「え・・・?この値段・・・安すぎでは??」
という建売住宅。あなたは見たことありませんか?
建売住宅の中でも、群を抜いて安売りされている物件。「パワービルダー」と呼ばれる建築会社によって建てられた、建売住宅です。
パワービルダーの建売住宅は、一般的な建売住宅の6~8割の価格で販売されることもあります。注文住宅と比較すると約半額になるケースも(土地代を考慮)。
しかしあまりの安さゆえに、
- 「安かろう、悪かろうな家」なのでは?
- 欠陥住宅なのでは?
- 誰も買いたくない、人気のない物件なのでは?
と、疑う方も多いです。
そこでこの記事では、パワービルダーの建売住宅の
・特徴
・購入時の注意点
について、解説させて頂きます。
パワービルダーの安さの理由とは?本当に買って大丈夫なのか?
冷静に整理していきましょう。
パワービルダーとは?特徴は?
「パワービルダー」という言葉、聞いたことある方も多いはず。
パワービルダーとは、床面積30坪程度の土地付きの建売住宅を2000~4000万円の価格で販売している建築会社のことです。
「パワービルダー」という言葉が登場したのは、2000年頃から。
一般的な建売住宅よりも6~8割も安いこともあり、その後シェアを伸ばしていきました。
建築している建売住宅が「年間1000棟~」と多く、中小工務店の「年間10棟~」と比較すると、その差(パワー)が大きいことが分かります。
代表的なパワービルダー「飯田グループホールディングス」
代表的なパワービルダーといえば、「飯田グループホールディングス」。
飯田グループは1日100棟以上を建築し、名実ともに日本一のパワービルダーです。(2019年12月時点)
年間の建築棟数は、41,619棟(2019年)であり、これは「日本の戸建分譲住宅の30%が飯田グループの分譲住宅を買った」、ということになります。
飯田グループは、次の6社から成り立つ共同持ち株会社です。
- 一建設
- 飯田産業
- 東栄住宅
- タクトホーム
- アーネストワン
- アイディホーム
もしかしたらあなたの見つけたローコスト建売住宅も、飯田グループの建売住宅だったかもしれませんね。
パワービルダーの建売住宅の特徴は?
パワービルダーの建売住宅には、共通した特徴があります。
外見の特徴 | サイディング外壁 |
スレート屋根、アスファルトルーフィング | |
軒が短い | |
オープン外構 | |
内装の特徴 | シンプルな壁紙 |
独自フローリング(MDFなど) | |
照明なし | |
網戸なし | |
構造 | 2×4構造(面で支える、モノコック構造) |
ベタ基礎 | |
断熱材はグラスウール |
※建築会社によって、例外あり
いずれの特徴も、コストカットをしながらも性能を担保する仕様になっています。
ただしコストカットしているから、性能が低いわけではありません。
飯田グループの中核「飯田産業」の建売住宅では、住宅性能表示制度において、
- 耐震等級(構造躯体の倒壊防止)
- 耐震等級(損傷防止)
- 耐風等級
- 劣化対策等級
- 維持管理対策等級
- ホルムアルデヒド対策等級
上記6項目において、最高等級を取得しています。これは注文住宅と比較してもそん色ないレベルです。
ただし断熱性など「快適な生活をする性能」では、大手ハウスメーカーには勝てません。
パワービルダーの建売住宅が安い理由
「パワービルダーの建売住宅は、安いから粗悪品である。」
という口コミもあります。しかし「安いから必ず粗悪品」、ではありません。
パワービルダーの建売住宅が安い理由は、次の3つです。
1・大量生産・大量発注による、資材のコストカット。
パワービルダーは年間1000棟以上も建築しています。
そのため資材をまとめて仕入れることで、コストカットが可能です。
同じグレードの資材でも、中小の工務店より安く仕入れられるので、ローコストの建売住宅が建築できるのです。
2・多くの現場を一度に建築する。
パワービルダーは、複数の現場を同時に建築します。
そのため人員配置に無駄がなく、人件費が削減できます。
1人の現場監督が、複数の現場を同時に受け持つのも特徴です。
3・グレードの高い外装・内装、設備は使わない。
パワービルダーの建売住宅は、グレードの高い外装・内装、設備を使わないことでコスト削減しています。
住宅展示場の大手ハウスメーカーのモデルハウスと比較すると、パワービルダーの物件はかなり質素に見えるでしょう。
また断熱性・耐震性においても、
大手ハウスメーカー | パワービルダー | |
断熱性 | 独自の工法で基準より厳しい自社基準をクリア。
ハイブリット断熱(内・外断熱)など。 |
グラスウールによる内断熱が中心。
断熱材の厚みも薄い。 |
耐震性 | 制振デバイスの設置。 | 制振デバイスなし。 |
明らかなスペックのちがいが見られます。
さらにパワービルダーの建売住宅には、生活必需品がオプション扱になっている物件も多いです。
- 照明
- カーテンレール
- カーテン
- 網戸
パワービルダーの建売住宅でもオプションをつけてグレードを上げると、一般的な建売住宅と変わらない値段になってしまいます。
パワービルダーの建売住宅。購入時の注意点は?
パワービルダーの建売住宅を購入するとき、注意すべきは次の5つです。
1・安い理由を知ること。
パワービルダーの建売住宅が安いのには、理由があります。
それは決して雑な仕事をしているから安いワケではありません。
企業として、「コストを削減する努力をしている」から安いのです。
「安い=質が悪い」と決めつけないようにしましょう。
2・ネットの口コミを妄信しない。
パワービルダーの建売住宅は、ネガティブな口コミが多いです。
しかしそれは、着工数が多いから。母数が多いので、口コミも多くなります。
同じ欠陥住宅でも地元の工務店なら話題になりませんが、全国展開のハウスメーカーの欠陥はすぐにニュースになるのと同じです。
ネットでは悪い口コミほど広がりやすいもの。着工数が多い分、悪い口コミも多いです。
ですがネットには上がらない、いい口コミも多いことを忘れてはいけません。
3・直販で購入できる可能性を探る。
年間1000棟以上も建築するパワービルダーは、自社WEBサイトで直販しているケースも多いです。
飯田グループの中核「飯田産業」では、自社WEBサイトで直販しています。
パワービルダーから直接購入することで、仲介手数料がかかりません。
少しでも住宅費用を抑えたい方は、直販の可能性を調べてみましょう。
4・入居後のメンテナンス費に注意。
パワービルダーの建売住宅は、入居後のメンテナンスが高くなりがちです。
- 外壁サイディング:10年で50~100万円(塗り直し・コーキング)
- 屋根:10年で50万円~(塗り直し)
大手ハウスメーカーではメンテナンスのかからない素材(ガルバリウム鋼板・耐久性の高いサイディングなど)を採用しています。そのため初期費用は高いですが、維持費は安くなります。
5・工事の仕上がりを隅々までチェック。
パワービルダーの建売住宅が安いのは、企業としてコストを削減する努力をしているから。
しかしコスト削減は、手抜き住宅の原因になることもあります。
- 現場監督が複数の現場を担当するので、チェックの目が行き届かない。
- タイトなスケジュールで建築するので、雑な作業になってしまう。
すべての現場で行われている訳ではありません。しかし可能性は否定できません。
そのためパワービルダーの建売住宅を購入するときは、
- 契約前
- 入居前
このタイミングで、入念に仕上がりをチェックしましょう。
床下や天井裏も確認し、その物件がどのようなプロセスで建築されたのか、推測することも大切です。
安心したい方は、住宅診断士による住宅診断(ホームインスペクション)もおすすめ。
プロの厳しいチェックで欠陥の有無を確認しておくと、安心して入居できます。
パワービルダーの特徴・注意点のまとめ
一般的な建売住宅よりもローコストなパワービルダーの建売住宅。
住宅ローンの負担も軽くなるので、非常に魅力的に見えますよね。
しかし安い理由を冷静に考え、細部まで仕上がりをチェックして購入することが大切です。
【パワービルダー建売住宅の購入時の注意】
1・安い理由を知ること。(建築方法・工期・素材・グレードなど)
2・ネットの口コミを妄信しない。
3・直販できる可能性を探る。
4・入居後のメンテナンス費に注意。
5・工事の仕上がりを隅々までチェック。
「パワービルダー=欠陥住宅」ではありません。
しかし効率化・ローコストを優先し、欠陥が生まれやすい環境ではあります。
住宅診断(ホームインスペクション)を利用して、事前に不具合の有無をチェックすると安心ですよ。