人気となっている中古住宅購入後のリノベーション。購入後のリノベーションを前提として中古住宅を購入するわけだが、このマイホーム取得方法は自宅に対するこだわり、想いを実現する1つの有効な手段となっている。
今回のコラムでは、これから中古住宅を購入して、その後にリノベーションをしたいと考えている人が知っておくべき「中古住宅購入 + リノベーション」のメリット・デメリットと注意点について取り上げている。安易に流行りにのっかかって失敗しないため、この買い方の特徴と注意点を抑えておこう。
中古住宅を購入してからリノベーションするメリット
まずは、「中古住宅購入 + リノベーション」という買い方のメリットをご紹介しよう。以下の6点が挙げられる。
- 新築住宅よりも価格を抑えられることが多い
- 中古物件でも綺麗な住まいで暮らし始められる
- 希望の間取りに変更できる
- 設備や内装を希望のものにできる
- リフォーム費用までローンを組みやすくなった
- 解体したときに悪いところを補修できる
以上6点のメリットについて、もう少し詳しく説明しよう。
新築住宅よりも価格を抑えられることが多い
新築住宅を購入することが理想だと考えている人は今の日本でもまだまだ多い。しかし、中古住宅に比べて価格の高い新築を買うことができないと感じている人でも、この買い方ならば新築よりも予算を抑えてマイホーム持つことができる。
もちろん、リノベーション工事にどれだけの予算を割くかによって総額が大きく異なることから、条件次第では新築の方が安いということもあり得る。きちんと予算管理しながら購入とリノベーションをすれば問題ないだろう。
中古物件でも綺麗な住まいで暮らし始められる
新築信仰の強い日本人でも、リノベーションしてしまえば、中古物件でも新築同様に綺麗な住まいを手に入れることができる。これが「中古住宅購入 + リノベーション」の最大のメリットだと考えている人も多いだろう。
何も建物を全面的に新しくしなくとも、予算や考え方にあわせて必要なところだけリフォームしてもよいだろう。その上で、将来、追加でリフォームしていく方法もある。
希望の間取りに変更できる
新築建売住宅や新築分譲マンションを買う人の圧倒的多数は、購入してすぐにリノベーションすることはない。本当は、間取りに対する別の希望があったとしても新築物件を工事してまで変更しようとはあまり考えない。やはり、もったいないという意識もあるだろう。
中古物件では購入後にリフォーム、リノベーションするのは当たり前のことであり、思い切った間取り変更をする人もいる。条件にもよるが、間取りなどプラン変更によって理想とする住宅を手に入れられるのもメリットである。
設備や内装を希望のものにできる
リノベーションをするときは、キッチンやトイレ、バスなどを新しいものに入れ替える際、自分の好きなものを選ぶことができる。もちろん、壁や天井の仕上げ(クロスなど)や床の仕上げ(無垢の床材など)も自由に選ぶイことができる。
自分好みの住まいを作るうえで、設備や内装を選べることは大きなメリットである。
リフォーム費用までローンを組みやすくなった
以前は中古住宅を購入した後に大規模なリフォームしようとしても、そのリフォーム費用までは金融機関が融資してくれなかった。しかし、最近では融資事情も大きく変わってきており、購入後のリノベーション資金まで融資してもらえることが増えたのである。
これにより、資金面の悩みが減ったことも「中古住宅購入 + リノベーション」に追い風であるし、融資の充実はメリットになっている。
解体したときに悪いところを補修できる
リノベーションをすること自体のメリットとも言えることが、解体工事をすることで隠れていた箇所の問題を発見して補修等の対応をとることができることである。
たとえばリフォーム済みの中古住宅を購入した場合、自分でリノベーション等をしないために隠れている箇所がその後も隠れたままになっている。その隠れた箇所に不具合があれば、建物の寿命を縮めてしまうことになりかねない。
リノベーションを機に建物の問題点を発見し、補修等の対策を取れたならば、これはメリットだと言えるだろう。
中古住宅を購入してからリノベーションするデメリット
当然ながら、「中古住宅購入 + リノベーション」にはメリットしかないわけではない。デメリットについても理解しておくことが必要なのは言うまでもない。
- リノベーション後の完成状況をイメージしづらい
- 着工してから想定外の不具合が見つかり補修コストが増えることがある
- 中古住宅の購入前の時点で予算を組みづらい
- 良いリノベーション業者を見つけなければならない
デメリットとして以上の4点をご紹介しよう。
リノベーション後の完成状況をイメージしづらい
中古住宅を購入した後にリノベーションをするわけだから、当然のことながら購入前の時点ではリノベーションした後の状態を見ることはできない。見られないだけに、イメージしづらいというのはデメリットであり、リスクともいえる。
完成前の新築物件を買うときと同じデメリットである。なかには、そういったことは全く気にしない人もいるし、そもそも購入してからリノベーション内容について真剣に向き合う人、検討する人も多く、そういう人にとってはデメリットと感じないだろう。
着工してから想定外の不具合が見つかり補修コストが増えることがある
メリットの1つに「解体したときに悪いところを補修できる」というものをあげた。しかし、これは見方によってはデメリットでもある。解体したときとは既に購入した後だけに、想定外の補修工事費用がかかる可能性があるということだ。
リノベーション工事を着工して、解体してから大きな不具合が見つかり、その補修コストが多大なものであれば途方に暮れるかもしれない。
中古住宅の購入前の時点で予算を組みづらい
購入する中古住宅を決定する時点では、まだその物件に対するリノベーションの内容を具体的に考えていない人も多いだろう。建物延床面積(マンションならば専有面積)と坪単価でざっくりとした予算を考えていたとしても、その通りにならないことは少なくない。
しかし、購入を決めるときには本来ならば、売買金額とリノベーション費用の総額で予算を考えなければならず、予算を組みづらいことがデメリットとなっている。リノベーション業者から聞いていた坪単価よりも高くなったという事例は無数にあることを理解しておこう。
良いリノベーション業者を見つけなければならない
「中古住宅購入 + リノベーション」という住まいの買い方を成功させる重要なポイントの1つが、良いリノベーション業者と出会うことだろう。しかし、それを見つけるのは簡単ではないし、そもそも良い業者かどうかを判断する術をもっている一般消費者はほとんどいない。
つまり、運・不運といったギャンブル要素まであるような状況である。いくつものリノベーション業者に問い合わせて、話を聞いてといった手間をかけることは必須であり、多くの手間をかけなければならないことはデメリットだといえる。
中古住宅を購入してからリノベーションするときの注意点
ここまでに、「中古住宅購入 + リノベーション」のメリットとデメリットを見てきたが、ここからはこの取引を進めていく上での注意点について取り上げる。
- 中古物件の購入額とリノベーション工事費用の予算の想定が大事
- 希望の工事ができるかどうか購入前に確認が必要
- 購入前にホームインスペクション(住宅診断)
- 図面の有無は重要
- リノベーション業者は購入前に探し始める
- リノベーション業者の見学同行
- マンションなら管理規約・使用細則に要注意
大事なポイントは多いが、ここでは以上の7点に絞っている。この7点だけは最低でも抑えておきたい大事なチェックポイントである。
中古物件の購入額とリノベーション工事費用の予算の想定が大事
デメリットの1つとして「中古住宅の購入前の時点で予算を組みづらい」という点をあげたが、この予算組が大事となる。そのためには、理想としているリノベーション後の住まいに対するイメージをある程度は考えておき、その実現のためにはどの程度の費用がかかるのか知っておくことである。
希望の工事ができるかどうか購入前に確認が必要
自分の住宅とはいえ、どんな工事でもできるというわけではない。物理的に実現が困難な、もしくは無理なものもある。それは、購入する住宅の構造や工法、プランによる影響を受けるからだ。
希望する大きな窓を希望の場所に設けるには、構造的な難しい問題をクリアしなければならないとか、撤去できない間仕切壁があるとか、希望の壁となる問題が生じることもあるため、その物件を購入する前によく調べておかなければならない。
購入前にホームインスペクション(住宅診断)
解体してからわかる不具合以外に、解体前であっても専門家ならば気づいたという建物の不具合や問題点というものもありうる。また、前述の撤去できない間仕切壁の有無や希望するリノベーションのプランが実現可能なものかどうかも、住まいの建築に関する専門家ならば、購入前に調査してアドバイスできることが非常に多い。
大きな買い物をするのだから、リスクをできる限り抑えるためにも専門家によるホームインスペクション(住宅診断)を購入前に利用しておくべきだろう。
図面の有無は重要
リノベーションをする上で、既存の建物の図面があるかどうかは、プランの検討や工事費の算出段階において利便性が異なる。リノベーション業者に問い合わせたときにも、図面の有無を聞かれることになるだろう。
中古物件の契約前に、売主が図面を保管しているかどうかは必ずヒアリングしておき、持っているならばきちんと引き継がなければならない。
リノベーション業者は購入前に探し始める
購入と工事にかかる予算を検討するためにも、リノベーション業者には早めに問い合わせて接触しておくとよいだろう。具体的な対象物件が決まっていない段階だけに、当然のことながら工事請負契約を結ぶことはないが、予算感を把握することにある程度は役立つだろうし、購入から設計・着工・完成までの流れ、期間などについても説明を受けられるだろう。
リノベーション業者の見学同行
早めにリノベーション業者に接触しておくことで、購入予定の物件に同行してもらうことができることもある。希望するリノベーションをすることができるかどうか、アドバイスをもらえるなどメリットもある。但し、その業者にリノベーションを依頼することが前提になることもあり、ここは慎重に検討しなければならない。
できれば、リノベーションとは無関係の第三者に同行してもらい、客観的なアドバイスをもらった方がより安心だろう。
マンションなら管理規約・使用細則に要注意
一戸建てと違い中古マンションの場合の注意点として、管理規約や使用細則の確認がある。マンションでは、床材や遮音性能などにおいて、制限をかけていることがあり、物理的に可能なことであってもやってはいけないという工事もあるからだ。
無垢の木を用いた床を希望していたけど、無垢材は使用禁止とか、そもそもフローリングが禁止というマンションもある。バルコニーに構築物を考えていた人がいたが、バルコニーは大事な避難路なのでそのようなことはできないことも知っておこう。
ますます注目をあびつつある「中古住宅購入 + リノベーション」だが、予算やリノベーション業者選びのところで大きく失敗している人は多い。十分に注意して、進めたいものである。