよいでしょう。
1-2.境界の何をチェックすればよいか?
土地購入前に境界トラブルがあるかどうか、もしくは境界トラブルが起こりそうかどうか確認するには、何をチェックすればよいのでしょうか。
まず、現地において境界位置を示すものがあるかどうか目視で確認することです。土地を見学した際、案内してくれた不動産会社に境界の位置がどこであるか示してもらいましょう。四角形の土地ならば、4隅に境界の位置を示すポイントがあるはずです。
次の写真は境界ポイントの一例です。
また、地積測量図を用意してもらって、この書面に書かれている境界ポイントの種類(杭etc)と現地の境界ポイントの位置が一致しているか確認しましょう。
現地において境界ポイントが見つからない場合は、長い年月の間に埋まってしまったり、取り外されてしまったりしている可能性があります。または、もともと明確ではなかったということもあります。なぜ、境界ポイントがないのか、隣地とその土地の売主の間で境界位置について意識の相違がないかということについて、不動産会社を介して確認するようにしてください。
もし、購入しようと考えていた土地の境界が不明瞭であることがわかれば、売主の方で隣地と話し合って境界を明確にしてもらうようにお願いしましょう。それを確認してから売買契約してもよいですが、先に売買契約を締結するのであれば、契約条件のなかに、売主の負担と責任において隣地との境界問題を解決して、境界を明示してもらうことを入れておきましょう。
1-3.境界問題の解決を考えない不動産会社もある
境界問題は大切なことですから、本来ならば、不動産会社が境界問題の有無を確認し、問題があれば解決するために積極的に動いておくべきことです。しかし、境界に関する話し合いはスムーズに進まないことも多く、不動産会社も多くの労力を費やすことになるかもしれないため、面倒だと考えて積極的に取り組まないこともあります。
よって、土地を購入するときには買主の方から境界がどうなっているのか、きちんと不動産会社に聞き、現地と地積測量図で確認することが大事だということを理解しておきましょう。
2.家づくりのための土地購入と越境物の問題
境界に続いて越境物について解説しておきます。これも注文住宅で家を建てるときにトラブル化することがあるので、土地購入前にチェックしておきたいことです。
2-1.越境物があるリスクとは?
越境物とは、隣地との境界を越えている物のことです。例えば、古い住宅である場合、屋根や軒、樋の一部が越境しているということがあります。屋根が境界を超えていると聞くと驚く人も多いですが、住宅診断(ホームインスペクション)や土地見学同行で現地調査をしていると年に何度か遭遇することがあります。
また、植栽が越境しているということもあります。植栽とは植木などのことですが、放置された空家や空き地などでは雑草が生い茂って越境していることもよくあることです。
そして、地中で越境物が見つかることもあります。配管や建物の基礎が越境しているというケースで、これは地面を掘り起こすまで気づいていないこともあるため、厄介な問題です。
越境は、隣地から購入したい土地に越境してきていることもあれば、購入する土地から隣地に越境しているものがあって迷惑をかけていることと両方のケースがあります。後者の場合、これから古い建物等を取り壊して住宅を新築するのであれば、取り壊すことによって解決できることが多いですが、前者の場合は隣地に対応を求める必要があるので要注意です。
隣地の建物や構築物の一部が越境してきていることによって、新しく建築したい家と干渉する部分が生じるならば、即座に大きな問題ですね。たとえ干渉していなくとも、越境物から流れ落ちてくる雨水が購入する土地に大量に流れていて、土地の湿気の問題を生んでいるかもしれませんし、その他にも何か問題になっている可能性もあります。何か悪影響が無いか確認しておく必要がありますね。
2-2.越境物のチェック方法
土地見学時には境界をチェックすることと同時に越境物の有無についても丁寧に確認しましょう。チェック方法は目視です。
境界付近を見て確認していくのですが、目線には注意しましょう。多くの人は自分の慎重より上はあまり注意深く物件を見ていないようです。例えば、中古住宅の見学時に天井にある大きな水染み(雨漏りの痕)に気づかないという人は多いです。
越境物は、前に記したように屋根や樋などでもありうることですから、高い位置も確認しなければなりません。地面付近ばかり見ずに上方向も確認するようにしてください。不動産会社が空中の越境物に気づかず売買していたということもあるので注意しましょう。
また、植栽の越境物は季節によって違いがあることにも注意しましょう。冬は大丈夫であっても夏になって伸びた植物が越境するということもあるのです。冬に微妙なものがあれば、夏には越境する可能性が高いと考えておいた方が無難です。
そして、売主へのヒアリングです。越境物に関して隣地とトラブルになっていないか、以前にトラブルが生じたことがないか不動産会社を介して聞きましょう。地上では見えない途中の越境トラブルの話が出てくることもあります。隣地との間で何か取り決めていることがあることもありますから、あわせて確認しなければなりません。
2-3.隣地からの越境物への対応方法
実際に購入したい土地に越境物があることがわかれば、どのように対応するべきでしょうか。
越境物は境界問題と同じで隣地との話し合いが長引くこともありますし、同時に境界トラブルを生じさせることもあります。そこで、その土地を購入する前に売主の方で隣地と話し合って解決しておいてもらう必要があります。
契約前に解決しておいてもらうか、契約後に解決するならば、売主の負担と責任において解決することを契約条件のなかに入れておくことです。
土地を購入したものの、境界や越境物の問題があるために家づくりがいつまでも進まないということがないように、土地探しの段階で十分に注意して取引してください。