新築住宅を買う人にとって、建売住宅を選択して売買契約を結ぶことは多いでしょう。建売住宅の契約では、売主と買主のみで交渉して契約に至ることもあれば、不動産業者が仲介して取引することもあります。
いずれの場合でも買主にとってみれば、不動産取引を繰り返しているプロが相手となりますから、知らないうちに買主が不利な条件な契約内容となっていないのか心配することもあるでしょう。
実際のところ、不動産業者も玉石混交ですから、買主に不利となることをそっと売買契約書に記載していることもありますし、悪意はないものの知識不足から買主不利な契約内容としている業者もあります。
今回のコラムでは、これからまさに建売住宅の売買契約を締結しようとしている人向けに、契約書のなかで最低でも自分でチェックしておくべきことを紹介しています。契約後に後悔することのないように、買主に不利なことがないか確認してください。
1.住宅ローン特約(融資特約)の内容と期日
1つ目のチェックポイントは、住宅ローン特約です。
住宅ローン特約という言葉は、家を買う人ならば一度は耳にしたことがあるかもしれません。「確か、住宅ローンの審査に落ちたら、契約が白紙になる特約だったような、、、」くらいの理解はあるのではないでしょうか。
基本的に、その理解で間違いありません。
家を買うための資金の一部として金融機関から融資を受ける人は非常に多いですよね。その融資が住宅ローンです。融資を受けられないと売主へ支払う資金が不足するわけですから、購入することができなくなります。そのときのために何のペナルティーもなく契約解除できるようにする仕組みです。
住宅ローン特約は、売買契約書のなかでは「融資利用の特約」と記載されていることが多いですが、同じ意味です。
住宅ローン特約についてもう少し知識をもっておきたいことがあります。それは、融資が受けられないときの契約解除方法に2つのパターンがあるということです。
1-1.自動的に売買契約が解除されるパターン
1つ目のパターンは、住宅ローンの審査に落ちて融資を受けられないときには自動的に売買契約を解除するというものです。簡単にいえば、金融機関から融資について不承認という結果が出たら、売主へそれを伝えれば契約解除となるわけです(審査結果は伝えなければわかりませんね)。
1-2.不承認になってから契約解除の意思表示が必要なパターン
もう1つのパターンは、融資が不承認となっても自動的には契約解除とはならず、買主がこの特約により契約解除することを売主へ申し出ることで解除となるものです。
それならば、自動的に解除になる方が楽でいいと思うかもしれませんが、契約解除の意思表示が必要なパターンでは、自己資金を増額するなどして別の手段で購入する方法を選択することもできるのです。預貯金を崩すこともあれば、両親から資金援助を受けることもありうるでしょう。
売買契約書をチェックするときには、あなたに適したパターンの住宅ローン特約となっているか確認すべきですね。
1-3.2つの期日に要注意
また、この2つ目のパターンでは、2つの期日にも注意してください。それは、融資承認取得期日と融資利用特約による契約解除期日です。
融資承認取得期日とは、住宅ローンの承認をその期日までに取得しなければならない日です。
融資利用特約による契約解除期日とは、上の融資承認取得期日までに承認を得られなかった際にはこの日までに買主が契約解除することを意思表示しなければならない日です。
仮に、融資承認取得期日が7月1日で、融資利用特約による契約解除期日も7月1日である場合を考えてみましょう。7月1日になって融資が不承認だとわかったとき、その日のうちに買主は売主に対して契約解除手続きをとらなければなりません。
しかし、金融機関・買主・不動産会社・売主の全ての関係者が互いにすぐに連絡がつくとは限りませんし、買主は他の方法で購入するかどうか検討する時間もありません。これでは、買主の契約解除の意思表示が間に合わず、トラブルになってしまうリスクがあるわけです
そこで、この2つの期日の間には3~7日程度の期間をあけておくことをお奨めします。
2.完成日と引渡し日
建売住宅を購入した人から相談を受けるなかで、取引に関して多いトラブルの1つが引渡し日に関することです。建物の完成が遅れて引渡し日がずれたとか、融資の審査が思いのほか時間がかかったとか、いろいろな理由で引渡し日が延期になることがあります。
建物が未完成の建売を購入するのであれば、引渡し日だけではなく完成日の設定もよく見ておきましょう。契約時点の工事進捗状況から完成予定日までのスケジュールが厳しいようであれば、本当に工事が間に合うのかくり返し確認しておきましょう。
この際、ついでに売買契約から完成・引渡しまでのスケジュールも書面で確認してください。口頭の説明だけでは、慣れない買主が把握しきれるものではありませんから、書面で契約後の流れを示してもらうべきです。
主だった項目だけをあげても以下の流れとなります。
- 売買契約
- 建物完成
- 引渡し前の立会いチェック
- 引渡し
これらのスケジュールを確認しておくべきです。購入する流れの詳細や注意点は、「新築住宅の購入・引渡しの流れと注意点(建売住宅編)」が参考になります。
3.手付金の金額
売買契約を締結する際には買主から売主へ手付金を支払いますが、その金額をいくらにするかは契約する前に話し合っておきましょう。不動産会社から一方的に提示された金額にしなければならないわけではありませんので注意してください。
一般的な相場では、売買金額の5~10%ですが、自己資金などの都合によってはもっと低めの金額に設定することもありますから、不動産会社と相談して決めてください。
売買契約を締結して手付金を支払ってから、買主の都合で契約解除する場合、この手付金を放棄することになりますので、あまり過大な手付金としない方が安心です。
4.違約金の金額
売買契約を締結した後に、契約に違反して契約を解除することになった場合、違反した方が相手に支払う金銭が違約金です。違約金は売買金額の10か20%に設定することが多いです。
買主が違約したなら買主が支払うので金額を抑えたいところですが、売主の違約を抑制するためにも金額が安すぎるのも問題です。上にあげた金額になっているか確認してください。
5.諸費用の項目
建売住宅を購入するためには、決して安くはない諸費用がかかります。取引の仕方などの諸条件にもよりますが、売買金額の3~8%程度の金額になります。
この諸費用の項目は、売買契約書の中で確認できる項目ではありませんが、売買契約の直前に書面で確認しておきたいことです。必ず、諸費用の項目と金額が一覧表示された書面を受け取り、怪しい項目がないのか確認してください。
項目の確認の仕方は、1つ1つの諸費用の名称をGoogleで検索すれば怪しいものかどうか容易にわかるでしょう。本来なら必要ない費用を当然のように請求されて知らずに支払っている人は意外と多いものです。
6.買主の容認事項
最後に時間をかけてチェックしてほしいポイントは、買主の容認事項です。売買契約書のなかに「買主の容認事項」という言葉で記載していることもありますが、特にそのような表記がなく説明が記載されていることも多いので注意してください。
特約条項、備考欄、その他欄などに長い文章が書かれていることがありますが、それが対象です。契約に書かれていることを買主が容認して購入したことになっているので、本当に容認できることか確認しなければなりません。
よく記載されていることの1つは、「近隣の環境は法規制等の範囲において変化することがある」といった内容です。これは当たり前のことですが、後から買主がクレームをつけることもあって、今では契約書に記載することが多くなりました。同様に様々な記述が見られるのでよく読んで理解しておきましょう。
建売住宅の売買契約に関するまとめ
ここまで売買契約書の内容に関する大事なチェックポイントを紹介していますが、ここにあげたポイント以外も契約書は熟読するようにしてください。意味のわからないこと、不審に感じたことがあれば、遠慮なく不動産業者へ質問すべきです。
残念ながら、知識不足で明確に説明できない担当者も少なくありませんが、その場合は上司に確認してもらうなどしてきちんと回答してもらうようにしてください。