新築住宅を注文建築で建てる際、大手ハウスメーカーではなく工務店(建築会社)に依頼したいと考えている人も多いことでしょう。何より大きなメリットは、大手ハウスメーカーに依頼するよりも価格面で安く抑えられるということと、間取りや仕様・設備などのプラン面で自由度が高いことがあります。
一方で、工務店(建築会社)に住宅を新築してほしいものの、家づくりの進め方がわからないという声を聞くことも非常に多いです。住むプロの各種相談サービスを利用する人からも、何から始めればよいのかわからないという声は多いです。
そこで、今回のコラムでは工務店(建築会社)に家を建ててもらうときの流れをお伝えします。但し、その流れを理解するために必要な工務店(建築会社)に家づくりを依頼するときの基礎知識もご紹介します。
1.工務店(建築会社)で家を建てるために知っておくべき基礎知識
まずは基礎知識からお伝えしますので、よく理解しておいてください。工務店にもいろいろな会社があり、会社によって対応できる業務の種類や幅が異なり、それ次第で進め方も異なるからです。
1-1.設計・デザインをできる工務店とできない工務店
家を建てるときは、施主が希望する間取りや仕様、設備を決めていく作業(設計者等から提案もする)がありますが、それを仕様書や設計図としてまとめていく業務を設計やデザインなどと呼びます。デザインというと見た目のイメージのことばかり考えてしまう人もいますが、その見た目や間取りを実現するための構造上のこと、現場での収まりのことなども検討することも含まれます。
この設計・デザインという業務は家を建てる作業のなかでも非常に大事なものですが、工務店によってはこれを社内でできる会社とできない会社があることを知っておきましょう。
設計やデザインをできない工務店があると聞くと驚く人がいるかもしれませんが、工務店は決められたプラン通りに現場で建てていく業務に特化していることも珍しくありません。むしろ、こういった工務店が多く、建てることに専業化しているのは一般的なことです。
1-2.設計・デザインをできる工務店はハウスメーカー?
最近は設計・デザインを社内でできる体制を整えている工務店が増えてきました。社内で対応できない工務店は、設計・デザインについては外部の設計事務所(=建築士事務所)に外注するか、他社が企画した住宅(不動産会社が企画・販売する建売住宅など)の施工のみをやっていることが多いです。
外部の設計事務所に外注するにはコストがかかりますし、他社の企画したものの下請けだけをしていても経営が厳しいこともあり、自社で設計・デザインまでするようになっているのは、前向きに努めている証かもしれません。
しかし、自社で設計・デザインをする体制づくりをするということは、それだけ人件費(建築士等の雇用)がかかることでもあり、踏み切れない工務店も多いです。
設計やデザインを自社でできる工務店(建築会社)は、ハウスメーカーに近い存在になっていると見ることもできます。設計だけではなく、営業人員も採用して積極的に営業している工務店はハウスメーカー化がより進んでいるとみてよいでしょう。
1-3.設計・デザインをできる工務店とできない工務店の価格差
工務店やハウスメーカー選びをする上で誤解している人が多いことですから、ここで説明することはよく理解しておいてください。
設計やデザインを自社でできない工務店に住宅の新築工事を依頼する場合、その工務店とは別に設計事務所に設計してもらうことになるため、設計事務所に設計料を支払う必要があります。設計と工事監理を設計事務所に依頼する場合、建築工事費の7~12%程度の支出となります。
仮に1,800万円の建築費だとすれば、設計監理料は126~216万円程度ということになります。決して安くない金額になりますね。
この設計や監理の費用がもったいないと捉えて、設計・デザインを自社でできる工務店やハウスメーカーに依頼する方がよいと考える人は多いです。
しかし、これは大きな誤解です。
設計・デザインを自社でできる工務店やハウスメーカーは、社内にそういった人を抱えていてその業務をしているだけであって、業務を省略できるわけではありません。もちろん、社内にその担当者がいるだけに人件費がかかっており、その分のコストや粗利の上乗せがあります。
ただ、建築費等の見積り明細を見るとわかりづらいかもしれません。
A. 設計やデザインを自社でできない工務店の見積り例
建築工事費 1,800万円
設計監理料 200万円
自社でできない工務店の場合は、工務店と設計事務所から上のように2種類の見積りを提示されることになります。一方、自社でできる方は以下のように見積書が1種類のみということも多いです。
B. 設計・デザインを自社でできる工務店やハウスメーカーの見積り例
建築工事費 2,000万円
設計監理料 見積書自体が存在しない
上のBについてはやや極端な見積りの出し方を例としてあげましたが、建築工事費を1,950万円として設計監理料を50万円とする提示方法をとる会社もあります。
つまり、自社でできるかできないかによって、見積りの提示方法が異なるだけであって、実際には設計・デザイン等のコストがかかり、それを施主が支払っているということです。
しかし、不思議なことにこれを頭で理解したとしても、設計料が別枠として提示されるだけで抵抗感を持つ施主は少なくありません。設計には非常に大事な役割があり、間違いなく大きな価値ある業務なのですが、施主はそれを感じにくいようです(建築士業界のPR不足だとも思いますが)。
1-4.自社で設計できない工務店+設計事務所=意外と安い
ちなみに、営業マンを多く抱えて、住宅展示場やショールームに対して多くの投資をするハウスメーカーや工務店よりも、そうではなく、自社で設計・デザインをできない工務店と設計事務所を組み合わせた家づくりの方が総額を安く抑えられる傾向にありますから、家づくりの選択肢の1つとして積極的に検討するとよいでしょう。
外部の設計事務所が、設計・デザインを担当しつつ、ときにはコーディネーターの役割をこなすので、良い設計事務所との出会いも大切です。
2.工務店(建築会社)で家を建てるときの流れ
次に、工務店で家を建てるときの流れについて解説します。上で説明した「設計やデザインを自社でできない工務店」と「設計・デザインを自社でできる工務店」では取引の流れが異なるため、それぞれにわけて説明します。
2-1.設計やデザインを自社でできない工務店で新築する流れ
設計・デザインを自社内でできず、外部の設計事務所に依頼するケースにおいては、以下の流れで家づくりを進めていきます。
- 施主がどのような家を建てたいか自分たちで考える
- 設計事務所からラフプランを提示してもらう
- 設計事務所と設計委託契約を行う
- 設計事務所と打合せ・プラン提案を繰り返す
- 工務店と工事請負契約を締結する
- 着工する
- 完成する
細かな流れについてはケースによって相違することがありますが、概ね上のような流れとなります。最初に設計事務所に出会って設計してもらってから、その設計事務所に工務店を紹介してもらうこともあれば、先に工務店と出会い、その工務店から設計事務所を紹介してもらうこともあります。
また、設計事務所と工務店の両方を施主が探してくることもありますが、普段から設計と建築で連携したことのない両者を組み合わせる場合は、その2社の意思疎通をきちんととることを意識しなければなりません。
設計事務所や工務店の探し方は、紹介サイトを利用する方法がありますが、このサイト(住むプロ)でも紹介しています。
2-2.設計・デザインを自社でできる工務店で新築する流れ
設計・デザインを自社内でできる工務店に依頼するケースにおいては、以下の流れで完成まで進めていきます。
- 施主がどのような家を建てたいか自分たちで考える
- 工務店からラフプランを提示してもらう
- 工務店と設計委託契約を行う
- 工務店と打合せ・プラン提案を繰り返す
- 工務店と工事請負契約を締結する
- 着工する
- 完成する
「2-1.設計やデザインを自社でできない工務店で新築する流れ」で紹介した流れと違って、打合せ等を行う相手が工務店のみに限られるという点は、施主にとって楽だとも言えます。ただ、設計監理と建築を同じ工務店が行うことで、設計事務所による施工状況をチェックがあまり機能しないというデメリットがあります(別会社が監理する方が安心感が高い)。どちらがよいかはあなた次第です。
いずれの流れで進めるにしても、家づくりの最初にすべきことはどのような家を建てたいと自分たちで考えることです。それと予算のこともある程度は考えたうえで、どのように進めていくべきか専門家に相談するとよいでしょう。